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40.地球生まれだけど

ハニューシカさん一人称語りです。

 私の娘の姿を見た、由さんと柚さんは非常に混乱しているようでした。いつもの柚さんだったら、何か言ってくれるところを、今の柚さんは何も言えないでいるのですから。きっと衝撃だったのでしょう。

 少なくとも理解できなくてモヤモヤもしていることは確かです。

 私は、娘の姿を見せた事で、もう隠すことは何もないと思いました。急に吹っ切れたように感じて、今こそ、私の本当のことを彼らに話しておこうと決心したのです。

 ですから、何から話そうなどと思いもせず、ただ思いついたままに口が開きました。



「あれが私の娘です。彼女は奇形で生まれ、長くは生きられないのです。

 私の国では、いえ、星では、人間の数が徹底的に管理されています。勝手に結婚したり子どもを産んだりすることはありません。結婚したい人が申請をして、カップルになった者が、子どもを欲しければ、申請するのです。そして、みな寿命が決められていて、健康で平和に生きるのです。

 ですが、私の娘は奇形でした。寿命が他の人の半分くらいしかないために、その場で抹殺される運命でした。

 それで私は、娘を差し出さなければならなかったのですが、一度その姿を見てしまったら、どうしても抹殺されるのが嫌で、娘をさらって逃げたんです。

 私の罪は重いものです。私の星では、人数管理が徹底しているので、それを崩すようなことは絶対に許されないのです。

 私は娘と共に捕えられて、宇宙船に乗せられて、聞いたこともないこの辺境の星に飛ばされました。一番重い刑罰、流刑です。それで私は日本に来たのです」



 私がまだ話の途中だと言うのに、急に柚さんが手をあげました。

「ちょっと待ったー!!!」

 その声と一緒に、急に強い風が吹いて、彼女の迫力を倍増させました。

「待って、待って!いやだって、おかしいでしょ、変だってば!ね、一旦落ち着こ?ね、落ち着こう」

 私は落ち着いてますってば、取り乱しているのはむしろ柚さんの方だと思いますが。

「はい」

 私にはこれしか言わせずに、柚さんはまた話し出しました。

「だってね?待って、ハニューシカさん、魔法使いじゃなくて、未来人でもなくて、宇宙人!?宇宙人って、宇宙から来たってことでしょ?え、ちょっと待ってよ、えー!宇宙人っているの!?マジで?え、ホント?」

 あー・・・そこからですか。随分根本的なところでつまずきましたね。

「柚ってさ、魔法使いとか未来人は信じられるのに、ナニ、宇宙人はいないと思ってたの?」

 由さんが冷静な顔をして聞いていました。ああ、双子でも意見が割れることってあるんですね。

「だって、魔法使いと未来人は地球生まれだけど、宇宙人は地球生まれじゃないでしょ?地球じゃないところで人が住める所ってあるの?」

「あるんです」

 実はいっぱいあるんですよ。柚さん。詳しくは教えられませんが。

「そうなんだー!すごい!へぇ、すごいー!」大興奮した挙句に、急に私の手を取って「大丈夫、誰にも言わないから。宇宙人がいるってことも、誰にも言わないわ。信じて」

 と、それだけ言うと、気が済んだのか、座ってしまいました。



 柚さんは気が済んだようですが、まだもう一人気が済んでいない人がいました。

「宇宙人だから文化が違うのは分かるけどさ、寿命が決められてるってどういうこと?」

 由さんの質問はごもっともです。自由に生まれて、自由に死ぬことができる地球人から見れば、理解しがたいでしょうね。

「詳しいことは、長い歴史の果てのことですので、簡単に説明できませんが、ただですね、私たちの星では、不公平をなくすために、一定以上長生きできるように保障されているのです。ですから、寿命もある程度は決まっています。勿論、寿命が来たから殺すというようなことはしませんが、平均寿命に満たないで死んでしまうことを非常に嫌うのです。ですから、そういう赤ん坊は最初から育てずに抹殺してしまうのです。

 もっと極端に言いますと、常に人口の半数が男性で、半数が女性で、幼児、子ども、青年、壮年、中年、老人のパーセンテージが決まっているのです」

「ごめん、全然わかんない」

「柚、僕が聞きたかったのは、柚が理解できないところのことじゃなくて、寿命が決められていたら、その年齢になったら殺されちゃうのかってことが聞きたかったんだよ。それは、わかるでしょ?」

「あ、うん。それはわかった。みんな長生きが保障されてるってことね?」

 お二人で勝手に納得していますが、あんまり難しいことを言っても、やっぱりわからないですよね。文化の違いってすごいですね。


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