幼馴染の君への告白ー振られるとわかっていても。
「君のことが、好きだ。」
僕は、静かに言った。
目の前にいる、僕の好きな人で、幼馴染の君に。
君はこのことで動揺するとわかっていた。実際に、動揺しているみたいだ。ごめんね。
でも、言いたかったんだ。君が、あの人、僕の親友で、もう一人の幼馴染の彼女になる前に。君が、人のものになる前に。
「ごめんなさい。私、あなたの、智也の気持ちには、答えられない。私、好きな人がいるの。ごめんなさい。」美香は、言った。
うん。そうだろうね。君は、僕の親友の、大樹のことがすきなんだろ?そんなことは知っている。でも、言いたかったんだ。ごめん、君が謝る必要なんてないのに。君の気持を知ってて、僕が君を困らせただけなのに。ごめん。
「美香の好きな人って、大樹だろ?」
言いたいこと、たくさんあったのに、それしかきけなかった。何故かは、わからない。
君は、ひどい。いつも僕が大樹の名前を出すだけで、顔を真っ赤にする。
美香が大樹のことが好きなことくらい、とっくに気づいていた。
僕は、君のことが好きなんだから。なのに、君は僕に知られないように少し俯いたりして、ごまかしてたね。バレバレだったのに。大樹の名前が会話の中で出ただけだで、顔が赤くなるくせに。
ほら、今だって僕がそのことを気付いていたことに驚いているね。
「うん。そうだよ。ずっと、大樹のことが好きだったの。だから、智也の気持には答えられない。本当にごめんなさい。」
なんで、智也は、私の気持に気づいていたの?それだけ、私のことを思っていてくれていたってこと?私、智也のこと大好きだよ、でもごめんね。私それ以上に大樹のことが好きなんだ。本当にごめんね。
やさしい智也だから、私に振られたことで、ショックだと見せないようにしてる。振った私を傷つけない為だよね?繊細なんだから、傷ついてないはずがないのにね。さっきまで、私は智也が私のこと好きだ思っていたなんて、知らなかった。でも、智也は、私が大樹のこと好きだってことに気づいていたんだよね。すごいや、智也は。私なんかじゃ、全然相手にならないよ。きっと、高校でいい相手がみつかるよ。私なんかより、ずっとかわいくて、智也とお似合いの子。
ありがとう、智也。今日、私に告白してくれて。これで、私、大樹に告白する勇気ができたよ。もしかして、智也はそのことにも気づいていたのかな?
《ずっと、大樹のことが好きだった。》
うん、知ってたよ。知ってて言わせたんだ。僕のために。僕のけじめのために。言ってくれてありがとう。まだ、今この瞬間で、けじめをつけるのは無理だけど、君が、告白うまくいくように祈ってるよ。君が、今日大樹に告白するつもりなのは知ってる。だって、今日の大樹の予定をずっと聞いていただろ?告白、うまくいくよ。大樹も美香のことが好きだと言っていたからね。でも、それは、君には内緒。それくらいのいじわるはいいだろ?
「美香があやまることじゃないよ。僕がきみに気持ちを伝えただけなんだから。美香のせいじゃない。お願いがあるんだけど、いいかな?」
お願いってなんだろう?まぁ、どんなお願いだろうと、私は智也のお願いはきくよ。智也は私にとって、家族のようなものなんだもの。それは、これからもずっと変わらない。
「なぁに?」
一言、それしか答えなかった。智也には、きっと私が言いたいことも、思っていることもわかっているだろうから。
「いくつかあるんだ。」智也はそう言って笑った。場を軽くするために。
「うん、いいよ。お願いって?」智也の優しい気持ちに、ありがたく思いつつ、先を促した。
「1つめは、告白がうまくいったら、俺に教えてくれること。今日、大樹に告白するんだろ?うまくいかなかったら、教えてくれなくてもいい。」
ほら、智也は、私が今日大樹に告白することを知ってる。でも、いままで、知らないふりをしてくれたんだ。智也らしいな。
「わかった。約束するね。智也はうまくいくと思う?」聞いてから後悔した。
告白してくれたばかりの、智也に聞くことじゃなかった。
智也は場を軽くしてくれて、私が苦しくならないようにしてくれたのに。気を使ってくれていたのに。私がそれに、気づいてたのにこんなことしちゃダメなのに。
「ごめん、智也。今の言葉、なしにしてくれる?」美香は、急いでいった。
ありがとう、美香。俺を傷つけると思ったから、取り消したんだね。大丈夫なのに。そんなことぐらいじゃ傷つかないさ。俺が、わざと場を軽くしようとした事に美香は気づいてた。でも、それに乗ってくれたんだ。美香らしいね。俺が場を軽くするために言ったってことわかっていても思わず言っちゃった言葉を言ったことを後悔しているんだ。そんなに、気を遣わなくても大丈夫なのに。
「大丈夫だよ、美香。それで、お願いの2つ目は、これからも、今までと同じように接してくれること。幼馴染で、親友として、俺と接してくれること。いい?」そう、智也は笑いながら言った。
まただ、今、あんなことを言っちゃったのに智也はやさしい。それに私が、今までと同じように接してほしいことに気づいていてそんなこと言ってくれる。
「うん。喜んで。」私は、即答した。
ありがとう、優しい智也。私が、気にしないように、言ってくれたんだよね。ほんとうにすごいな、私だったら振られた相手と今までと同じように過ごすなんてできない。怖いし、相手のことが気になっちゃうし。智也は強いね。そんな智也が大好きだよ。恋愛では大樹のほうが好きだけど、家族として大好きだよ。これからも変わらず私の大好きな幼馴染でいてね。
「ありがとう。美香」
智也はそう言って、笑顔で、けれども少しつらそうに最後にこう言った。
「いつまでも、俺たちは幼馴染だ。大樹とうまくいくといいね」