6.見つけてきて
僕と柚は、修復する不思議なゴム紐を何度もビヨヨンと伸ばして観察した。それから柚は何か考えながらニヤリとしていた。
「ね、あの鞄もさ、絶対そうだよね」
「絶対そう、って?」
僕は、柚が何を言わんとしているのかが分からずに聞き返した。男女とはいえ僕たちは随分考え方も似ている双子だと思っていたんだけどなぁ。
「魔法道具だってば!あの人魔法使いだったんだよ、きっと」
「それは、いくらなんでも」
あり得ないと思う。とは言えなかった。柚は興奮しているとはいえ、洞察力があるほうだし、実際このゴム紐は傷つかないわけだし、あの鞄だってひしゃくが現れたわけだし、普通じゃないことだけは僕にだって分かっていた。僕が言いよどんでいると、柚が立ち上がった。
「よし、魔法使いと話をしようじゃないの」
「はあ?」
「由、見つけてきて!」
僕ですか!いきなり、無茶を言いなさる。
「どうやって?」
「まだその辺にいるって、きっと」
「いないね。魔法使いなら瞬時に姿を消すからさ」
せっかくだから、柚論法で答えた。そしたら納得した顔をした。
「確かに・・・じゃあ、その辺自転車で一周だけしてきて、もし見つかったら声をかけるってことで」
「ああ、うん」
まあ、それくらいなら良いかな。柚は無茶を言ってるようで、本当に無茶苦茶なことは言わないヤツだよね。そこが安心。
「じゃ、私は図書館に行ってくるね」
「え?」
柚は探さないの?自転車で町内一周とかして。
「私はチャームに付けるビーズの本を借りてくるから」
「何言ってんの?」
僕がちょっと怒った声を出しても柚は全然気にしなかった。
「まあまあ、由のは貝殻使った特製チャームにしたげるから」
そういうことで怒ってんじゃないんだけど?まあ、いい。二人で行く必要もないか。だからってなんで僕だけ。
「見つけたら、ウチに来てもらってね。ダメでも、名刺くらいはもらってよ?」
「うん、名刺なんて持ってるかなぁ」
「せめて電話番号聞くだけでも」
「わかった、わかった」
とにかく、つなぎを作りたいんだろうとういことは分かった。
「じゃ、よろしくねー!」
そう言って、柚は自転車に乗って颯爽と図書館に行ってしまった。
はあ、しょうがない。さっきの販売員を探しに、僕も出かけるか。どんな顔してたっけな。若くて可愛らしいことだけは覚えているんだけど。どんなだっけ、と思いながらノロノロと自転車に乗った。
もし、本当にものすごい魔法使いだったりしたら、顔なんて自由に替えられるんじゃないだろうかという不安もあった。
いや、こういうことを考える時点で、随分と柚に感化されたみたいだ。そう思うと、なんだかおかしくて笑ってしまった。
とにかく、僕は自転車に乗って、夕方の散歩をすることにした。




