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怪物

 三善家の別邸から飛び出した陣が見たものは、肉がぐずぐずに溶けかかった犬の群れだった。

 いかにも『屍犬』(ゾンビドッグ)といった見た目の怪物は悲鳴を上げた使用人に跳びかかり、足に噛み付き闇へと引き摺って行こうとしていた。


 陣は紀文に渡された刀の鯉口を押し上げ、すり抜けざまに居合を一閃させる。

 チンという涼やかな鍔鳴りの音と共に、屍犬の首がずるりと落ち、断たれた。


 渡された刀は無銘の打刀。だが、鞘は鉄拵てつごしらえ、柄紐は麻紐で荒く撚り実戦的な造り。

 不思議なほど手に馴染む刀を血振り、納刀して次なる敵へ。


「なんなんだこいつらは!」


 陣は使用人を背中に庇い、襲ってくる屍犬の群れを滅多斬りに切って捨てる。

 屍犬は非常にタフで、一回切りつけた程度だと怯む事もなく襲い来る。右手の刀で薙ぎ払いつつ、使用人を狙った一匹の口に鉄鞘を差し込み捻り込む。頚椎を破壊された屍犬は堪らず沈黙し、それを屍犬の群れに蹴りつけ牽制。


 群れが一瞬止まった隙に鉄鞘を振るい足元に線を引く。

 ここが『相馬陣』という名の結界だ。此処から先には一匹たりとて通さん、と。

 殺気とその意を存分に乗せ、屍犬を睨みつけた。


「陣様!ご無事ですか!」


「紀文さん!戦えない者は下がらせてください!

 敵は死に難い!狙うときは手足をやって行動不能にするか首を断つのが有効のようです!

 対処するときは一人で立ち向かわず、必ず何人かで囲い込んで!」


 慌てて駆けつけた紀文に使用人を下がらせてくれと言を飛ばし、陣は更に襲い来る屍犬を斬り、蹴り飛ばす。

 辺りには刺激性の悪臭が立ち込め、息をするだけで喉がひりつく。

 買ったばかりの服の袖を破り顔に当てて簡易マスクにし、次なる敵へと備えた。


 陣の苛烈なる威圧を感じ、殆どの屍犬は無策に飛び掛かるのを恐れ遠巻きに見るのみだった。

 だが、特に腐り方が激しく思考能力が落ちた怪物は、その威圧を感じる事もなく陣へと突っ込んできた。

 ある物は拳で頭蓋を砕き、ある物は鉄鞘を口腔から突き入れ、ある物は高々と蹴り飛ばされ群れへと押し返される。


 陣は気がついていないが、EAOで培った経験が遺憾なく発揮された結果として冷静に対処出来ているのだ。

 相手は現実に存在し得ない怪物だ。現実在らざる敵との戦いが身についていなければ、これほどには対処出来なかっただろう。


「陣!」


「来るな光彦!」


 別邸から顔を覗かせた光彦に怒鳴り返し、声に反応し光彦に向かう屍犬を鞘で弾き飛ばした。

 弾き飛ばされた敵は、遅ればせながら到着した三善の者達の槍衾に貫かれさながら剣山のよう。

 いくら死に難い怪物とはいえ、それだけ刺されれば息絶える。


「違う!見ろ、あの敵変じゃないか!?」


 光彦が指差す先にいた怪物は屍犬では無かった。

 犬のような面構えだが、直立し剣を持つ。そして妙にデフォルメされた容姿。見方によれば愛らしい愛玩動物のような外見。だがその実、なかなか侮れない腕力を持った馴染み深い毛むくじゃらのモンスター。

 それは、EAOでよく戦った『コボルト』の姿だったのだ。


「なんだ、ありゃ。コボルト、だよなあれ?」


「わからん!可能なら捕らえてくれ!」


「気絶するかどうかも分からんから確約はしないぞ!」


 陣は刀を納刀したまま屍犬を飛び越え、コボルトの鳩尾に柄頭をねじり込み、返す動きで鉄拵の鞘を後頭部に叩き込んだ。

 急所への苛烈な打ち込みに倒れたコボルトを肩に担ぎ、屍犬を踏みつけて別邸に戻り足元に放り投げる。


 陣はそのまま取って返し、陣が居なくなったことで前進してきた敵と対峙する。


「俺は手が離せない!縄か何か借りて縛っちまえ!」


「分かった!すいません!どこかに縄か拘束具になりそうな物ありますか!?」


 光彦は叫びながら別邸に駆け戻り、陣は一向に数の減らない屍犬を睨みつけた。

 その数、残り数十余り。

 陣は抜刀し、怒声を上げながら突っ込んでいった。



※---※---※---※

※---※---※

※---※


 コボルトを邸内に運び検証すると言った光彦に、念の為に紀文が護衛を付けてくれていた。だが、基本的に光彦はミシェルに全幅の信頼を置いている。彼さえいれば、例え怪物が暴れたとしても問題無いと知っているのだ。


 ミシェルは光彦の父、幸田源次郎が直接ヘッドハンティングして雇った執事兼護衛。

 元は米軍特殊部隊に所属のエリート兵だった。

 陣と光彦が出会ったとある事件。それそのものが起こった原因を重く見た源次郎は、私的に護衛が出来る腕利きの兵を求めていた。当時特殊部隊の部隊長だったミシェルは引退を考える年でもあり、源次郎のヘッドハントは渡りに船だったそうだ。

 彼の戦闘力は熟練の域に達しており、陣と比しても引けを取らないと光彦は確信している。


 そのミシェルを伴い、光彦は中庭にコボルトらしきモンスターを運び込んだ。EAOプレイヤーの仲間を呼びつつ改めてかの怪物を見るが、光彦の目にはそれはどこからどう見てもEAOで戦ってきたモンスターにしか見えない。


「君達にはこの怪物がどう見えている?」


 気絶から復帰したモンスターは、自分が縛られていると気付いて暴れだす。人に縛れば鬱血するほど強く縛ったので、例え相手がモンスターだとはいえそう簡単には千切られたりはしないだろう。ミシェルも後方で油断なく目を光らせている。陣がいないこの場では、彼以上に心強い者もいない。


「こいつぁ……」


 コボルトを見た剣歯が、絶句しながら口をパクパクと開閉させモンスターを指さす。

 他のメンバーも口に手を当てたり、思わず仰け反ったりと反応は様々だが、一様に『信じられない』といった表情。

 それはそうだろう。何故、現実にEAOのモンスターがいるのかなど分かるはずもないのだから。


 光彦は各々の反応を見て一つ頷き、自分が感じたことが間違いではなかったと安堵する。

 光彦をして、本当にこの敵が『コボルト』であるかなど自信が持てなかった。これだけ立て続けに異常事態が続けば、自分の頭すら可怪しくなってしまったのかと邪推してしまったのだ。陣だけではなく他の面子も同じ印象なら、さすがに幻を見ているわけでも無いだろう。


「皆のその反応を見て確信した。やはりこのモンスターは『コボルト』だと思っていいだろう。

 外で襲ってきている敵は明らかな怪物だが、こいつだけはEAOのモンスターのままだった」


 光彦は顎に手をやり、その怜悧な眼差しでコボルトを見据える。

 何事かを悩み、決断をしたのか三善家の使用人に槍を持ってこさせた。

 光彦の行動を訝しく思ったミシェルが言う。


「光彦坊ちゃま。何をなさるおつもりですか?」


「試してみたいことがある。

 敵のサンプルは陣が倒している敵から取れるだろうからな。こいつを殺してどうなるのかを確認したい」


「!?

 なんでわざわざライトさんが!?ゲームじゃないのよ!ここは戦える人に任せたほうが……」


 光彦の台詞にミオソティスやプリムラが血相を変えて詰め寄った。

 確かにこれはゲームではない、現実だ。本来であれば戦える者に任せて然るべきなのだろう。だが、相手はEAOに存在しない筈のコボルト。ならば、EAOプレイヤーだった自分が、今しなければならないことは一つだ。


「これが現実である以上、いつ終息するかも分からん。先程の話を聞いている限りでは原因すら分かっておらんではないか。

 今は一つでも多くの情報を集め、少しでも多くのヒントを見つけるべきだとは思わんか?

 そして私は私の矜持にかけて、ただ陣や周りの者に助けられ影で怯えるなど我慢が出来ん。

 このモンスターはEAOのモンスターと酷似している。ならば」


 光彦は受け取った槍を構え、コボルトに向けて無造作に突き込んだ。


「私達EAOプレイヤーが確かめずしてどうすると言うのだ!」


『GYAOO』


 コボルトは一撃では死なず、光彦は何度も槍を突き込む事になった。

 例えこのモンスターがEAOの雑魚モンスターだったとしても、今対峙している光彦は『EAOトッププレイヤー、ライト』ではない。極普通の一般人程度の腕力しか無い光彦では、当然一撃で屠ることなど適わなかった。

 肩で息をし返り血で顔を汚しながら、その一瞬、一挙動すら見逃さんと光彦は鋭く見つめ続ける。


 そして何時しかコボルトは息絶え、『粒子を撒き散らしながら爆散』した。

 かのモンスターがいた証として、汚れた小石一つ残して。


 立て続けにあり得ない状況を突き付けられ、完全に固まってしまった周囲を尻目に光彦は小石を突く。

 傍目には何の変哲も無い石ころだが、ここまで異常な事が続けば何が起こるかなど分からない。石橋を叩いて渡るくらいで丁度いいのだ。

 取り急ぎ変化の無い小石を、それでも素手で触るつもりにはなれずハンカチ越しに拾い上げ、まじまじと眺める。

 どれだけただの石ころに見えようが、怪物が落としたものだ。今後なんらかのヒントになる可能性もある、ぞんざいに扱うわけにもいかない。


「今の、死に方……」


「あぁ、あれはEAOに出現ポップする『コボルト』で間違いないだろう。

 この石が何かはさっぱり分からんが、ドロップ品のような物か?

 ミシェルさん。これ、保管しておいて貰っていいですか」


 光彦はその石をミシェルに預け、更に自分の思考へと没頭していった。



※---※---※---※

※---※---※

※---※


 その時、陣は屍犬を屠り続けていた。

 相手の動きは素早く、また死に難い体を利用して強引に攻撃を仕掛けてくる難敵。

 数が減る事によリ闘争本能が刺激でもされたのか、先ほどまでは抜群に効いていた陣の威圧も効かなくなってきていた。


 三善家の使用人達は怪我人を出しつつも、『この時が今までの修練の見せ時』とばかりにかなりの奮戦を見せていた。

 理由は不明だが、倒した屍犬の姿がいつの間にか消えていたのも幸いした。あれだけの数の死骸が残っていればそれが邪魔になり、1対多数で包囲するなどといった戦術を取り続けることは難しかっただろう。


 ついには激しく襲いかかる屍犬もその数に底が見え始め、叶わぬと見て取った敵から撤退していく。


 あれを野放しにするのは不味い、そう感じた陣が追撃しようとした時、紀文から待ったがかかった。


「陣様!追うのは三善の者にお任せ下さい!

 陣様は身を清め、次なる動きにお備え下さいませ。

 刀は整えます故、お預かり致します」


「わかりました。お任せします」


 陣は仰々しく畏まる紀文に座りの悪さを覚えつつ、刀を渡し邸内に戻っていった。




〓〓東京・三鷹・三善別邸・風呂場〓〓


 三善家の風呂場に案内された陣は、手早く服を脱ぎ去りそれをゴミ箱に突っ込んだ。

 折角買ったばかりの物。勿体無いとは思うのだが屍犬の腐汁に塗れたそれを、どんなに洗った所でもう一度着る気にはなれなかったのだ。


 しかし、数の多い三善家の者が入るためか、風呂場一つとってもかなりの大きさだ。大学寮にある大浴場と比べても遜色ない広さ。

 タオルを腰に巻き風呂場に入ると、そこには頭にタオルを乗せた光彦が陣を待っていた。


「よう、陣。お前も風呂か?」


「なんでお前がいるんだよ!?」


「色々とあったのだよ」


 片手を上げながら挨拶する光彦に陣は突っ込みを入れつつ、光彦が出るのを待つのも面倒だと体にこびり付いた腐汁を流す。

 光彦はトレードマークでもある眼鏡の曇りを何度も拭うが、その度に曇るので諦めて傍らに置いた。

 体を洗い終えた陣が浴槽に浸かると、光彦はそれを横目に陣へと言う。


「あの怪物はどうなった?死体は残っているか?」


「粗方倒したら逃げていったよ、今は三善家の使用人達が追ってる。死体は何故か分からんが消えちまったな」


「やはりな。コボルトも倒したら消えてしまったよ。

 そういえば、あのコボルトはやはり『EAO』で出てくるモンスターのようだ。倒した際の消え方がEAOそのままだったからな。他の連中もあれがEAOのモンスターだと頷いていたよ」


「また無茶したな……。大丈夫だったのか?」


「返り血を浴びてしまったくらいだ。だからこうやって風呂をもらっている」


 光彦はなんでもなかったようにそう言って、手でお湯を掬い顔に浴びせた。

 なんでもないように言っているが、これはゲームではない。現実だ。

 慣れている者なら兎も角、一般人が一定上の知性を持つ生き物を殺すというのは難しい。特にこれは日本人に見られる傾向だが、肉として処理されている家畜は美味しくいただけても、その家畜そのものを目の前にして『殺せ』と言われてもなかなか出来る事ではなかったりするのだ。

 これは肉食文化としての歴史の浅さからも来ることなのだが、それ専門に仕事として関わっている者でなければ忌避感を覚えて当然なのだ。


「それで、だ。あれがEAOのモンスターだとすると、仮定に仮定を重ねることになるが一つの推論が成り立つ。

 陣、前に話したDr.ミカミが研究していた事を覚えているか?」


「内的世界と外的世界がどうこうってあれだろ?

 そういえば腹減ったな……。タモギタケの天麩羅が食いてえなぁ……」


 昼食もまともに取らず、食べたのは剣歯ソードトゥースが土産に持ち込んだケーキだけ。普段から激しいトレーニングによって人一倍に大食いになっている陣だ。集中していた状況が収まれば、主張し始めた空腹が堪える。

 光彦は陣の様子に呆れ、頭に載せていたタオルを目頭に当てた。


「私も腹は減っているが我慢しろ。使用人に頼めば何か用意してくれるだろう。

 それでDr.ミカミの研究の話だ。

 今の事態、幻でもなんでもなく、現実としてこの異常な状況が進行している。

 個々人の認識する内的世界では無く、完全界である外的世界が異常を来していると思わんか?

 そして、現れた怪物があの腐った犬だけではなく、EAOのモンスターと思しき怪物までも現れた」


 光彦はタオルで顔を拭い、陣を真剣に見る。

 眼鏡というフィルターの無い彼の瞳は、その切れすぎる瞳を持って自身の予測を告げた。


「私はな、陣。どうもこの事態をDr.ミカミが引き起こしたような気がしてならないんだよ。

 こんな常識すら揺らぐような事を『どうやって』成したのかは分からんが。

 彼にしては不可解にして強引なEAOの中止、そして公の席に一切姿を表さない徹底した雲隠れ、現れた怪物の中に紛れ込んだVRMMOの世界にしか存在しないモンスター。

 仮定に仮定を重ねた暴論だとは分かっている。だがどうにもそんな憶測が頭から離れない」


「いくらお前でも、それはさすがに飛躍しすぎじゃ無いか……?

 可能性を論じるのも大事だろうが、今は現実としての脅威が迫っている。さっきのが日本中で起こっているならパニックになるぞ。俺達に出来ることは少ないだろうが、先ずは何をするべきか考えるのが優先だろ」


 確かに原因さえ分かれば、それを取り除くための対策も打てるだろう。

 ただ、光彦が言う憶測だけでは『弱い』。あの怪物の襲撃が一回だけ、そしてこの場所だけに起こったというのは楽観的に過ぎるだろう。もし、この事態が続くようなのであれば、目の前の者だけでも守れるよう動かなければならない。。

 それが例え対症療法に過ぎないとしても。そして、目に見えない命が掌から零れ落ちていくのだとしても。


 何を弱気なと自己に一喝し、陣は一度湯に潜り立ち上がった。

 出来る事があるならば、自分は一つ一つに全力で当たればいい。


 陣が光彦に断り先に風呂から上がろうとしたその時、脱衣所の先から何者かが慌てて駆け込んでくる足音が聞こえてくる。

 陣が慌てて腰にタオルを巻いたと同時に、スパーンと風呂場の戸を水穂が開き乱入してきた。


「あ、あにぃ大変だ!これ!これ見て!」


「アクアさん!今は陣さんとライトさんが……キャーーー!」


「それどころじゃないのじゃー!」


 水穂を追ってきたミオソティスは、裸の陣達を見て顔を赤く染め逃げ出す。

 水穂と鞠子はそれどころじゃないとばかりにずかずかと風呂場に入り、陣の前に仁王立ちした。


「ミオっち!あたしはあにぃの裸なんて見慣れて……これはこれで良い……。

 じゃない!大変なのだ!これを見て」


 指先を陣の前にずいっと出し、彼女が呪文を唱え「着火(イグニッション)」と言った瞬簡に、指先に炎が灯った。

 陣は唖然とそれを見つめ、光彦は納得したように頷く。


「な?な?すごいな!さっきコボルトがいたから『なら魔法もつかえるんじゃね?』って思って使ったら使えてしまったのだ!

 ステータスは無いらしくて腕力とかは元のままだけど、魔法が使えるなら手助けもできるのだ!

 今はソニアっちとプーちゃんが怪我した人に回復魔法かけてる!ナトリんはコボルト倒した時に出た小石を魔法で観察してるのだ!」


「そんなちゃちな炎よりこっちが凄いのじゃ!ほれ!式神が!式神が踊っておる!」


 水穂はゆらゆらと指先の炎を消したり付けたりし、鞠子は紙で折られたマッシヴな人形を掌で踊らせご満悦。

 確かに驚いた、さっきから理性に挑戦するような事態ばかりだったが、これは極め付きだろう。

 まぁ、それはさておき、


「わかったから出て行けぇ!!」


 陣は水穂と鞠子を風呂場から叩き出し、光彦を振り返る。

 光彦は風呂に浸かったまま手元に光球を浮かべ、陣ににやりと笑いかけた。


「確定、だな。どうやってかはさっぱり分からんが、VRMMOの世界の法則が現実の世界でも適用されている。

 言うなれば、『EAOの外的世界』が『現実の外的世界』の法則に侵食し始めている。

 こうなると逆に、何故襲ってきた怪物はあの腐った犬がメインで、コボルトが一体しかいなかったかが不思議な程だ。

 もしかすると、『煉獄』(インフェルノ)の先であの怪物が出てくるのかもしれないがな」


 陣はあまりの胡乱さに精一杯嫌そうな顔を浮かべさせながら脱衣所に向かう。

 色々と納得のいかない事が多い話だが、何の方針も見出だせない状態より幾らかはマシ。陣は自分にそう言い聞かせ、用意された作務衣を着込んだ後、まずは腹ごしらえをすべく使用人を探し始めた。

 戦略は光彦、戦術は陣という役割分担だ。その戦略担当ずのうが行けと言うなら、戦術担当てあしは全力で行けば良い。そう割り切ることにした。

ワンポイント時代劇コーナー

本来血振りの後、ないし血振りはせずに懐紙で拭い納刀するのが正統な表現なのですが、ちょっと冗長かなと血振りして納刀するシーンに致しました。なので、紀文が整えると持っていったんですね。

最近は時代劇もあまり作られなくなりましたのでより見かけなくなった表現ですが、過去武家階級のような高い身分の侍は懐紙を常に懐に入れていたそうです。時代劇でも主人公が身分が低い場合は血振りのみで済ませる表現が多いですが、本来ならそんな事をすれば当然錆びつきますよね。

古い作品ですが、鬼平犯科帳の長谷川平蔵や必殺仕事人の中村主水はたまに懐紙を使うシーンが見られ、椿三十郎や座頭市等は血振りのみで済ますという違いが見受けられます。時代劇では懐紙を使って血を拭った後それをばら撒くといった表現が見受けられますが、本来は懐に入れて後に処分していたというのが通説なようです。そりゃあ現場に証拠品ばら撒かないよなと。貴重品ならそこから足が付きそうだし。

映像という表現にも通じるのですが、懐紙に限らず紙というのは高級品で見栄えという事情だけではなく『浪人者』には中々手を出せない表現だったのだと思います。

そもそもリアルを追求するのであれば何度も居合で骨を断ったりするのは可怪しいですし、何か硬いものを斬れば刀身が曲がってしまったりもするのですが。実際に斬鉄を出来る達人も存在はしているそうですが、やはり多少刃が欠けてしまったり刀身が曲がってしまうそうですので。そこはファンタジーということでご容赦ください。


しかし、サービスカットになりやすい風呂場シーンが野郎二人とか……。そんなだから心葉大学の腐ったお姉さまに追われるのです、自業自得だ。色気皆無なEAOを今後とも宜しくお願いします!(・w・)ノ

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