出口
人生は一度きり。
これはおそらく、本当なんだろう。
今の私がいるのは、多くの奇跡の積み重ね。
私という意識はきっと、今回で終わり。
なんて、嬉しいんだろう。
終わりが決まっているなんて。
周りのざわめきが、次第に大きくなっていく。
うるさいなぁ。
「次喋ったら、殺すよ?」
一斉に、静まり返る。
偉いね。
「私、人生で一度くらい、人を殺してみたかったの。誰か、殺されてみたい人はいる?」
「…なんだ。つまらない」
警察が到着するまであとどれぐらいかな?
誰か連絡したかな?
そう思ってキョロキョロしていたら、男の人が私に向かって走ってきていた。
勇気のある行動だ。
なんか、面白い。
飛びかかるように向かってくる。
動きを見て、そこに刃物を合わせる。
腕に突き刺さった。
痛みで顔が歪んでいるのが見える。
勢いが少し弱まったので、腹を蹴った。
うずくまったので、刃物の柄で頭を何度か殴打した。
その人は倒れて、気絶しているようだった。
…なんだ。
思っていたよりずっと、上手く行った。
みんなで向かってきて押さえつけられる、それもまたいいと思っていたけど、それはもう、起きることはなさそうだ。
倒れた人の上に、座った。
他の人はもう、抵抗する気がない顔をしている。
恐怖で染まりきっている。
彼らに私は、イカれた人間だと思われてるんだろう。
こんなことをする人はみんなおかしい人だから。そりゃ、そうだ。
なぜだろう、驚くほど頭がクリアだ。
そうだ。
ちょうどいいし、この人を殺そう。
腰辺りに座り直して、背中を何度も刺した。
躊躇はなかった。
感触は…気持ち悪いというのが一番だった。
「あぁ、汚れちゃった」
血溜まりのせいで。
「ねぇ!誰か警察呼んだ?」
返事は帰ってこない。
わからないなら、自分で呼べばいいか。
血で濡れた手で、ポケットからスマホを取り出して、電話をかけた。
すぐに繋がる。
「110番警察です。事件ですか?事故ですか?」
「こんにちは。人を殺しました」
その後住所を言って、電話を切った。
こんないたずらみたいな内容でも来なきゃいけないと言うのは、なんだか面白い。
あと、何をしようか。
そうだ、歌でも歌おうか。
上手くもない、下手でもない歌を。
私は、終わりが来るまで歌っていた。
そして、自分を刺した。
見失う。




