爆弾発言
ふと、ダークの襟元のブローチが小刻みに震える。黒い薔薇のブローチだ。誰かが連絡を取りたがっているのだ。
ダークがブローチに触れると、快活な少女の声が辺りに響く。
「ねぇ、ダーク。メリッサとはどう?」
「シルバーか。メリッサなら真面目に頑張っているぜ」
「そうではなくて、メリッサと恋人として進展はあったのか聞いておりますの!」
急に爆弾発言が飛び出して、ダークは吹き出した。
「恋人って何言ってんだ!?」
「みんな言っておりますわ。魔王の恋人が魔王の奥様になるのはいつでしょうと」
ダークは口元を引くつかせた。
「メリッサは俺の恋人じゃねぇよ。そういえばエリックたちにデマを流したのはてめぇらだよな? 東部地方の遣いから俺の噂を聞いていると、口をそろえていたぜ」
「一部は真実でしょう?」
シルバーがしれっと言った。
ダークのこめかみが怒張する。
「まったくのデタラメだったぜ。いつから俺は男女問わずハーレムにする変態になったんだ?」
「金髪アフロのかっこつけでサングラスを付けた性悪の金の亡者も追加しておいてくださらない?」
「サンライト王国の修道女たちが聞いた噂も、てめぇの差し金か」
ダークの声が一段と低くなる。
シルバーの高笑いが聞こえだす。
「センスのある噂でしたわね!」
「てめぇ、マジで殺されてぇのか?」
「乱暴な言葉はやめてくださる? 私だって何の考えもなく噂を流させたわけではありませんのよ」
シルバーの声音が急に真面目になる。
「メリッサは戦闘ができず、命を狙われても自分で自分の身を守れませんわ。敵から集中的に狙われれば、ひとたまりもありませんの。あなたとは違いますのよ」
「もっともらしい事を言うが、結局はてめぇが楽しいだけだろ。ハーレムなんて、敵に狙われる対象が増えるだけだぜ」
「決して私が楽しいだけではありませんわ」
「やっぱり楽しんでいただろ!」
ダークが声を荒げると、シルバーは笑った。
「あなたにしては感情的ですわね。お詫びとして、とっておきのおもてなしをしますわ」
「てめぇとてめぇの部下たちをとっちめるぜ。明日の朝に行くからな」
「お昼頃にしてくださらない? 私が起き上がれませんわ」
「知るか! てめぇの担当地方は昼は暑すぎる。早めに行かせてもらうぜ。覚悟しろよ、じゃあな」
ダークはブローチから手を離して、溜め息を吐く。
「……メリッサ、てめぇに迷惑を掛けたな。変な噂に巻き込まれて」
「私は大丈夫です。ダークの噂については、一言あってもいいと思いますが」
「場合によっては、ぶん殴るぜ。とりあえず今日は寝ておくか」
ダークが苛立ちを隠せない表情で歩きだす。
メリッサは微笑んでついていく。
蛍は静かに瞬いていた。




