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第二話 天使の窓辺

この天使の窓辺は私が愛読しているブロガー友(略してブロ友)さんの絵を見て、思いつき、許可を得てお話を書いたのがキッカケでした。

誰も気づかない。気づけない高い高い空の一角に

その青い窓はある。ポツンとそこに浮かぶように存在している。

時々そこから青いワンピースの女性が顔を覘かせる。

しかし、その背には白い鳥のような翼があった。



彼女はいつもこうして時々朝方に一度来て

そして夜になるとそこから下界へ光を送る役目を持っていた。

時々、鳥達や雲が通り過ぎ、その度に光をわずかに分け与える。

夜になれば星たちの輝きに紛れて気づかれないように

下界へ希望の光を雨のように降らせる。


誰も気づかないはずの彼女の存在。

それに気づく者がいた。

幾人かの子供達が夢を見ている間に、光を伝って

空に浮かぶ窓辺まで辿りついた。

これには天使の彼女も驚くばかりで。

しかし子供達は興味心身に目を輝かせるばかり。


少しだけ寂しく感じていた天使は思わず笑ってしまった。

そうして、子供達と愉快に遊んだ。

日が昇るまでの数時間そうして遊んで…帰る時間になる。

子供達が迷わないように彼女も翼を広げて

下界へ子供達を送る。

無事彼らが帰宅したところを見送って

彼女も上へ帰ろうと翼を羽ばたかせる。


すると何のイタズラか、彼女が上から振り撒いた光が

己の翼に降りかかり、体の力が抜けてしまう。

翼は徐々に輝きを失いやがて消えてしまった。

力無く地面へ倒れた天使は一粒の涙を流し

そっと上を見上げた。
















海が見える家の窓辺に彼女はいた。

いつも決まった時間に顔を出しては溜息を零し

空を見上げるその仕草に

迂闊にも見ほれている自分がいた。



◇◇天使の窓辺Ⅱ◇◇



彼女と出会ったのは朝早くジョギングへ出かけた時の事。

道路の真ん中で倒れているのを見かけて

介抱したのが始まりだった。

知り合いの家で面倒を見る事になり

時々様子を伺いに尋ねる。しかし彼女は何も喋らない。

相手の話は理解できるようで首を横かたてに振る。

それだけだ。


そして、彼女はいつも青いシンプルなワンピースを着る。

働き始めてお金は十分にあるはずなのに

他の服を買おうとしない。

着飾りもせず、化粧もしない。


そして、笑わない。


いつも悲しそうに空を見上げるか無表情でいるかだ。

少しくらいは笑っている所を見てみたい。

普通な女性として暮らしてほしい。

日に日に状況が悪化していくそんな時

彼女が働くアイス屋の常連客の子供に出会った。


「あ、お兄さんこんにちわ!」

「こんにちわ。またアイスか?」

「ううん。今日はお姉さんとお話しに来ただけ」

「?そうか。でも…話せたのか?」

「うん。普通に話せたよ?空に帰れなくて悲しいって。」

「…え?」

「天使のお姉さんって、空のお仕事もあるからそれも心配してた。」


あ、もういかなきゃ。


そう言い残してその子供はそこを去った。

俺はと言うとそこに数分突っ立ったまま

今の言葉を何度も頭の中でリピードしていた。


しばらくして、彼女が帰宅し俺は早速会いにいく。

いつものように窓辺で空を眺めている彼女へ

俺は言葉をかける。


「よう。」


すると、いつものように窓辺を背にして、彼女は無表情なまま振り向いてくれる。


「今日はちょっと聞きたいことがあるんだ」

「…」


コクリと首を動かし『聞いてるよ』と合図してくれる。


馬鹿馬鹿しいとは思う。だけど、俺の中ではあの子供の言葉がくっきりと残っている。


「お前は…天使なのか?」


てっきりいつものままで違うと首を動かすと思っていた俺は目を丸くし吃驚した。


そこには海を移す窓辺を背にして。まるで『当たりだよ』と言うように…

ニッコリと微笑む彼女がいた。















太陽が沈んでいく。

海辺の街は今日も賑わい、そして夜が訪れる頃合にだんだんと沈静されていく。

夜空が綺麗な輝きを放っている頃、一人の男性が溜息をついていた。


◇◇天使の窓辺Ⅲ◇◇


「何をやってるんだろう…俺」


手には何かの楽器を仕舞っているケース。

彼は今、ある女性へ会いにいくため、いつもの道のりを歩いていた。

しかし、今日は仕事の都合で遅くなってしまい、

思考の中で彼は散々悩んだあげく、いくことにしたのだ。


ことのはったんは、彼女が何か楽器を弾く動作をしていた所を

偶然彼が目撃し、持ってきてやる…と発言したのがきっかけだった。

その時の彼女の笑顔と輝く眼ときたら。

とても期待を裏切る気になれない。


もう寝ているだろうな


そんなことを思いながら、ふと、いつもの窓辺に目を向けると

そこには手を振り『まってたよ』とでもいうように

微笑んでいる彼女がいた。


さっそく彼女の元へ行き、いそいそとケースから楽器をとりだす。

それは己が弾くヴァイオリンだった。


彼は少なからず音楽の先生をしていて

何よりもヴァイオリンを愛する人だった。


彼女が手に取り今にも弾こうとするところを彼が止める。


「今じゃあ、近所迷惑だよ。真夜中に弾けば苦情が…」


しかし、彼女は首を振る。


『魂の音色は誰にも迷惑はかからないわ』


その可愛いらしい唇から聞こえてきた鈴の音のような声


彼女が…喋った?


彼が驚き沈黙するのを見て彼女がやんわりとヴァイオリンを弾く。


聞こえてくる音色がまるでこの世の物でもないような音だった。

綺麗で透き通っていて、空気が揺れるような…

まるでそこに夜空が落ちてきたみたいだった。

満天と輝く星ぼしが彼女を包む。


その輝きが一層大きくなり、そして

彼女の背中から白銀に輝く翼が…


「え?!」


すると彼女は微笑みながらヴァイオリンを奏で続けた。

やがて翼は大きく羽ばたき、彼が声も無く驚いていると彼女は嬉しそうに微笑んだ。


『ありがとう。あなたのお陰で私の力は戻りました。これであるべき所へ帰れます』


気づけば彼は一人、ヴァイオリンのケースだけを握り締めながら

路上で夜空を見上げていた。


「…元気で。」


そういいつつ、嬉しいような虚しいような

そんな顔で彼は自分の家へ帰る道を歩き始めた。


「あ、ヴァイオリン明日の授業で使う予定だった…」




ブロ友のKさん、いつもお世話になってます。この場を借りてお礼申し上げます。

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