表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/78

幕間~ローズベルの思惑~

 サンライト王国の跡地が夕暮れに染まる頃。

 闇の眷属の集落は相変わらず暗かった。極寒の地に慣れないと暮らせない。

 そんな場所でも植物や動物が育つ。

 薔薇園で咲き誇る花々もそうだ。リリーを中心にした管理体制を敷いて、何かしら花が咲いている状態を保っている。

 ローズベルにとって、お気に入りの場所だ。

 ローズベルは時折花々に触れては、うっとりしていた。


「いつも綺麗ね。さすがリリー」


「お、お褒めに預かり光栄です」


 リリーは全身をこわばらせながら答えていた。ローズベルはリベリオン帝国において、皇帝に次ぐ権限を持つ。闇の眷属で逆らう人間はいない。

 ローズベルは口元に片手を当てて、上品に笑う。

「そんなに緊張しなくていいのに」

「お、お気遣いくださり感謝いたします」

 リリーは固くなっていた。ちゃんと話せているのか、当人は不安になるほどに。


「わわ、私の言葉が聞き苦しかったらすみません」

「謝らなくていいわ。そうそう、ここにダークとメリッサが来たと思うけど、どうだったかしら?」

「ダ、ダーク様とメリッサ様……!」


 リリーの顔は耳まで赤くなる。左頬の火傷の跡が、目立たなくなる。顔を両手で覆って、しゃがみこむ。

「す、すみません。ダーク様は相変わらずカッコよくて、メリッサ様はお優しいです。どちらも素晴らしい御方です」

「あら、二人ともそんなに素晴らしかったの?」

 ローズベルが微笑み掛けると、リリーは両目を潤ませた。

「ダーク様は、私の過去の大失敗を許してくれました。メリッサ様は、私を優しく励ましてくれました」

「そう、二人とも良くしてくれたのね」

「はい! 本当にありがたくて、生きるのは素晴らしいと感じました……!」

 リリーは顔を上げた。ダークとメリッサを、もっと褒め称えるつもりでいた。

 しかし、ローズベルの微笑みが妙に怖い。口の端は上げているのに、目が笑っていない。怒っているのか、蔑んでいるのか分からない。


「ダークとメリッサは釣り合うと感じたかしら?」


「えっと……」


 リリーは口ごもる。

 ローズベルの瞳に鋭い眼光が宿っている。望む回答をしなければ殺されると感じる。しかし、彼女がどんな回答を望んでいるのか分からない。

 リリーが考え込んでいると、ローズベルは冷徹に言い放つ。

「早く答えなさい。私が忙しいのは知っているでしょう?」

「は、はい……すみません」

「謝る暇があるのなら、早くしなさい。メリッサはダークにふさわしいの?」

 回答を急かされて、リリーは立ち上がり、深々と頷いた。

 ローズベルに何を言えばいいのか分からないが、腹をくくる。


「メリッサ様は、ダーク様にふさわしいと思います」


「どうして? ダークの補佐は特別有能な人物が良いと思うのだけど」


 リリーは悟った。

 ローズベルは、メリッサが何もできないという報告を受けたいのだ。ダークの補佐として不適格だと言わせたいのだ。

 ローズベルにとって、メリッサはダークの足を引っ張っているように見えているのかもしれない。

 おそらくローズベルの意に沿って報告を出せば、リリーに危害が及ぶ事はないだろう。

 しかし、リリーは自分の心に嘘をつきたくなかった。


「メリッサ様はダーク様とは違った能力があると思います」

「そうかしら? グレゴリーに襲われた時に自分で自分の身を守れなかったし、ダークに頼り切りだと思うわ」


 ローズベルの視線が重い。圧力を感じる。


 しかし、リリーは真剣な眼差しを返す。


「たしかにメリッサ様に戦う力はないと思います。しかし、ダーク様の事をよく理解して、補佐する事はできると思います」

「ダークの事を理解ね……」


 ローズベルは悩まし気に小首を傾げた。

「あの人と私は、考え方が違う時があるわね」

「私の答えは以上です。もしも、その……変な事を申し上げていたらすみません」

 リリーは俯く。

 ローズベルは溜め息を吐いた。

「あなたの答えだけで判断できないけど、メリッサの事はもう少し考えておくわ」

「は、はい」

 ローズベルが何を考えるのか、リリーは分からなかったが、深く突っ込まない事にした。

 ローズベルは穏やかに微笑み、歩き出す。

「今日はこのへんにするわ。それじゃあまたね」

「は、はい!」

 リリーは何度も礼をして、ローズベルを見送った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ