意外な一面
今回からちょっとずつ二人の絡みが出てくるはず・・・
今、一宮先生は反省文を書かされている。
何故かという理由は一目瞭然。あいつの完全なる自業自得だ。
あいつが何故反省文を書かされているかというと、あいつは生粋のサボり魔だ。学校へ来てある程度私をからかったのちに必ず理科準備室に篭る。そして朝の職員会議には滅多にに顔を出さない。顔をを出すときといえば、自分が中心になり報告をする時だけだ。
そんな彼が遂に自分が報告をしなければいけないのだという事を忘れたのか否かは分からないが、会議に姿を現さなかった。
今までいくらサボっても校長や教頭がお怒りにならなかったのは、一宮先生は自分の仕事はきちんとこなす人だったからだ。なのに今回自分の仕事を蔑ろにしたことで遂に校長も教頭も我慢の限界が来てしまったようだ。
そして今日放送で呼び出されて何故来なかったのか理由を聞かれた一宮先生が発した言葉にはさすがの私でも度肝を抜かれた。
一宮先生の言い分はこうだ。
「えー?俺、報告書机に置いてませんでしたか?それ見て進めて下さいって置手紙も残しましたよ?」だった。
これには校長も教頭も他の教員も怒りを通り越して感動を覚えた。私は何故こいつがクビにならないのかが不思議で仕方なかったが一宮の言うとおり机を見ると確かに置手紙と報告書が置いてあった。後で聞いたが報告書は完璧かつ見易く纏められていたらしい。恐るべし、一宮幸也・・・
そして文頭に戻る。今一宮先生は頭を抱えてうんうん言っている。一宮先生の自業自得ではあると思うが、さすがに少し可哀想に見えてくる。
私は頭を抱える一宮先生を視界の隅に捕らえつつ、職員室を後にした。
しかしどうも腑に落ちない。あんなにちゃらんぽらんな一宮先生だけど、今まで一度も自分の仕事を蔑ろにしたことはなかった。自分が任された仕事は自分がする。そういう考え方の人だと思うし。
あーだこーだと考えて唸っていると、一人の男子生徒が私の所に走ってきた。
「先生!!!」
切羽詰まった様なその様子を不思議に思いながら私も返事をした。
「何?音村君。」
「あの、いっちゃん・・・怒られた?」
いっちゃんとは恐らく一宮先生の事だろう。
「それをきいてどうするの?」
教師のプライバシーを生徒に話すべからず。と校長が言っていたので一宮先生が反省文を書かされている事は黙っておく。
「もし、いっちゃんが怒られてるなら俺のせいなんだ。だから誤解解いてあげて」
「・・・・・どういう事なの音村君。」
「実は俺理科の成績がガタ落ちして親に叱られたんだよね。んで落ち込んでたら事情知ってるいっちゃんが俺に任せろって言って今日勉強教えてくれてたんだよ」
だからそれで会議遅れたんだよ。と最後に音村君は締めくくった。
「それでさっき廊下で先生たちがいっちゃんの事でぶつくさ言ってんの聞いてさ、真相を確かめに来たんだけど」
・・・そういう事だったのかあのカッコ付けが。
「あの・・・先生は怒られましたか?」
不安そうな顔で私を見つめる音村君に私は笑って告げた。
「大丈夫よ。先生はきちんと報告書を机に置いて行ってくれたから会議に支障はなかったわ。」
まあ、半分ホントで半分嘘だけど。
それを聞いて安心したのかほっとした表情をした。
「さ、音村君そろそろチャイムなるわよ教室に戻りなさい。」
「はい。先生ありがとう。それにいっちゃんの言うとおりだね。」
「・・・なにが?」
「いっちゃんがね先生の中で頼るのに一番のお勧めは俺の次には香織ちゃんだなって言ってたんだよね。可愛い笑顔付だって笑いながら話してたよ」
そう言うと音村君は教室へと戻っていった。
私はその背中を笑顔で見送った後、踵を返してある所に向かった。途中すれ違う人が皆顔を青ざめた気がしたが気のせいだきっと。
私は歩くスピードを速めた。
読んで頂いて有難う御座います。