リベリオン帝国の西部地方
リベリオン帝国の西部地方の大部分は荒れ地になっている。人が住んでいないわけではないが、戦が頻繁に行われるせいで、まともに土地活用ができないでいた。
住居も食料も搾取された人々が反乱を起こすのだ。
黒い軍服を着たリベリオン帝国北西軍が鎮圧しようとするが、苦戦していた。
規模が大きすぎるのに加えて、反乱軍にワールド・スピリットの使い手がいる。
晴れ間から突然に雷が降ってくるのだ。避けれるものではない。早々に雷の使い手を仕留めたいが、誰を倒せばいいのか分からない。
リベリオン帝国北西軍は次々と倒される。徐々に絶望が広がっていた。
そんな彼らの前に、唐突に四つの人影が現れた。虚空から突然に出現したのだ。空間転移で来たのだ。
黒い神官服の男性が切れ長の瞳をぎらつかせる。
「コズミック・ディール、ヘル・コラプサー」
上空に黒い球体が出現する。光さえ逃さない漆黒の地獄だ。晴れ間からいくつもの雷が出現するが、地面に届かず、放射線を描き、轟音を立てて漆黒の地獄に吸収される。
リベリオン帝国中央部担当者ダーク・スカイの得意技であった。
北西軍は大歓声を上げた。
「ローズ・マリオネットだ!」
「守り神がいらしたぞ!」
形勢の逆転を確信していた。
しかし、ダークの表情は浮かない。
「思った以上に大軍だぜ」
「グレゴリーさんとその取り巻きたちが、随分と住民をイジメましたからね。その反動でしょう」
ダークの隣に立つ白い貴公子姿の少年がほくそ笑む。リベリオン帝国北西部担当者グレイ・ウィンドだ。
「反動が強い分、戦いは面白くなります」
「笑えない。けど、グレイに一生ついていく。グレイに手出しはさせない」
青いドレスを身に着けた少女が、青と黒のオッドアイに決意を宿す。グレイと同じくリベリオン帝国北西部担当者ナイト・ブルーだ。グレイの左腕を抱きしめる手を強める。
「雷の使い手を探す。ソウル・ドミネーション、リーディング」
「それが良いですね。フリーダム・トワイン、コンフュージョン」
二人でワールド・スピリットを繰り出す。
ナイトが相手の精神を操るもの、グレイが無数の糸を操るものだ。
ナイトは触れたもの全ての精神を操る事ができる。グレイの糸を介しても有効だ。グレイが右手に持つ白いステッキから、細く白い糸が一斉に広がる。糸は反乱軍を絡めとり、身体の自由を奪う。
身体の自由を奪われた人間は、グレイの意のままに動かされる。
反乱軍同士で斬り合いや殴り合いが始まった。彼らは困惑し、悲鳴をあげていた。
「なんだ!? 身体が言う事をきかない!」
「なんで味方なのに攻撃してくるんだ!?」
グレイは、反乱軍の混乱を愉快そうに見ていた。
「僕たちに逆らおうとした事は、万死に値しますからね。せいぜい苦しんでもらいましょう」
「雷の使い手を探すのが先のはず」
「そうですね、さすがはナイトさんです!」
「グレイに褒められて悪い気はしない」
グレイとナイトのやり取りを聞いて、ダークは呆れ顔を浮かべていた。
「てめぇらに人の心はあるのか? 反乱軍が少し気の毒になるぜ」
「ローズ・マリオネットに人の心を求めるのはどうかと思いますよ。僕たちの責務は、敵に恐れられ、従わせる事でしょう?」
「そりゃそうだが、敵を倒すだけじゃなく、リベリオン帝国の安定を考えてもいいと思うぜ。老害が逃げようとしているしな」
ダークの視線の先に、こっそり離れようとしているグレゴリーがいる。
グレイは微笑んだ。
「そうですね、捕まえておきます」
「あいつも働くべき」
ナイトが抑揚のない声で肯定を示した。
ふと、ダークの襟元のブローチが小刻みに震える。黒い薔薇のブローチだ。
ダークが触れると、メリッサのか細い声がした。
「あの……ダーク? 聞こえていますか?」
「聞こえているぜ。敵がいるのか?」
「はい。地面から透明な青い刃がいくつも生えてきて、軍人さんが何人も倒れています。その……助けていただけますか?」
メリッサは今にも泣きそうな声をしていた。
ダークは舌打ちをした。
「ワールド・スピリットの使い手で間違いねぇな。すぐに行くぜ。グレナイは、俺がいなくても大丈夫だよな?」
「こちらはどうとでもなりますよ。どうぞごゆっくり」
グレイは怪しく笑っていた。
ダークの脳裏に、グレイとナイトが制御不能になる恐れがよぎったが、メリッサたちを救う事を優先するべきだろう。
漆黒の地獄を爆発させて、思わぬ被害が生じないようにしておく。
「互いにうまくやろうぜ。コズミック・ディール、テレポート」
ダークは空間転移で姿を消した。
あとには爆発の余波と数多くの人々の悲鳴、そして微笑むグレイと無表情のナイトが残っていた。




