外側
明らかにおかしい。普通に考えればあんな事件の後には警察とか消防とかから事情聴取がある筈だ。
そして、生存者はとても虚ろな目をしていた。こんな明るい喋り方は難しい。
「隣だね、よろしく!」
「あ... うん」
自分でも酷いと思う返しだった。
「キミの名前は?」
「... 憂樹です」
「憂樹君か~、珍しい漢字だね!」
目を輝かせながら俺の机を見てくる。聞く必要.....
「隣の席のよしみで放課後学校案内、よろ」
「先生じゃないんですか普通」
ペンを回しながら答える先生。
「後でお前の好きな本を買ってやる」
「おけ、学校でも地獄でも案内します」
笑いながら俺を見てくる葵衣。
こう読み取れる。
[アタラシイオモチャ..... ♪ ]
俺は苦笑いを返した。
昼休み、お弁当タイム。
「憂樹~!一緒に食べよ~!」
朱里姉さんだ。1つ年上なだけなので、姉さんとは言いづらい。何気に3年生だ。
「ん、良いよ。食べよ」
姉さんが2つの弁当箱を取り出す。1つは俺のだった。
「持ってきてくれたんだ、ありがと」
「うふふ、憂樹はおっちょこちょいだからね~」
周りから見ても解る、デレデレだ。弟に対して。
「どしたの?顔色悪いよ?不味かったかな」
「いや、美味しいよ、気にしないで」
そっか、と姉さんは心配そうな顔で納得したような言葉を言う。恐らくバレてる。
「転校生さん、名前何?」
「え~と、確か..... 」
「生天目 葵衣です!よろしくお願いします!」
噛まなかったか.....
「よろしく、私は... 」
「朱里さん... ですよね?」
え...
「憂樹君から聞きました」
この女、やりおる。とりあえず、口裏を合わせることにする。
「ブラコンで大変だって」
火に油を注ぐ、只でさえ弟に隠し事をされ、不満が溜まっている姉さん。...図星を突かれると人は
「弟が好きで何が悪いの?」
開き直った。予想外、大ホームラン。
「あなたみたいに他人をオモチャみたいに扱ったりしない、愛でてるの!」
それもどうかと思う。だが、姉さんは葵衣の本質を[見つけた]ようだ。
葵衣からの視線を受け、放課後まで至る。
「それじゃ、よろしく!」
まず、屋上からだ。理由は...
人目につかないから。
「おぉ~、広い屋上だね、夕焼け綺麗~」
「この時間帯の屋上が俺は好きかな」
... さて、問いただす。
「それより、君の事教えて、何で[2つあるの]」
2つ... ?
「何が?」
「心」
意味不明だ。心が2つ...? 二重人格の事を指しているのだろうか... 心当たりが無いわけではない。
「そういうことが起きる位の事件があったんだろ」
いや... 葵衣の言っていることはそうではない。
「いや、君の場合、1つの心が別れたんじゃなくて、元々2つ、そんな気がする」
動悸がする。
「ねぇ... 何があったの?」
ヤメロ、
「君の過去に... 」
キクナ、
「教えてよ... 」
フレルナ...
手には黒い、暗い、長く鋭利な物質が握られている。
ニゲロ