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23.何だか物騒

由くん一人称語りです

 前に河川敷で会った時、ハニューシカさんは何か変だった。すごく怖がっていたような気がしたけど、どうしたんだろうか。僕と話し出したらすぐに元通りになったけど、もしかして魔法使いの魔法を巡って戦いに巻き込まれたりしているのかもしれない。なーんて、ちょっと中二病的なことも考えたりしたけど、本当のことはわからない。



 あの日からどれくらい経っただろう。


 あの日と同じ時間に、僕は部活の帰りで近道の河川敷を通っていた。ここは暗いからあんまり人が通らないんだけど、まあ、僕みたいなカネ持ってなさそうな男子はそうそう危険じゃないだろうと思って、よく近道している。柚には暗い時間に一人で通るなって言ってあるけどね。

 背の高い草が茂っていて、見通しがあんまりよくないところに差し掛かった時、僕は向こうの方にまたハニューシカさんを見つけた。相変わらず高校生みたいだ。だけど、鞄だけは小さめの旅行鞄みたいなのを持っている。普通のスクールバッグを持ってたら本当に高校生みたいだけど、鞄が違うから、なんとなーくわかる。

 まだ距離があったから声をかけようと、ハニューシカさんの方へ行こうとしたとき、僕は気付いた。彼の後ろを追いかけている男がいるんだ。中年というか初老のおっさんだ。いわゆる普段着といった簡単な服を着ているけど、なんかちょっと高級そうな感じ。品のいいおじさんが、ハニューシカさんの後ろをこそこそ付け回すような感じで追いかけていた。なんだかちょっと不穏な感じがした。

 柚の勘も強いけど、僕もこういう勘は結構当たる。



 どうしよう。本当にハニューシカさんは何か怖いことに巻き込まれているんだろうか。あんな高校生にしか見えないような人だけど、彼は素性が怪しいからな。

 確か最初に会った時、亡命だかなんだか言ってたよな。日本にいることを知られちゃいけないとか。あと、魔法使いの道具は戦いを招くとか。なんだか物騒だ。

 平和な日本に住んでいると、ハニューシカさんが言ったことはなんだか現実味がないけど、こうして実際に、ハニューシカさんを尾行している人間を見てしまうと、住む世界が違う人なんだなぁと知るわけだ。

 だからと言って、どうしようもない。

 ただ、なんだか心配だ。捕まって連れて行かれたりするんだろうか。それとも襲われて殺されたりしたらどうしよう。

 だからこないだ、ここで出会った時、あんなに驚いた顔をしていたんだ。襲われそうだと自分でも気づいていたに違いない。だったらこんな暗いところ通らなきゃ良いのに。少なくとも表通りは明るいし人通りもあるんだから、急に襲われるようなことはないはずだ。

 僕は気になって急いで後を追った。

 もう追いかけている男が、今にも飛びかかりそうな形相をしていたからだ。



 だけど追いつけなかった。ハニューシカさんたちは僕よりずっと前を歩いていたし、二人とも小走りだったから。

 草が高く茂っているところの陰に入ってしまって、全然姿が見えなくなってしまった。

 胸騒ぎがする。

 どうしよう、ハニューシカさんが死んじゃったりしたら。

 心臓がバクバクすごい勢いで打ち付けるくらい怖くて、それでも僕は二人を追いかけた。今からでも追いついたら大丈夫かもしれない。

 ちょっと聞きなれない、鈍いズンという音が聞こえた。

 何の音か分からずに、急にものすごく息苦しくなるような気がした。何があるか、どうなっているか考えることもできないで、ただ焦って、二人がいると思われるところに駆け込んだ。

 そこで僕が見たものは、僕の想像とは全く違っていた。


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