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7.ニホンゴムツカシイ

販売員一人称語りになります。

 私は借りた本を返して、次なる情報を得るために図書館の3階に行くところでした。階段の途中で上から下りてきた人とすれ違う時に声をかけられました。

「あ!ちょっと」

 知り合いなどもともといませんから、私のことだと思わずに素通りしようとしたところ、その人は私の腕を叩きました。

「ねえ、さっきのゴム紐屋さん」

 なんと、私に声をかけてきたのはあの家の少女だったのです。

 それにしたって、私はあの後すぐに図書館に来たのに、この少女はもう上から下りてくるなんて、やっぱり超能力者なのでしょうか。それで瞬間移動とかをして先回りしてきたのでしょうか。どちらにしろ、私に用があることは確かでした。

「なんだ、さっきのお嬢さんじゃない、か。どーした、こんなところで」

 こんな感じでしょうか。あれ、私さっきどんな言葉づかいだったか思い出せません。

「あのゴム紐、超良かった。修復機能付きで」

 少女は最後の方の言葉を、低い小さな声で、でも鋭く言いました。

「おう、そうかい。良かった良かった。またよろしく、な!」

 そう言って私は通り過ぎました。それからちょっと考えました。修復機能付きで、と彼女は言ったのです。

修復機能・・・付いてちゃダメだったのか!?私はくるりと振り返りました。少女はにんまりと笑っていました。


 マズイ。マズイですよ。私は流刑になっても、商売をしても良いと許可は得てるんです。でも、ダメなこともあるんです。文化の未発達な土地に、その地に無いような技術を持ち込んではいけないのです。例えば、この星だったら、宇宙船を見せるとかは絶対ダメです。それが宇宙人の持ち物だって分からなくたって、そんな技術が知られてしまえば、地球人にどんな影響を及ぼすと思います?

 ただ、この日本という国はわりと文化的には高いので、ゴム紐くらい大丈夫だと思ったんです。ところが、修復機能はきっとないのでしょう。私の星の繊維で傷が付かないものがあるのですが、それはごく一般的なのです。だから、日本も大丈夫だと思ってしまったのですが、この少女の顔を見る限り、違うようでした。



 さあここは、どうやって切り抜けたら良いのでしょう。下手に、私が宇宙人であることがバレれば、最悪私はすぐにも抹殺されるでしょう。ここはもう、しらを切り通すしかありません。

 私はもう一度少女を見ると、ひきつった笑顔を作って、そしてそのまま階段を登ろうとしました。

「お兄さんの正体、分かっちゃった~」

 背後から少女の小さな声が聞こえました。恐ろしいことでした。もう私の正体が分かったと言うのです。さすが、超能力者。ここは観念するしかないのでしょう。私は振り向き、誰にも聞こえないように小さな声で言いました。

「さすが、超能力者。見事だ」

「は?超・・・?」

 おっと、この少女も、しらを切るつもりですね?なるほど、そう言うことならば私たちはある意味同類です。お互いバラされたくないヒミツがあると言う点でね。私は声をひそめて言いました。

「誰にも聞かれたくない、だろ?外へ行こうじゃないか」

 私は彼女を連れて外へ出ようとしました。図書館の中は静かではありますが、人はいますし、話せば聞こえてしまいます。外へ出るしかありません。

「別に私は聞かれても困んないけど?お兄さんが困るんでしょ?」

 少女は強気に出ました。う、こう来られたらどうしたら良いんでしょ。私の立場だけが悪いような気がしないでもありません。でも、聞かれたくないことは確かなのです。

「わ、お、俺は、別に、その・・・つまりだな、つまり、あー、ニホンゴムツカシイ」

 あ、片言になっちゃった。



 私が思わず変な言葉づかいになっちゃったのが、良かったみたいです。ちょっと張りつめていた空気がふとゆるみました。少女がプっと吹き出したのです。

「あれ、お兄さん、外国人?どこの人?」

「そ、それは・・・」

 言えません。というか、それが分かったから「正体わかった」って言ってきたんじゃないんですか?思わずホッとしてしまいましたが。一体何のどんな正体が分かったのやら。


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