決闘
風邪が全く治りません。出社したら酷くなるとか…w
時間が空いてしまった分、切りが良い所まで長めの投稿です。
出っ歯を店の扉越しにふっ飛ばした光彦は、唐突さについて行けず静まり返った店内を睥睨する。
彼の中で「セリフが聞こえなかったのであろう」と決め付け、何時ぞやのような演技掛かった仕草で外套を払い―
「ならばもう一度名乗ろう!我は『黄金福音』のライト!この決闘は我がぁぶしゃあぁぁ!?」
「馬鹿が大手振って湧いて出てくるんじゃねえぞこの駄メガネが!?
なんとか落とし所見つけたのに何してくれるんだテメエは!?」
陣の打撃を食らい錐揉みを入れ、派手な騒音を立てながら陳列している武具に突っ込んで行く光彦。
水穂は「あにぃもライトっちもいいぞ〜」と無邪気に喜んでいるが、周りの客やプリムラは一様に額に手を当て嘆息している。
事態に全くついて行けず呆然とする出っ歯、登場したと同時に退場する光彦、肩で息をする陣、この状況に呆れている周りのプレイヤー。正しく混乱の極みだ。
街中では決闘以外でのダメージが入らないことからか、光彦は巻き込んだ武具を跳ね除け、即時復活を遂げる。瞳を輝かせるエフェクトを背負っている所まで一々芸が細かい。跳ね除けた武具を丁寧に元に戻すという几帳面さを見せた後、改めて陣に向き直る。
「こんな面白そうな事に介入しないで何のための『黄金福音』だ!
当事者が例え嫌がろうが無理矢理に場を盛り上げる!それが俺達のジャスティス!」
陣は友人の普段とは違う一面を見て呆然と―
しそうになったが光彦は元から快楽主義者的な面があり、それが開放されていれば別に不思議は無いと気を持ち直す。光彦以外の『黄金福音』メンバーを知らないが、全員こういうキャラクターの面子なのだろうか。馬鹿一人で十分だ、これが増えるとか心底面倒臭い。
光彦の介入に納得が行かないのが出っ歯のプレイヤーだ。
「ちょっ!ライトさんよぉ?いくら攻略組だっつっても勝手が過ぎるんじゃねえか!?
フザケるんじゃねえぞコラ!?」
「お前こそ何を勝手にPVPを始めようとしている!
決めるべきレギュレーションも定めずにどう決着を付けるつもりだ!?」
「オレとソイツの喧嘩に他人が割り込むなつってんだ!?」
『黙れ出っ歯!!!』
光彦がわざわざ声量拡張魔術を使ってまで出っ歯の言を遮る。
近距離で最大音量の拡声器と同レベルの声量を叩きこまれ、出っ歯は目を白黒させて尻餅をついてしまう。大音量に店外にいたプレイヤーも流石に気づいたのか、何があったと壊れた扉越しに「プリムラ武具店」を覗き始める。遠からず観客も増えてしまう事だろう。出来るだけ穏便に済まそうとしていた陣からすれば頭の痛い話だ。
出っ歯を黙らせたことに気を良くした光彦は小さく頷くと。
「まず気に入らないのが、貴様が勝利した場合の条件が『プリムラ嬢が断った貴様の武具制作を受諾する』。
まぁプリムラ嬢が納得してないようなので問題あるが、当事者同士の許諾があればこれは良いだろう。
それで、貴様がそこのジン、剣銃士に負けた場合どうするつもりなのだ?」
「あ…?オレが初心者の剣銃士に負けるだと?
テメェの大声で耳鳴りしてっから聞き間違えたのか?」
「しっかり聞こえておるではないか?
もう一度声量拡張魔術ぶち込んでやろうか?
それとも『四神会』の『四神』でも連れてこようか?」
出っ歯はこれ以上鼓膜にダメージ与えられては敵わんと。またこんな下らない用事に『四神会』の4人のリーダー、『四神』の手を煩わせたという事になれば、彼ら以外の「レイドレギュラー」と呼ばれる12人からどんな叱責があるか分かったものではない。いや、ギルドリーダーからどんな目に合わされるのか…。嫌な汗を感じながら、光彦に卑屈な笑みを向ける。
光彦が本当に『四神』と交友があるのかは分からない、それが虚偽の可能性も多分にある。だが、彼も熾烈な攻略最前線で戦うプレイヤーだ。何らかの交流があってもおかしくはない。
折角苦労して入ることが出来た『四神会』、EAO最大ギルド所属というだけでも周りのプレイヤーからの見る目が変わる。そして「四神会のレイドレギュラー」ともなれば押しも押されぬ攻略組。EAOプレイヤーでの強者ランクにおける頂点の一角にすら成れる。些細な失敗からその立場を失うわけには行かない。
しかし、済し崩しにしてしまうには「生産者トップの一人、プリムラが作った武器」という威名は余りにも惜しい。これから出っ歯が『四神会』の中で伸し上がって行くためには、是が非でも欲しいアイテムなのだ。
「へへ…ライトさんよぉ?そうは言うが俺だって結構掛けてるんだぜ?
初心者、しかも剣銃士なんかに負けたとあっては、『四神会』内部のオレの面子は丸潰れだ。
面子を掛けてるんだから掛け金としちゃ悪くねぇだろ?」
「と、出っ歯は言っているが、ジン、プリムラ、お前らはどう思う?」
話の外に置かれていた陣は、唐突に光彦から話を振られ一瞬焦る。
先程までの「一触即発」という雰囲気では既に無く、気が抜けていたのだ。
「え?シジンカイ?とかいうのさっきまで知らなかったし。それの面子って急に言われても俺にはピンと来ねぇよ。
つーか、戦りゃぁ場が収まりそうだったから受けたけどさ。そもそも何で俺とそこの出っ歯が戦って、その勝敗で武器作ってもらえる方が決まるって話になってるのが未だに理解出来ねえんだが」
「完璧にこじつけだかんねぇ…。
おちょくってたアクアやアタシに喧嘩売らずに、レア防具は身につけてるけど初心者丸出しなジンさん、与し易いと見た相手に喧嘩売ったってのが卑小さのいい証拠さね。
アクアに手ぇ出したらファンからどんな報復受けるか分からないし、アタシに手ぇ出してコレ以上ヘソ曲げられたらもっと頑なに断られるって思ったんだろ。最悪、『四神会は出入り禁止』って宣言もアタシには出せるからね。
面子なんて1Gにもならないモン持ち出してるのもねぇ。これで相手が『四神』なら言う通りだけどさ…。っとぉそうだ」
プリムラの頭に電球が明滅するエフェクトが発生、「ニチャ」っという笑みになり尻餅をついたままの出っ歯と目線を合わせる。プリムラがドワーフ職特有の「体躯の小さな可愛らしい」見た目だけに、その「多分に陰湿寄りな」笑顔を間近で見た出っ歯はドン引きだ。角度的に見えてしまった陣や観客もかなり引いているが、気づいたプリムラがニコニコと手を振ってくる。観客には武具店の客も居るだろうから、あざといというか商魂たくましいというか。
本性を隠す気がないらしい陣や光彦に聞こえる程度の、若干ドスの聞いた小声でプリムラが出っ歯に尋ねる。
「オイ、アンタ。
アタシに武器生産を依頼しようってんなら、それなりにレアな生産素材持ってきてるんだろ?
そいつ、掛け金代わりに出しな」
「追い剥ぎかテメエは!?ウーツだぞウーツ!いくらすんのか分かってんだろ!?」
「へぇ、3流の割にゃ張り込んだねぇ。
ダマスカスシリーズの素材じゃないか。今の最前線素材と比べると一段落ちだけど、ちょっと前だったら結構な品質だね…。
よし!ライトさん、アタシは乗ったぞ!この勝負、勝った方に作ってやる!」
ちょ、ま、ええ!?と出っ歯は赤・青・白とフランス国旗のように顔色を変える。
光彦は「勝つと確信しているから振った勝負だろ?何せ相手は剣銃士、勝てばいいのだ」と、悪徳商人が一見有利な取引を持ちかけるかの如く出っ歯の肩を叩いている。プリムラは「壊れた剣銃の代わり持って来てやるよ」とスタスタ店内へ。
しかし、これではどちらが悪役だか分かったものではない。あまりにも出っ歯が哀れで、陣はかなり同情する気分になってしまっていた。
光彦と再開して早5年。彼が引き起こす快楽主義的な数々の事件、巻き添えや被害に合っていたのはいつでも陣だった。物理的な危機的状況は鍛え抜いた身体能力で、関係各所への迷惑行為は一緒に頭を下げて来た腐れ縁なのだ。
出っ歯に対して軽い「ストックホム症候群」的な心理状態に陥ってる陣。
ここで彼に負けるのは業腹。かと言って勝ってしまうのも、彼の様子からウーツとやらを入手するまでの労力が偲ばれて気が咎めてしまう。
プリムラが持って来た代替の剣銃を受け取ると、出っ歯がついに悪魔の契約書に判を押したのか涙目で「やってやるァ!」と気勢を上げて素早くメニューウィンドウを操作、決闘《PVP》の申し込みをする。陣の目の前にいくつかのウィンドウ、システムメッセージが流れる。
『System Message:プレイヤー「ソードトゥース」より決闘の申し込みがありました』
『System Message:許諾する場合はPVPモードを選んで下さい、許諾しない場合は「NO」をタップして下さい』
「って、名前も『剣歯』ってどんだけ出っ歯に誇り持ってるんだよお前さん…。
光彦、PVPモードって何選べばいいんだ?」
この初心者丸出しのセリフはどうしようも無さ過ぎるだろう。
こりゃ勝負にならんと幾人かの観客は離れ、出っ歯は顔に喜色を湛える。
そういえばPVPモードの説明してないと光彦は天を仰ぎ、
「『デッド・オア・アライブ』は見てる観客も後味悪いから止めた方がいい。
そのウィンドウの中に『ハーフ・アンド・ハーフ』があるからそいつにしておけ。体力が50%切るか規定秒数が経過すれば決着が付く。かつ、そのモードが一番盛り上がる。」
陣が画面をタップすると、周辺に陣と出っ歯の体力バーが出現。決闘《PVP》開始までのカウントダウンが始まる。
スッと光彦が陣に近寄り、小声で忠告する。
「分かってると思うが、まだ陣の相馬流がEAOに与えている影響は不明。簡単に公に出来る段階じゃない。
そして、何度か連中のレイド戦を見ているが、雑魚臭のする小物に見えてあの出っ歯も『四神会』の準レギュラーだ。
派手な技が使えない状況じゃ血狼に勝ったようには行かんかも知れん。油断するなよ」
「あぁ、なんか戦う理由を他人任せにするようで気は乗らんけど、気楽にやるさ」
「馬鹿者!介入した私の面子も掛かってるんだ!負けるんじゃないぞ!」
「って面子はどうでもいいんじゃなかったのかよ!?」
「面子が1Gにもならんと言ったのはプリムラ嬢だ!残念ながら私は面子を大事にする方だ!」
「なんか色々台無しだなテメェ!?」
陣と光彦が不毛な言い争いをしている間に、刻々と開始時間が迫る。
心が乗らない陣は気構えが全く出来ぬまま、技を封じた不利な戦いに挑む事に相成った。
『System Message:Count 0 :モード・ハーフアンドハーフにてプレイヤー「ソードトゥース」との決闘が開始されました』
陣VS出っ歯・開戦。
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「さぁ〜始まりましたPVP!本日は『人界』エリアシティ・プリムラ武具店前よりお送りします!
対戦者はピッチピチの初心者!なのにお知り合いは有名人ばっかり!な剣銃士のジンさん!
そしてギルド『四神会』の明日のホープ(?)、白い出っ歯がトレードマーク!な盗賊の上位職!忍者のソードトゥースさんです!
ゲスト解説員はギルド『黄金福音』の『道化者』ことライトさん!同じくギルド『箱庭』のアイドル★『剣舞姫』ことアクアさん!そしてスペシャルゲストとして今を時めく生産者、ドワっ娘はステータス!『超姉御』ことプリムラさんと豪華メンバーでお送りします!
言い遅れました!ワタクシ女の子なのに司会者職!でお馴染みのグラス・金魚です☆気軽に金魚って呼んで下さい♪」
「「「どうも〜」」」
唐突に現れた少女が、やはり唐突に実況を始める。
割りと可愛らしい顔をしているのだが、ぴょんぴょん跳ねる動作や姦しい声はどう見ても小動物。
小さなお団子頭は自分の忙しなさを分かっているせいか。まぁ妙な愛嬌がある女の子だ。
「ジンさんはPVP初めてって事なんで解説しちゃいます☆PVPとかのイベント事の時は近くにいる司会者職が自動的に司会進行をさせて頂きます!こういう時じゃ無いと経験値と熟練度をゲット出来ない不遇職なんでご協力下さい!
ではさくさくはじめちゃいま〜す☆」
金魚が大げさに手を振りかざし、ゴングの音が響き渡る。
陣は構えを取って後の先狙いの風、出っ歯はジリッと距離を詰め陣の隙を伺う。
「さぁて先ずはお互い様子見か!ジンさんは剣銃を手に持ったまま、ソードトゥースさんはダガーを構えたまま動きません!
これはどういう状況だと見ればいいですかライトさん?」
「まず、ジンは血狼長衣こそ着ているが本当に初心者だ。壊していた武器は先程プリムラ嬢から代替物を渡されたようだが、あれは初心者用の剣銃に毛が生えた程度の物。攻撃力も当然低いだろう。
そして経験差、ジンには出っ歯がどんな職でどんな技を使ってくるのかも分からない。
そうなると取れる戦術は必然的に少なくなる。私が見るに後の先、カウンター狙いだろう。
あぁ、ちなみにソードトゥース君は今後出っ歯と呼んであげるように」
「はーい♪しかし出っ歯さんはなっさけないですね〜★
EAOプレイヤーとしてのキャリアは全然違うのに様子見ですか〜★」
(っチ!好き勝手に言ってくれる!この剣銃士本当に初心者か!?
打ち込める余裕が無ぇ!)
陣はダラリと剣銃を柄ごと握り持ち自然体、一見隙だらけに見える。だが出っ歯から見るとそうとは言い難い。確かに隙だらけなのだが、その隙に自分のダガーを打ち込んだ後に自分が勝利しているビジョンが描けない。なまじボスモンスター等と違い『プレッシャーを一切感じない』事が逆に恐ろしい。
自分の想像力で勝負の推移を見れるだけ、流石は準とは言え巨大ギルドのレギュラーメンバー。勝負勘を養うだけの修羅場は潜っているらしい。
だが状況を動かせないのは陣も同じ。周囲が不自然に思わない程度の小技とEAOにおける剣銃士のスキルしか使えないという状況だと、今の陣では即時性や決定力に欠けるのだ。
(なんだあの司会席って!?いつ設営したんだよ!?
…まぁいいとして、どう組み立てるとすっかねぇ…。
こんな事なら今日ログインした後に剣銃士のスキルちゃんと見ておくんだったなぁ。一番始めにグレイウルフに使った剣銃斬撃スキルしか分からねえぞ俺…。
まぁ、まずは打ち込ませて見るかね)
陣は僅かに前進し、軽く石を踏み誘いをかける。
期を伺っていた出っ歯は、「貰った!」とダガーで高速突き!出っ歯にとって会心の突きだったにも関わらず、陣の前髪を数本散らすのみという結果に終わる。
内心舌打ちを入れた出っ歯は、陣の切り返しを恐れて素早くバックステップ。プレッシャーでは無い「何か」を肌で感じている出っ歯は、何と誹られようと「徹底的な安全策」で挑むことに決めていた。
避けた陣にしても出っ歯の突きに内心舌を巻く。想定以上に技が速かったのだ。
(避けられなくはねぇけど、思ったよりは速ぇな。
光彦が忠告する訳はあるって事だねぇ、まぁやれるだけやって見るか)
「おーっと出っ歯さんの忍者系短刀突きスキル『蜂雀』が炸裂!
ビギナーズラックか、ジンさんなんとか避けましたね―。これはどう見ますかアクアさん?」
「ん〜。あにぃの事だからわざと…。えっとな、たぶん石に当たってコケそうになってたから上手く避けれたんだと思うぞ〜」
光彦に脇腹を突かれ、陣の能力内緒にするんだったと思い出した水穂は、咄嗟に偶然と言い換える。
「やっぱりそうですよね〜☆
って兄!?アクアさんとジンさんはリアル兄妹ですか!?そういうロールなんですか!?
キャ〜☆そこら辺の話もうちょっと詳しく!っとジンさんに動きがあった模様です!」
この戦いに於いて、陣は初めて剣銃を抜き放つ。
アイテムストレージの肥やしになるだろうと思っていた『魔弾マガジンLV0+5・無限弾』の弾倉を剣銃に叩きこみ装填。そして、まるでお手本の様な立射姿勢。
「ヒャハッハッハ!オメェ馬鹿だろ!剣銃の豆鉄砲でどうやってオレ倒す気だ?そもそも当たるわきゃねぇだろ!?
今なら『降参』すりゃ認めてやっッブ!?
って人が折角気をヅァ!?だから喋っディル!?だからやめろっデェィ!?」
「土下座しろ」や「靴を舐めろ」的な事言わない所が、彼がいまいち悪意に徹し切れない『小物』な所以なんだろうなぁと思いながら、陣は冷静に魔弾をばら撒き続ける。
確かに剣銃は集弾性能も悪いし威力も低い。剣銃で魔弾を撃つ際に出るガイドカーソルをあえて無視し、相馬流ならではの鉄砲術で撃ってもそれは変わらない。現に今でも5発に1発程度しか当たってはいないので、一発命中する毎に再装填が必要になっている程効率が悪い。しかし、その弱点は今この時重要ではないのだ。
「ッブ!ッガ!ツォ!
ガァァァァァ!ってうぜぇぇぇぇ!もういい!ブッ殺す!」
陣の狙いは『短気な出っ歯』が思ったより『クレバーで慎重な戦い方をする』という流れを変える為にある。
激昂した出っ歯は策も何もなく突っ込んでくる。陣は一歩下がり腰を入れ、素早く魔弾を排出。頭を守る『振り』をして剣銃の柄を跳ね上げる顎を打ち抜く!
本来なら銃は精密機器、いくら頑丈とは言え銃床で殴れば歪みもするし照準だって狂う。だがこれは剣銃だ。照準が狂おうが歪んで集弾性能が悪くなろうが、それこそ「今更」な話。今回は弾丸排出を行ったが、火薬を使ってない以上、暴発するかすら怪しい所。
顎を打ち抜かれた出っ歯は、ドウと仰向けに倒れる。
陣は剣銃の切っ先を出っ歯に突きつけ、出っ歯がもう動き出さないか『残心』の構え。
「おぉっと!?なんと言う事でしょう!大番狂わせです!!出っ歯さんスターーーン!!!
ジンさんの防御の動きに自分から突っ込んでの自爆ですっ!
爆笑中のプリムラさんにお話を聞いてみたいと思います!プリムラさん!」
「ブハッハッハッハッハッハ!!
え、何ップフゥ、一言言えばいいのブッフォ?ちょっと待って、すーはー。
あの出っ歯もそこそこ実力あるんだけど、短気って悪い癖が出たねえ。
途中までは冷静に行ってたのにねぇ、勿体無い」
「プリムラさんありがとうございました!
さぁそんな間にカウントダウンは進みます!
5・4・3・2・1・0!
勝者!!剣銃士のジンさんです!」
ジンは出っ歯に突きつけていた剣銃を引き、一歩下がって礼、静かに鞘に刀を納める。
『System Message:WINNER・プレイヤー「ジン」』
目の前を流れるシステムメッセージを眺めながら、本当に面倒臭いのはこれからだと陣は人知れずため息を付くのだった。
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※
観客も去り、プリムラ武具店の前には陣、水穂、光彦、プリムラ、出っ歯の5人だけが残った。
ニヤニヤと笑う光彦とプリムラが、涙目の出っ歯へ詰め寄っている。掛け品になっていた素材を出させようとしているのだろう。
「さぁ、ともかくアンタは負けたんだ!四の五言わずお出しよ」
「でもよぉ…時間切れなんて納得行かねえじゃねえか」
「確かに派手な結果では無いが、負けは負けだ。
『四神会』としての面子を守りたいなら、素直に出しておけ。
これ以上渋れば誇りを傷付けるのはお前だぞ?」
出っ歯は光彦の言に渋々アイテムストレージから『ウーツ』を取り出す。
勝負は勝負、賭けは賭け、これも出っ歯の自業自得ではあるのだが…
水穂が心配そうに陣の長衣の裾を掴む。陣は「分かってるよ」と水穂の頭をひとしきり撫でてやり、3人に向かって告げる――
「いや、出さなくていいぞ出っ歯。
そもそも俺はお前から何か貰う約束なんざしてねえぞ?」
「「「え?」」」
「え?ってなんだ、え?って」
陣は一同の顔を見渡し、初めから説明する事にした。
司会者職は今後、PVPやイベント時にのみ出てくるゲスト扱いです。
こういうキャラは基本的に気に入っています。