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18.水晶玉じゃ

 ハニューシカさんにもらったガラス瓶は、ただ綺麗なだけじゃなくて、何か不思議だった。柚が言うには、魔法道具じゃないみたいらしいけど、僕にはあまりその違いはわからない。

「だってね?あの電子手帳見たでしょ?」

 急にガラス瓶の話は終わったらしい。

「え?電子手帳?辞書じゃないの?」

「あ、辞書辞書。それよ、なんで、魔法使いが電子辞書使ってんのよ!魔法使いって言ったら、巻物と羽根ペンじゃないの?」

「や、さすがにそれは、時代がさ。現代の魔法使いならスマホ使ってても良いと思うよ」

「そうか、通信に水晶玉じゃ持ち歩くの大変だもんね」

 柚の納得する場所が変だ。イメージが古すぎるよ。

「まあ、変な形の電子辞書ではあったけどね」僕が言った。

「そうよ、それ!変なのよ。あんなの見たことないし、ゴツいんだか古いんだか最新式なんだか分かりにくいヤツ。アレで良いわけ?時代に合わせるとか、持ち運びが大変とかいうなら、小さい水晶玉にすれば良いじゃないね」

 なぜ水晶玉にこだわる。

「そんなこと言われても、知らないよ。外国のなんだもん」

 でも、柚の言ったことは正しい。一見古臭く見えるデザインだった。そのわりに高機能に見えた。だったら、もっとシンプルで洗練されたデザインにすればいいのに。それが外国のイケてるデザインなのかもしれないけど。

「それに、文字がね。あんなの見たことない」

「ああ、うん」それはそうだと思った。「魔法使いの暗号なんじゃないの?」

「魔法使いのねぇ・・・」

 柚は腑に落ちない顔をしていた。どうしてそんなに気になるんだろう。相手は魔法使いなんだから、僕たちに理解できない事なんていくらでもあるだろう。しかも外国人だ。まず生まれながらの文化が全く違うんだから、しょうがないじゃないか。



「今度来たら、聞きたいことがいっぱいだわ」

 柚は鼻息荒くなっていた。

「やめなよ。ハニューシカさん困らせたって、良いことないよ」

「だって気になるんだもん」

「何がさ。人間誰だって、人に言えないことの一つや二つあるもんだよ。だけど、あの人悪い人じゃないじゃない。こんな素敵なガラス瓶をさ、友情の印にってくれたんだよ。それなのに、柚はその友情の印すら、相手の揚げ足を取るために使ってるじゃん!」

「違うの!別にあの人悪い人だなんて、思ってないけど!」

「だったらそっとしておきなよ」

 気が付いたら、ケンカモードになっていた。困ったな。柚とケンカすると絶対負けるから嫌なんだよな。だけど、僕も引っ込みがつかなくなったよ。

「だけどヤなの!何か隠し事されてたりとか、ウソつかれてるのは、絶対イヤ!」

 その言い分は分かるけどさ。

 柚は勘が良いだけに、相手がウソをついてるとか隠し事をしていることが分かっちゃうんだろう。だから余計に気になるに違いない。

「分かったよ」

 ここは僕が引くしかない。ああ、いつもこうだ。柚には勝てないんだ。だって、柚はいつも結構正しいんだ。

 だけど、僕が柚を認めたその一言で、柚もちょっと大人しくなった。

「ハニューシカさんに聞きたいことはいっぱいあるけど、困らせないようにするわ。だって、私たち友だちだもんね」

 柚はガラス瓶を見て言った。

 わかってくれたなら良いか。



 ハニューシカさんって、確かによく分からない。僕たちと同じ年くらいに見えるけど、販売員(押し売りとも言う)なんてやってるし。亡命してきたってことは、それなりに年上かもしれない。それで魔法使い?いやー、怪しすぎる。

 彼は秘密がいっぱいだけど、悪い人じゃないって僕たちは知ってる。それだけで良いじゃないか。友だちになれればって思うよ。友情の印をもらったんだから、もう友だちかもしれないけど、もっと仲良くなれたらいいなって思う。ただ単に秘密を打ち明ければ良いんじゃなくて、心から信頼し合えるような、ね。きっと柚もそう思っていたから、ウソをつかれるのが嫌なんだろうな。

 今度会う時がちょっと怖いけど、柚、くれぐれもハニューシカさんを困らせないように、頼んだよ。


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