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国語教師の苦悩

小説って難しいわー

頬に暖かい物が触れてから大分時間が経ったように思える。実際は数分、数秒なのかもしれない。そのくらい私はフリーズしていた。きっと顔はトマトみたいになっているのだと思う。自分でも顔に熱が集中してるのがよく分かるから。そんな私を面白そうに見つめている一宮先生が口を開いた。


「ほっぺにちゅーしただけなのに真っ赤になるなんて香織ちゃんかーわーいーいー」


「う、うるさい!!!ちゅーとか言うな!!!!」


私は決死の思いでやっとこさ言葉をつむげた。


「だ、大体彼女でもないのにいきなりちゅーなんてセクハラ罪で訴えますよ!!!」


「えーそれはヤダなあ・・・じゃあ香織ちゃん彼女になってー」


軽っ!!!こいつ驚くほどのチャラ男だ!!!!


「いやです!!!私はチャラい男は嫌いです!!!」


まったく少しでも頬にキスされてドキドキした自分が恥ずかしい。そうだ忘れる所だった。こいつ一宮幸也はこういう奴だった。危ない危ない騙されるところだった。


すると今までヘラヘラしていた一宮先生の表情が変わった。いつもみたいなふにゃふにゃした笑い方じゃなくてとても意地悪く笑った。あまりの大人らしい表情に思わず息を飲む。


「な・・なんですか」


少なからず緊張しているのか声が心なしか裏返った。やばいやばい。何緊張してるの私は!!!頭で色々と試行錯誤をしていたせいですぐ近くまで来ていた顔に気づくのが遅れた。そのまま一宮先生の口が私の耳へと寄せられた。


「あのさあ、あんまり男挑発しない方がいいよ?さっきからなんなの人のこと上げてその直後に落としてさらにはそんなに顔を赤くさせながら嫌いですだって?どんだけ人振りまわすの」


ちょっとかすれた声に体が強張っていくのが分かる。これはまずい。先生がご立腹のようだ。野生的勘のようなもので分かってしまう。私死ぬ・・・


恐怖からぎゅっと目を瞑った私だったがその次の瞬間ふわっと何かに包まれた。淡くコーヒーの匂いのするそれに私が何に包まれてるなんて一目瞭然だ。私は今一宮先生に抱きしめられている。


「えっ?先生ちょっと何なんですか!?新手の嫌がらせですか!?」半パニックの私にお構いなしに一宮先生は話を続行した。


「ちょっと今だけ。こうしてないと襲っちゃいそう。」


何か今とんでもない事を言わなかったか?


「俺さあうまい事隠してたんだけど、やっぱ無理っぽいわ」


「何がですか?」


「香織ちゃん、聞いて驚け俺には好きな人がいます」


「ええッ!?マジですか・・・・」


それは驚きだ。っというかなら私とこんな事してていいの!?


「あの一宮先生好きな人がいるなら私にこういう事するべきではないと思います」


私がそう言うと一宮先生は深いため息をついた。


「香織ちゃんてさあ、鈍感だよね・・・」


「何おう!?私の洞察力はすこぶる優れてますけど!?」


またもや心外だという風情で反論した私を一宮先生はまるで残念な子を見るような目で見てきた。何だその目は。


「じゃあ、言わせてもらうけど、俺の好きな人って香織ちゃんだからね?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」


私の思考回路が全停止した。冗談きついよ先生・・・・・

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