蛍を教えてくれた友人
風呂場ではメリッサとリトスがお湯に浸かってくつろいでいた。
メリッサは四肢がほぐれるのを感じていた。
「気持ち良いです」
「今までずっとダークと一緒にいれたから?」
リトスがニヤつくと、メリッサは耳まで真っ赤になった。
「そ、そそそんな事は……!」
「隠さなくていいよ。あたしとあんたの仲だよ。ダークの事が好きなんだよね?」
リトスがニコニコ顔で質問すると、メリッサは俯いた。
「好きか嫌いかと聞かれれば、好きです」
「じゃあ決まりだね、おめでとう!」
「祝福されるような事はありませんよ!」
リトスは拍手をしているが、メリッサは両手をパタパタと振った。
リトスは両の手のひらを上に向けて、やれやれと言った。
「ダークは天然女たらしのくせに、へたれだね」
「そんなに悪く言う事はないと思います。ダークには私が迷惑を掛けてばかりです」
「そうかな? 黒い神官服を洗ったし、ダークは助かっていると思うよ」
「中途半端になってしまいました。今でも申し訳ないです」
メリッサは溜め息を吐いた。
「神官様のお手伝いさんとして、まだまだですね」
「ダークのお手伝いさんなんて、あたしなら死んでもやりたくないよ。見るからに大変そう」
「大変なのは否定しませんが、楽しいですよ。今後はもっと頑張りたいです」
「頑張りすぎないでよ。ダークだって言っているよね」
リトスはあくびをした。
「でもメリッサが少しは無理しないと、ダークと結ばれないかもね」
「そ、そんな……ダークと私が結ばれるなんて、ありえません。釣り合いません。ダークが可哀想です」
「そこまで言う!?」
リトスはメリッサの両肩を掴んだ。お湯がいくらか波打つが気にした様子はない。
「しっかりしてよ、みんな応援しているんだから!」
「応援ですか!?」
「そうだよ、だって二人には幸せになってほしいから!」
リトスの表情は真剣そのものだった。嘘を言っていないのだろう。
メリッサは戸惑い、口をパクパクさせた。
「私の幸せですか……」
「そうだよ、自分を卑下するのが正しいわけじゃないからね」
「私たちの事を本気で気にかけてくださるのですね。ありがとうございます」
メリッサは微笑んだ。
リトスはうめいた。
「あたしが言いすぎるのは良くないと思うけど……もどかしいよ。もっと決めてがほしい……」
真剣な顔つきでブツブツ呟いていたリトスが、急に明るい表情になる。
「蛍を見たいと言ってみてよ! 絶対に盛り上がるから!」
「蛍ですか?」
メリッサは首を傾げた。
以前に友人から聞いた事はある。しかし、サンライト王国にはいない。
リトスは何度も頷いた。
「そうだよ、めちゃくちゃ綺麗な光を放つんだ。あたしから聞いたと言っていいから、ダークにリクエストしてよ!」
「そうなのですか……」
メリッサは考え込んだ。
蛍を教えてくれた友人の事を思い出していた。
バイオレットという紫色の髪を生やす少女だった。
闇の眷属であったが、サンライト王国の軍舎で奴隷にされていた。明るくて元気な少女だった。こっそり会いにいくだけで、メリッサも元気になったものだ。
元気をもらったお礼に、司祭から教わった祈りの歌を教えたら、喜ばれた。安らぎを与えてくれる歌で、一緒に歌ったら楽しかった。
ある日突然に死んだと聞いた時には、ショックを隠せなかった。
メリッサの表情が曇る。
リトスは両目をパチクリさせた。
「大丈夫? ダークにリクエストするのが不安なら、あたしから言おうか?」
「……いえ、大丈夫です」
生前にバイオレットは言っていた。
蛍は本当に綺麗だからチャンスがあれば絶対に見てね、と。
メリッサは笑顔を取り戻す。
「機会をみて、ダークに言ってみます。蛍の事を教えてくださりありがとうございました」
「いいよ、これから何かあったらどんどん頼ってね!」
リトスがウィンクをする。
メリッサは深々と礼をするのだった。




