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剝き出しの王城

 ダーク・スカイは瓦礫の山を眺めていた。かつてはサンライト王国の城下町であった。軍事国家として栄えていたが、今は見る影もない。

「ざまぁねぇな」

 ダークはほくそ笑んだ。


 サンライト王国は長きにわたり闇の眷属を虐げていた。サンライト王国の王家を全滅させて、軍隊を壊滅させた事は誇りに思っている。


 一方で、聖女たちを皆殺しにした事に何も思わないわけではない。


 彼女たちは祖国を守るために、ダークたちの侵攻を妨げるワールド・スピリットを放っていた。彼女たちを倒すのはサンライト王国軍を倒すために仕方なかったのだが、彼女たちは全く罪がないのに殺された事実は否めない。

 恨みはなかった。


「話し合いの余地もなかったけどな」


 自分を納得させるために呟いた。ダメもとで聖女たちに降参を促したが、聞き入れられなかった。

 だから、殺すしかなかった。

「それもこれも、サンライト王国の奴らが闇の眷属を虐げたせいだぜ」

 誰にも聞こえない小声で文句を言った。

 中身が剝き出しになった王城に視線を移す。王城は、ダークのワールド・スピリットで半壊していた。

 胸に片手を置いて祈る。戦場で散った仲間たちと、聖女たちの事を想っていた。

 そんな時に複数人の足音が聞こえだす。


 林の方から、数人の女性が歩いてきた。みんな緑色のローブを着ている。サンライト王国の修道女たちだろう。

「打倒、魔王! 打倒、ダーク・スカイ!」

 そう連呼している。

 ダークは口の端を上げた。


「てめぇらで俺を倒そうというのか?」


「あ、いえ。私たちはダーク・スカイを探しています」


 修道女の一人が丁寧な物腰で答えた。

 ダークは首を傾げた。

「ダーク・スカイは俺だぜ」

「ええ!? 嘘でしょう!?」

 修道女たちは両目を丸くした。


「リベリオン帝国の中央部担当者ダーク・スカイといえば、金髪アフロの性悪オヤジでしょう!?」


「世の中は金だといつも言っていて、財力に任せて男女問わずハーレムにしている変態で、顔からはみ出た派手なサングラスを付けているといいますね」


 修道女たちの話を聞きながら、ダークは口の端を引くつかせた。

「誰から聞いたかあえて尋ねないが、全然違うと言わせてもらうぜ」

「ええええ!? メリッサ、本当ですか!?」

 集団の後ろで、メリッサが苦笑していた。

「はい、目の前のダークが本物です」

「嘘、こんなイケメン初めてです!」

 修道女たちの両頬がほんのりと赤らむ。

 メリッサに朗らかな笑顔が浮かぶ。

「ダークは優しくてカッコよくて強いです。そのうえ仲間想いで頑張り屋さんですよ」

「そっちの話の方が嘘くせぇな」

 ダークは乾いた笑いを浮かべた。

「で? 魔王である俺を倒すのか?」

「メリッサをイジメているのなら、懲らしめようと思いましたが……」

 修道女たちは丸くなってヒソヒソ話を始める。


「あんなイケメンが聖女たちを殺したなんて……信じられますか?」

「人は見た目に寄らないと言いますけど、意外と猛獣なんですかね?」

「メリッサも襲われなければいいのですが……」


 修道女たちの会話は、メリッサにもダークにも聞こえている。

 メリッサはダークに向けてパタパタと両手を振る。

「悪気はありません」

「そりゃそうだろうけどよ、反応に困る会話はやめてもらっていいか?」

 ダークは呆れ顔になっていた。

 修道女たちは一斉にダークを見る。

「これからもメリッサを大事にすると、神に誓えますか?」

「これからもって……」


 ダークが困惑していると、修道女たちは深々と頷いた。


「分かりました。あなたの態度が全てを物語っています。今後もメリッサをよろしくお願いします」

「よく分からねぇが、とりあえずメリッサを連れて帰っていいんだな」

 ダークは頭をポリポリとかいた。

 メリッサも頷いた。

「魔王を倒す話は流れたようですね」

「メリッサ、もしも辛くなったらいつでも逃げてきてください。私たちはいつでも待っています」

 修道女たちの視線は真剣だ。メリッサにとって、頼もしい。

 メリッサは深々と礼をした。

「ありがとうございます。またいつかお話したいです」

「そうですね、またいつか。あなたの幸せを願います」

 修道女たちは両手を合わせた。

 メリッサも両手を合わせて微笑む。

「お互いの未来が明るくなりますように」

 夕暮れが辺りを照らす。赤く鮮やかな太陽が、まぶしかった。

 ダークはメリッサに声を掛ける。

「そろそろ帰ろうぜ。腹が減った」

「……ダーク、すみませんがエリックの所に寄ってくださいませんか? 城下町の復興に人手を割けないか聞いてみたいのです」

 メリッサがダークを真剣な眼差しで見つめる。

 ダークは首を横に振る。

「あいつはサンライト王国を憎んでいるんだ。城下町の為に動く事はねぇよ」

「城下町の事なら、私たちが頑張ってみます」

 修道女の一人が穏やかに言っていた。

 メリッサは両目を見開いた。

「本当に良いのですか?」

「他に選択肢は無いように思いますので。男手を借りれたら借りて、頑張ってみます」

 メリッサは深々と礼をした。


「本当にありがとうございます。皆様の事は忘れません。それでは」

「そろそろ帰るか。コズミック・ディール、テレポート」


 ダークとメリッサは空間転移で姿を消した。

 修道女たちは互いの顔を見て、頷いた。

「これで良かったのでしょう」

「ダークはメリッサを当然のように大事にしているのでしょうね」

「ちょっとしたすれ違いはありそうですが、二人とも頑張ってほしいですね。さぁ、私たちは瓦礫の撤去から! ですね」

 サンライト王国の跡地に、穏やかな風が吹いていた。

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