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2時限目 化学


あーヤバイ。


何の面白味もない、平坦なものになってしまいました・・・。

無駄に長いし(笑)


ご注意くださいm(_ _)m




 

 

 炎色反応を覚えるための語呂合わせが気に入らない。マジで。


「テストに出ますからね、きちんとね、はい。覚えといてくださいね、はい、はぁい。」


 配られたプリントを睨むように見る。『リアカー無きK村・・・』うんたらかんたら。気に入らないから最後まで言いたくない。


 いやもう本当、なんでこんなに嫌なんだろう。本気で気に入らない。

 こんな語呂合わせを覚えるくらいなら、私はテストで何点分でも落としてやる!


(・・・なんっか他にいい覚え方、無いかなー・・・?)


 気に入らないなら新しくしちゃえばいい。さすがに、炎色反応のところを丸々落とすのはちょっとマズイからな・・・。

 そう思った私の目に、『Sr/紅 』の字が飛び込んできて、次の瞬間、誰かが頭の中で叫んだ。





「サー!Sr(サー).Scarlet(スカーレット)!!」



 元気な声が、パタパタと小さな足音を連れ、リビングから飛び出てきた。


「おかえりなさい、サー・スカーレット!ベイク!」

「ただいま~。」

「ただいま。ところで、何かあったのか?シトラス(Citrus)。」


 シトラスはこくりと頷いた。

 まだ幼い彼女は、本名不明(NameUnknown)だ。“シトラス”と呼んでるのは便宜上のニックネームで、『決して本名ではない。』と当人は主張している。


「あ、そうそう!サー、お客様だよ。」

「客?」

「うん。ヴァイオレット中将。」

「あぁ・・・オッサンか。ベイク、悪いけど――――」

「はいは~い。コーヒー紅茶、お淹れしま~す。」

「ん、頼んだ。」


 共に買い出しに出ていた、緑色の髪の女性が、軽快に返事をしてキッチンに向かった。

 ベイキー(Bakey)・グリーン(Green)。通称、ベイク。一流のコックだ。

 私は、手に持っていた紙袋をシトラスに渡し、リビングに入った。


 リビングの中では、2人の男が向かい合ったソファーに座っていた。白髪のオッサンと、赤茶色の髪の青年である。


「あ、おかえりなさいッス、サー・スカーレット!」

「ただいま、カイン。お相手ご苦労。」


 彼は私の元・部下である。ここでは、カーマイン(Carmine)・オレンジ(Orange)と名乗っている。カインは通称であり本名だ。

 彼はピシリと敬礼をして、


「では、俺はこれで失礼します。」


 と、“清々した!”と言いたげな笑顔で出ていった。

 併設されたキッチンの方にその姿が消えると、オッサンがため息をついた。


「まったく・・・分かりやすい奴だな、本当に。」


 私はソファーに着きながら、しれっと言い返す。


「それがアイツの美徳でしょう、中将。」

「美徳と言っていいのか・・・?まぁ、嘘を吐けないという点では美徳かもしれんが。」


 白髪の彼は私の元・上司。ヴァイオレット(Violet)・K・プラネタ(Planeta)陸軍中将である。時折 私の傭兵団を訪ねてきては、無理難題を押し付けていくので、皆からは“疫病神”と呼ばれている。


「失礼します。」


 ベイクが私に紅茶を、オッサンにコーヒーを置いていった。それを互いに一口二口飲んでから、切り出す。


「で、今日はどのようなご用件ですか?」

「そう急くな、スカーレット。メンバーはみんな元気か?」

「変わりありません。―――――で、ご用件は?」

「・・・。」


 わざと端的に答えると、オッサンは黙って、半眼になった。


 沈黙とにらみ合い。


「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

「・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・。」

「・・・・・・中将の方は、いかがですか?部隊の皆様は、お変わりなく?」


 折れたのは私の方だ。

 途端、中将が笑顔になる。


「そうかそうか、気になるかスカーレット!そんなに気になるのなら、仕方ないな、皆の様子をとくと聞かせてやろう!実はな・・・」


 そうして始まった長大な無駄話。始めてしまったら、終わるまで仕事の話は出来ない。

 私はため息を堪えた。



 ティーカップが空になり、時計の針が3/4周した頃、ようやく話が本題に移った。


「―――――で、ここに来た用件だったな。」

「(ようやくか・・・。)」

「ん?何か言ったか?」

「おや、何か聞こえましたか?」

「・・・気のせいってことにしておいてやろう。」

「ありがとうございます。して、ご用件は?」

「あぁ、実は、少々 頼みたいことがあってな・・・」


 カップに残っていたコーヒーを一息に飲み干して、オッサンは顔を引き締めた。


「裏で、質の悪い武器商人の集団が派手に動いている。派手なわりに尻尾が掴みにくくてな・・・。」

「それを潰せ、と?」

「いや。商人自体は標的ではない。―――――そこから大量に武器を買ったテロリストどもがいる。」

「テロリスト?それは、軍か警察の管轄では?」

「本来なら、な。」


 中将は肩をすくめた。


「残念なことに、軍も警察も1ヶ月後に迫った大イベントの準備でてんてこ舞いなんだ。」


(てんてこ舞い・・・?)


 今時、そんな言葉は使わないだろうと思ったのだが、面倒なので何も言わずにおいた。

 代わりに、尋ねる。


「1ヶ月後に何かありましたっけ?」

「知らないだろう。トップシークレットだ。教えるわけにはいかないな。」

「そうですか。ナイル!」


 飄々とした中将の態度にイラッときた私は、隣の部屋に向かって言った。

 私の声を聞いた青年が、ドアから顔を覗かせる。ナイルブルー(Nileblue)・カーテン(Curtain)。当然ながら、偽名だ。

 彼は、首から先だけを部屋から出して、私に向かってサラリと言った。


「噂では、1ヶ月後に王家一族のお忍び旅行出立日があると聞いたが?」

「そうか。そうですか?」

「・・・・・・・・・。」


 中将は苦々しい顔で押し黙った。当たりか。さすがナイル。

 片手を上げてお礼を伝えると、ナイルは満足げに鼻を鳴らして隣室に引っ込んだ。

 しかしまぁ・・・テロリストか。1ヶ月後に合わせて作戦決行してくるんだろうな、おそらく。

 黙ったままの中将に聞く。


「どうして、テロリストのことを知ったのですか?」

「・・・例の武器商人たちを、一回だけ、追い詰めることができたんだ。・・・・・・逃げられたが。その時に聞いた。」

「随分とやり手のようですね、その武器商人たち。情報を受け取ってしまった以上、下手に手出しできなくなりましたね。」

「そうなんだよなーまったく。――――で、まぁ、調べてみたところ、本当に動きがあるみたいでな・・・。軍の方でも対策に動いていないわけではないんだがな。情報がまったく入ってこない上に、あまり派手に動くと・・・その、1ヶ月後のことを、一般人にまで悟られかねない。」

「なるほど・・・。それで、私たちですか。」

「あぁ。」


 ふぅん、なるほどな。私は心の中で、高飛車に頷いた。

 おそらく、軍としては厄介事を押し付けたいだけなのだろう。市井に混ざるテロリストを捜すには、私たちのようなフットワークの軽い者の方がよい。

 その上、私たちを利用すれば、いざというときのリスクが無い。・・・・・・そちらの理由の方が大きいか。


(そっちがその気なら・・・。)


 大人しく利用されてやる気などさらさらない私は、目を細めた。


「わかりました。では、軍の施設を少々お借りしてもよろしいですか?」

「む・・・。」

「それから、そちらがお持ちの情報を全て―――――1ヶ月後のことも含めて、開示してください。」

「・・・。」

「あと、制圧に必要な武器も支給して頂きたい。―――――どうせ、報酬などろくに払う気ないのでしょう?」

「ふんっ、失敬な。・・・・・・バレないように、出来るんだろうな。」

「もちろんです。リベロを向かわせましょう。」

「―――――あぁ、掃除屋か。」


 リベロ(Libero)・アップル(Apple)は掃除屋である。表の意味でも裏の意味でも。軍の清掃員に紛れさせれば、秘密裏にできる。

 中将はしばし、難しい顔で考えていたが、やがて


「・・・・・・あぁ、分かった、いいだろう。」


 と重々しく頷いた。

 よし、軍を巻き込めた。私は笑みを浮かべた。


「では、正式に依頼を受理いたします。」

「頼んだぞ。決して、1ヶ月後に支障をきたすことが無いようにな。」

「全力を尽くしましょう。」


 明言はしない。保証はできない。互いは互いを信用しない。それが、一番よい距離だ。

 オッサンは、仕事の話を終えると、来たときのような食えない笑みを作って、


「じゃあな、スカーレット。健闘を祈る。」


 と、出ていった。


「さぁてと・・・面倒だが、やるか!」


 私はのびをして首を回し、リビングを出た。





 ノートに並んだ7つの人名。


Sr.Scarlet

Bakey・Green

NameUnknown-Citrus

Nileblue・Curtain

Libero・Apple

Carmine・Orange

Violet・K・Planeta


 私はにやけそうになるのを抑えた。


(ヤバイッ・・・これなら、完璧に覚えられる!)


 それどころか、小説が1本書けるかもしれない。


 少数精鋭な傭兵団のお話。


 彼らのために化学の時間を妄想に費やして、テストで酷い点を取ったとしても、悔いはない!



 ・・・・・・・・・あれ?



 そういや私、何のために炎色反応を覚えようとしたんだっけ?


 

 

今となっては、不明であります(笑)



どうやら私、名前に趣向を凝らすのが好きらしい・・・。最近、名前にどうやって仕掛けをするかばかり考えているような気がします。


補足説明いたします。


☆Sr.Scarlet/ストロンチウム/紅

Scarletは紅というより緋色ですけどねー(笑)


☆Bakey・Green/バリウム/黄緑

名前の綴りが合ってるかどうかはさておき・・・。


☆NameUnknown-Citrus/ナトリウム/黄


☆Libero・Apple/リチウム/赤

リベロ=スイーパー=掃除屋。本来はサッカー用語であるらしい。


☆Carmine・Orange/カルシウム/橙赤


☆Nileblue・Curtain/銅/青緑


☆Violet・K・Planeta/カリウム/赤紫

プラネタ(K)リウムです(笑)




えー、長々と失礼いたしました。

この話はまた別にきちんと書きたいなーと思っています。


ありがとうございました!

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