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12.これは顧客表

「ねえ、それはそうと、名刺ないの?」

 いきなりゆずさんが聞いてきました。はー、納得すると切り替えのはやい人ですね。まあ、とりあえず、私のことを魔法使いで、訳ありで、色々教えられないということを納得してくれたのでしたら、それでいいです。

「さすがに名刺は売ってません。印刷屋さんに頼んでください」

「違う違う、あなたの名刺。ハニューシカさんの連絡先」

 ああ、そういう名刺ですか。

「ありませんよ。こういう商売ですから」

「じゃあ、クーリングオフとかできないんだ」

 よしさん、クーリングオフって・・・だから、まっとうな商売じゃないんですってば。

「できませんねぇ」

「でもさ、何か買いたいときに連絡するのはアリなんじゃない?だから、連絡先教えてよ」

 ゆずさんの言い分に、よしさんも不思議そうな顔をしていました。女の子の思考はちょっと分からないですよね、確かに。

「しかし、名刺があったら私の立場上色々ヤバいんですけど」

「あ、そっか。亡命?」

「まあ、ちょっと違いますが、足が付くことは避けたいですね」

「じゃあ、もう連絡できないってこと?」

 確かに、それもそうですねぇ。どうしたものか。



 この人たちは私のことを他人に言わないと言ってくれているわけですし、その見返りにちょっとくらい仲良くするのは悪いことではありません。それに、何か役に立つことがあるかもしれませんから、ちょっとした繋がりがあっても良いと思うのです。

「わかりました。そちらから呼び出すのではなくて、こちらから出向きましょう。あなた方の名前をここに書いてもらえますか」

「名前?」ゆずさんとよしさんが同時に言いました。

「そうです。ここにお願いします」

 私は普段使っている顧客表をお二人の前に置きました。何も書いてないようにみえるその紙を、お二人は興味深そうに覗き込みました。

「ふーん、これ羊皮紙?面白い紙だね」よしさんが言いました。

 こういう紙はあんまりないのでしょうか。私の星はこういう紙も普通に在りましたが。

 二人はとりあえず、名前を書いてくれました。ああ、漢字ってちょっと難しいんですよね。

「えっと、いりえゆず、いりえよしお?」

「違う、柚子、これでゆずこって読むの」

 あ、柚さん怒りモードですね。なるほど、これ「柚子」って普通「ゆず」って読みますよね。それで「ゆずこ」って読むって珍しいですから。「由男」はすぐに読めましたけど、わりと珍しい名前だと思います。



「その紙なんなの?」由さんが聞きました。

「これは顧客表です。ここに書いてある名前のところにふた月に一度くらいで現れます。それでいかがですか?」

 私はあんまりこの紙を見られないように、すぐにくるくると丸めて鞄に入れました。

「ふーん、わかった」ゆずさんも納得してくれたようです。

 結局私は、この二人にとっては魔法使いということになったようです。きっと魔法使いでも宇宙人でも同じなのでしょう。あまりお金は持っていないようですが、お客になってもらいました。私にとってはお客と言うよりは、私のことを誰にも言わない味方の地球人だというだけで十分です。

 彼らにとっても、ふた月に一度、私が魔法道具も持ってくると思って期待して待っていることでしょう。その期待を裏切らないように何が良いか考えておこうと思うのでした。


 次回は2か月後。会えるのを楽しみにしています。


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