雨宿りと罠
なろうラジオ大賞7応募作品となります。
「あれ?雨だ!?ついてないなあ」
高校の帰り道に突然の大雨に出くわす坂ノ下。
この日は運悪く折り畳み傘さえ持ってきていなかった。暫く右往左往してシャッターの閉まった店の軒下へと逃げ込む。辺りは雨雲で薄暗くなっている。
雨足が強くなる。
それから2~3分ほどして一人の女子生徒が坂ノ下の隣に駆け込んできた。
「ごめんなさい、私も雨宿りさせてもらってもいいかな?」
彼女はとても慌てている様子だ。
「ああ、うん。突然の夕立って困るよね?」
このセーラー服から見て彼女は県内トップクラスと言われる大聖女子学園の生徒であろう。
「この雨、止むまでにもうすこしかかりそうだね?」
彼女は小柄で透き通った声をしている。違う高校の女子と近い距離で並んで立ち、言葉を交わす坂ノ下はドギドキとしてしまう。
「私、牧田愛花。貴方の名前は?」
「俺は坂ノ下満夫」
「坂ノ下君、結構濡れているね?良かったらこのタオルを使って?」
タオルを持ち歩いているなんて用意のいい子だな
運動系の部活でもしてるのかな?
そんなことを感じながらも「ありがとう」と言い受け取る坂ノ下。
軒先で2人は雨が止むのを待つ。
雨宿りの間に20分ほどお互いの学校生活の話や趣味の話などをして過ごした。
そうしている間に雲の切れ間から太陽がのぞき始めた。
「なんか話が合うね?よかったら連絡先を教えてくれないかな?」
愛花から連絡先を聞かれて鼻の下を伸ばす坂ノ下。
「坂ノ下君!また連絡するね?」
軒下を出て後ろを振り返り、坂ノ下に手を振る愛花。
この日の数か月前、愛花は街で坂ノ下を見かけた。気になった愛花はその後、彼のことばかり考えていた。
彼に逢いたい衝動を抑えきれず100日ほど彼の行動を観察した。
通っている高校、通学路、よく立ち寄るお店、友人関係。
この日インターネットの天気予報で突然の夕立に注意とあった。下校のタイミングを計り坂ノ下に気づかれないように一定の距離を置く。
予想通り大雨が降り始め、さも自分も突然の大雨にあってしまったかのように振舞い、愛花は坂ノ下の隣に駆け込んだ。大雨の日を狙い偶然を装い軒下で出会う2人。
雨宿り?そんなものは建前に過ぎない。
愛花にとって全ては意中の人、坂ノ下に近づくための計画。何週間もかけて考えた愛花の計算済みのシナリオであった。
愛花の手に持つスマホには先ほど交換した坂ノ下満夫という名前が映っている。
「フフフッ」
とスマホの液晶画面を見ながら愛花は笑った。
雨宿りを通して出会った高校生の2人。始まりはよくありそうな青春の一コマですが、何も知らない坂ノ下君の笑顔やラストにかけて、明るくて可愛いと思っていた愛花の猟奇的な所が徐々に明るみになる所などで「ぞわっ」としてもらえたらと思います。
なろうラジオ大賞への投稿は3年目になりますが、こういった作風のものは初めてとなりました。
良ければ評価やリアクション、感想などいただければ幸いです。後書きまでお付き合い頂いて本当にありがとうございました。




