変化
少しずつ二人の関係が変わっていきます。
私はズンズンとある場所に向かって歩く歩く。
そして目的地である職員室のドアを思いっきり開けた。教員達が皆驚いているがそんな事今は気にしちゃいられない。私はある目的の人物を探しているんだから・・・。
しかしいくら探せども例の人物はいない。仕方がないので近くにいた教員にあいつの居所を聞いた。するとまた理科準備室だろう。という返答が返って来たので、私は理科準備室まで一目散に走った。
息を切らしながらに目的の場所に着くとそこの入り口に立ち入り禁止の看板が目に止まった。普段の私なら諦めて立ち去るだろうが、今はそんな余裕など持ち合わせていない。
私はあいつがいる事を祈りつつドアを一気に開いた。
「いちみやああああ!!!!」
私の視線の先にいた一宮先生は私の大声に驚いたのか目を見開いている。私はそんな彼に詰め寄った。
「・・・話がある。」
一宮先生は驚きつつも笑っていた。「いらっしゃい。この部屋に俺以外でこの部屋に入ったの香織ちゃんが初めてだよ。」
「何呑気にコーヒー飲んでるんですか。このカッコ付けが」
「えーかっこつけ?男は皆かっこつけだよ?」
「そんなこと言ってるんじゃありません。音村君から聞きましたよ。全部」
そういうとやっと事に気がついた一宮先生があーって言いながら頭をぽりぽり掻いた。
「音村君言ってましたよ自分のせいでいっちゃん怒られてなかった?って」
「・・・あいつは・・・もー」
一宮先生は今度はガシガシと前髪をぐしゃぐしゃにしている。
「生徒思いなのはいいですが、生徒に気を使わせてたらもともこもないでしょう。」
「うん。そうだね。これからは時間ずらすようにするよ」
一宮先生は申し訳なさそうに私に微笑んだ。
「・・・・そうしてください。」
私は今までどうしてこの先生はこんなに生徒に好かれるのか疑問だったけど、きっとこういう所なんだろうなあ・・・。
「私思ったんですけど・・・」
「んー?」
「一宮先生チャラいけど意外に思いやりがありますよね。ちょっといい人に思えました」
「・・・・・・・・・何急に」
「いや、音村君の話し聞いてて思ったんですけど、きっとそういう所が生徒に好かれるんだろうなあと思って。」
私の言葉に一宮先生は黙り込んでしまった。何で?そこは素直に喜ぶ所よ?珍しく私が素直に意見を述べたと言うに・・あ、言い忘れてた事があった。私は例の件を叱りにここまで来たんだった。
「あ、でも先生一つ言い忘れてました。」
怒りをなるべく出さないように出さないように・・・
「・・・えっ?何?」
「私のこと褒めてくれるのは大変嬉しいのですが、生徒に私の事香織ちゃんで通すの止めてもらえます?あと、何ですか可愛い笑顔って私がいつどこで可愛い笑顔なんてしましたか?」
よし、言えた!!!私が一番怒ってたのはこれだった。ふー危ない危ない忘れる所だった。
「香織ちゃんてさあ・・・持ち上げてから下げるタイプなんだ。」
一宮先生がゲンナリといった様子で私を見つめてくる。
「えっ?急に何言ってるんですか?大丈夫ですかー?」
一宮先生ががっくしといった風情で肩を落としたので何事かとついつい戸惑ってしまった。何分こんな一宮先生中々見れたもんじゃないし。
肩を落とす一宮幸也の図。うん。我ながらナイスネーミング。
「香織ちゃん今結構失礼な事考えたでしょう」
ええーバレてる!!!何か知んないけどバレとるーーーー!!!何?一宮先生エスパーなの!?怖い、私先生が怖い!!!!!
「言っとくけど、香織ちゃん顔に気持ち表れすぎだから。もう分かりやすくて笑っちゃうくらい分かりやすいから」
流石にカチーンと来るものがあるよ、ちょっと。
「私のどこが分かりやすいんですか!!これでも私学生時代ミスポーカーフェイスっていう異名があるんですからね!?」
心外だと言わんばかりに憤慨する私に一宮先生が「切れるとこおかしくない?」とケタケタ笑っていた。
「何なんですか!あれですかまたいつものからかいですか?」
一宮先生がニヤニヤする時は決まって私をからかう時に見せる顔だ。ふふん。最近遂に一宮先生を対処出来るようになったんだ。来るなら来い。どーんとかわしてやるぜ!!!
そう意気込んで構える私の頬に柔らかくて暖かい物がふにっと触れた。其れが何だったのか知る前にその暖かい物は離れてしまった。
呆然としている私をよそに一宮先生は私に飛び切りの笑顔を見せながらこう呟いた。
「まだまだ甘いね香織ちゃん♪」
私の思考はその瞬間完全にショートした。
一宮先生が・・・・