愛ゆえに
ダークの声は一段と低くなる。
「俺とメリッサは仕事仲間だ。てめぇらが思うよな関係じゃねぇ」
仕事仲間。
そう言われて、メリッサの胸の内がチクリと痛む。ダークともっと近づきたいという本心を偽れるものではない。しかし、深い関係を求めてはいけないと思い直す。
メリッサは自らの心を封印して頷く。
「……そうですね。私はダークのお手伝いさんにすぎません」
「ひどく残念そうですわね。告白するなら早い方が良いですわ」
シルバーはダークに歩み寄る。
「あなたもあなたですわ。このままでは婚期を逃しますわ」
「俺が結婚できるわけがねぇだろ」
「あら? どうしてそう言い切るのかしら?」
シルバーはダークの周りでステップを踏み出す。
「高身長でスペックも顔も悪くありませんわ。あなたがハーレムを作ったと言ったら、誰も疑いませんでしたわ」
「余計な事はやめろ。ぶっ殺されてぇのか?」
ダークが睨むと、シルバーは足を止めて訝しげにダークの顔を覗き込む。
「本気で怒っているようですわね。メリッサ一筋だからかしら?」
「……死にてぇようだな」
ダークの雰囲気が変わる。鋭い眼光を放ち、凍てつく殺気をまとっている。
シルバーは息をのんだ。
クリスが慌てて仲裁に入る。
「ダーク様、図星をつかれてお辛いのは分かりますが、どうかお怒りを収めてください」
「変な噂話にメリッサを巻き込むな。死体が増えるぜ」
「愛しているから心配になるのですね……いえ、僕は何も申し上げておりません」
クリスは自分の口を両手で押さえる。
グランディールはなぜか涙を流してリュートをかき鳴らす。
「愛ゆえに秘める想いもあるってもんだな」
「てめぇも地獄を見るか?」
ダークに睨まれて、グランディールは深々と頷いた。
「男には引いちゃならねぇ時がある。好きな人を悲しませるな。あと、地獄に送るなら餞別を寄越せ」
「首絞めとナイフのセットでいいな?」
「そんなセットを欲しがる奴がどこにいるんだ!? 金だ、金を寄越せよ!」
グランディールがリュートをより一層かき鳴らして、騒ぎ立てる。
メリッサはミネルバを見つめて溜め息を吐いた。
「安心してください。ダークは優しい人なので」
「どこに安心する要素があるのか分からないが、体力を回復させる時間が稼げた。感謝する」
ミネルバは起き上がり、ダークとシルバーを交互に睨む。
「敵わないのは分かっているが、一矢を報いたい」
「俺たちと戦うなら応じるぜ」
ダークは口の端を上げる。
シルバーはほくそ笑む。
「無駄に命を落としたいのなら、止めませんわ」
「待ってください、戦う以外に方法があるはずです!」
メリッサが立ち上がり、双方の間に入る。
「まずは話し合いましょう。クレシェンド王国もリベリオン帝国も守る事につながるはずです」
「そんなうまい話はないと思うが、てめぇの話なら聞くぜ」
ダークに促されて、メリッサは頷いた。
「長い話になると思いますが、よろしくお願いします」




