#5 倉庫(安息の地)への帰還
――私は、全力で倉庫へ逃げ戻った。
入り口に並ぶ大量の花束達と人...
跪く生徒...
「聖女様」と涙ながらに叫ぶ声。
(怖い...こわっ...)
それらを振り切って、私は全速力で駆け出した、学園ものの定番!青春と言えばダッシュ...!
いざ備品倉庫のなかへ――五歩程で中に入り内側から固く閉ざした。私の心のように
「はぁ……はぁ……」
息が荒い。
心臓が、激しく跳ねている。こんなに走ったのはいつぶりだろうか…
(ああ……もう、外に出たくない)
心に、強く誓う。
(そうだ、出ない!)
昨夜、ここで一晩過ごして、寝落ちして朝になって這い出たのが間違いだったんだ。
外に出れば、あんな目に遭う。
ならば答えは簡単。もう、出なければいい。
「お願い...誰も……入ってこないで……」
扉に手を当て、心の底から願う。
その瞬間――。
扉の表面が、淡く光る。
はい?
咄嗟に手を引っ込めると、光は収まる。
でも、確かに何かが――扉に、張り付いている。
(……まさか、結界?)
恐る恐る、開けようとする動作をしてみる。
おぉびくともしない。
完全に、ロックされている。
無意識に、魔法を発動してしまったらしい。
(我ながら完璧な結界だ)
「……まあ、いいか」
むしろ好都合だな。
これで、誰も入ってこられない。
(ここを、安息の地と定めよう)
倉庫もとい安息の地の奥に戻り、昨夜使った布を再び敷いて寝床を作る。
食料は――昨日の朝、こっそり厨房から失敬してきたパン...まだ少し残っているし。
水は、倉庫の隅にある古い水瓶があるし。
ペッとボトルとか何日か飲めるし大丈夫でしょう!
それに、人と関わらなければ、聖女パワーも暴走しない。
感情が爆発しなければ、奇跡も起きない...はず...
だから――何もしなければいい。
何も、しなければ...
「……そうだ。何もしなければいいんだ」
自分に言い聞かせる。
外の世界のことなんて、考えない。
ただ、ここで静かに過ごす。
それだけでいい。
それだけで――平穏が、手に入るはずだった。
私は布にくるまり、目を閉じた。
外の喧騒なんて、もう関係ない。
ここで、静かに過ごす。
それだけでいい。
それだけで――。
リリアが何もしなければ…この世界は...




