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すごい才能

 メリッサとダークはゆっくりと教会に向かう。二人とも急ぐつもりはない。

 メリッサの両頬はほんのりと赤くなっていた。二人で一緒にいる時間は愛おしい。安心感もある。

 しかし、このままの自分とダークは釣り合わないと感じていた。ダークは優秀で何でもできる。人柄も良い。

 翻ってメリッサは、誰でもできる事を一生懸命にやるだけだと、メリッサ自身は感じている。ダークやリトスには褒められたが、甘えてはいけないと思っている。


 無理をしない範囲で頑張りたいと思っている。


 そんなメリッサの決意など知らないはずだが、急にダークが笑った。

「てめぇと会ってから、リリーは元気になったな」

「そうなのですか?」

 メリッサが首を傾げると、ダークは口の端を上げた。

「いつも申し訳なさそうな表情をしていたぜ。ずっと一人で抱え込んでいたみてぇだな。てめぇと話せて本当に良かったぜ」

「リリーさんが元気になれたなら、良かったです」

 メリッサに実感は湧かないが、ダークは確信したように頷いた。


「てめぇの才能はすごいぜ。人を幸せにする」


「そ、そうですか? 私なんて何もしておりませんのに……」


 メリッサは耳まで真っ赤になった。

 ダークは苦笑した。

「俺はてめぇが照れるような事を言ったか?」

「えと……はい、ちょっと照れます」

「本当の事を言っただけなのに、こっちが恥ずかしくなるぜ。まあ、正直なのは悪い事じゃねぇけどよ」

 ダークは空を見上げた。雲の隙間から星の瞬きが見える。


「てめぇとマザーが出会ったら、どんな話をするか知りたいぜ。マザーはもう天国にいるけどな」


「……マザー様は、ダークの育ての親ですよね。亡くなられていたのですね」


 メリッサの両目が潤む。

「血のつながりがあっても無くても、家族を失うのは辛いですよね」

「辛い……そうだな。文句を言えねぇのが辛いぜ。神官と軍部の両立なんて、簡単に言いやがって」

 ダークは溜め息を吐いた。

 メリッサは恐る恐る尋ねる。

「軍部をやめる事はできませんか?」

「やめたくねぇよ。だから苦労するんだ。ムカつく連中を仕留めるのは何よりも楽しいぜ。神官をやめてぇくらいだ」

「神官はあなたの天職だと思うのですが……嫌なのですか?」

 素直な疑問を口にして、メリッサはしまったと思った。

 ダークの表情が一変していた。両目を吊り上げて怒りを露わにしているのに、瞳が揺れている。どこか悔しそうに歯噛みしていた。

 両手をワナワナと震わせて、うめいている。

 メリッサの額に汗が滲む。

「……無理に答えなくても良いのですよ」

「いや……無理というわけじゃねぇよ。何から話すか考えたら、いろいろ思い出しちまったんだ」

 ダークは落ち着いた表情に戻った。

「神官をやるのは嫌じゃねぇよ。ただ、殺戮を繰り返すのが神官のあるべき姿じゃねぇよな」

「そうですね。殺戮は良くないですね」

「やめねぇけどな」

 ダークは口の端を上げる。

 メリッサは複雑な気持ちになった。

「あなたの生き方に口を挟むべきではないのですが、命の重さは平等だと思います」

「修道女の模範的回答だな」

「普通の考え方だと思います」

「否定はしねぇ。だが、俺が受け入れる気はないぜ」

 ダークの切れ長の瞳に、鋭い光が宿る。

「殺したいクソは存在するんだ。てめぇに理解は求めねぇけどよ」

「殺したいほど憎い人間がいるのですね」

 メリッサは真っ直ぐにダークを見つめる。

「あなたを大切にしたい人の気持ちを振り払うくらいに」

「マザーも似たような事を言っていたな。憎しみは誰かを大事にしていた感情の裏返しとか」

 ダークは一呼吸置く。

「大切な人を思うなら、憎しみに支配されないようにとも言っていたな」

「マザー様はあなたの事を愛していたのですね」

 メリッサが微笑み掛けると、ダークは気まずそうに視線をそらした。


「親不孝ばかりしているけどよ」


「これから孝行すれば良いでしょう。あなた自身の幸せを考えても良いのでは?」


 メリッサが素直な気持ちを吐露する。

 ダークは足を止めて呆けていた。

 メリッサも足を止めて語りかける。

「あなたは本当に他の人のために頑張っています。闇の眷属は感謝しているでしょう。ですが、あなた自身も大切な人の子です。ご自身を傷つけないようにしてくださいね」

「……てめぇは本当にお人好しだな。俺はサンライト王国の聖女たちを殺したのに」

 ダークは吐き捨てるように言っていた。

 メリッサはなおもダークを見つめる。

「それは許されません。私も辛かったです。あなたが殺戮を行うのも辛いです。これ以上は罪を重ねないようにしてほしいです」

「そうもいかねぇな」

「そうですか……ただやはり殺戮が正しいとは思えません。他の選択肢が生まれる事を祈ります」

「神のみぞ知る、だな」

 ダークは歩き出す。

 メリッサも隣を歩く。

 ほどなくして教会にたどり着いた。ダークが左手を胸に当てて祈っていたが、何を祈っていたのかメリッサには分からなかった。

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