表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/77

薔薇の意味

 リリーは歩きながらハキハキと語りだす。

「ここの薔薇は私たちが敬愛すべきルドルフ皇帝とローズベル様、そしてローズ・マリオネットを象徴しています」

「ローズ・マリオネットはローズベル様直属の方々でしたよね」

 メリッサが確認すると、リリーは両目を輝かせた。

「そうです! 本当にすごい人たちです! ローズ・マリオネットのおかげで大勢の闇の眷属が救われました!」

「買いかぶりすぎだぜ。俺なんて大して働いてねぇよ」

 ダークが口を挟むと、リリーはぶんぶんと首を横に振った。

「ローズ・マリオネットの中でも中央部担当者の働きは神です! 魔王と呼ばれていますが神です!」

「神に怒られるぜ」

 ダークは呆れ顔になっていた。

 リリーは黒い薔薇を見てうっとりしていた。


「ダーク様の為に怒られるなら何でもいいです」


「訳の分からない事を言ってないで、薔薇の紹介をしてくれねぇか?」


「は、はい、そうでしたね。薔薇園の中央部は赤と黒でそろえられています。それぞれ品種が異なります。鮮やかな赤色のクイーン・ローズ、深い黒色のイービル・キング、そして暗赤色のエンペラーとなります。それぞれローズベル様、ダーク様、ルドルフ皇帝を象徴するものです」


 リリーが早口で語ると、ダークは苦笑した。

「どれもいつか枯れるけどな」

「花は枯れますが、また咲きます。気を落とさないでください」

「気を落としちゃいねぇよ。他の品種もあるよな?」

 ダークが薔薇の解説を促すと、リリーは元気よく両手を上げた。


「そうです! 紫色のデビル・パープル、黄色のポイズン・プリンセス、青色と白色を混合したデス・ゴッド、どれも美しく咲き誇っています!」


「どれも不吉な名前がついているよな。ローズ・マリオネットを象徴しているから仕方ねぇが」


 ダークは口の端を上げた。

「説明してもらえて助かったぜ。メリッサも理解できたか?」

「はい……どれも綺麗ですね。花もお世話する人も頑張ったのですね」

 メリッサが呆けていると、リリーの顔面が真っ赤になった。

「わ、私の事まで褒めてくださるのですか?」

「本当にすごいです」

「そ、そんな……ダーク様の側近に褒められるなんて、もう死んでもいいです!」

 リリーは突然にメリッサに詰め寄った。

「夢じゃないですよね、私の頬をつねってもらえますか!?」

「大丈夫ですよ、現実ですよ」

「ああ! なんと優しく現実を諭してくださるのでしょう!」

 リリーは片手を胸に当てて、天を仰ぐ。

 メリッサはリリーのペースについていけず、乾いた笑いを浮かべるしかなかった。

 ダークも苦笑していた。


「ついでだ。ローズ・マリオネットの面子を教えておくか。俺を含めて五人いるぜ。南部地方のエリック・バイオレット、東部地方のシルバー・レイン、北西部地方のグレイ・ウィンドとナイト・ブルー、中央部の俺だ。それぞれの地域の守護を担当しているぜ」


「五人でリベリオン帝国を守っているのですか!?」


 メリッサは驚嘆した。

 メリッサの祖国であるサンライト王国は南部地方に位置するが、広大である。一日掛けても回りきれるものではない。他の地方も同様だろう。

 ダークは続ける。


「みんな移動に便利なワールド・スピリットを使えるからな。軍隊の手に負えない敵が出たら、すぐに駆けつけるようにしているぜ」


「いつ呼ばれるのか分からないのですね……私なら耐えられません」


 軍隊の手に負えないとなると、かなり強い敵だろう。ダークを含めるローズ・マリオネットたちは、そんな強敵と戦わされるのだ。

 その労力は、メリッサには想像もできない。

 ダークは黒い薔薇にそっと触れて、笑っていた。

「敵を恐れさせ、従わせるのが俺たちローズ・マリオネットの責務だからな。やりがいはあるし、日頃好き勝手できるから俺に不満はないぜ」

「無理はしないでください、たまにはゆっくりしてください」

 メリッサが真剣な眼差しで訴えると、ダークは急に真顔になった。

「同じ言葉をそっくりそのまま返すぜ」

「あの、あの、お二人とも喧嘩はやめてください。せっかくの仲良しが台無しになるなんて嫌です」

 リリーがあたふたしていた。

 メリッサは微笑む。

「大丈夫ですよ、ダークの心は広いので」

「俺の心は広くねぇよ。ん?」

 ダークは薔薇から手を放し、襟元に触れる。そこには小刻みに振動する黒い薔薇のブローチがあった。

 ダークがブローチに触れた途端に、少女のキンキン声が響き渡る。


「ねぇダーク・スカイ、お時間はよろしくて?」


「シルバーか。どうした?」


 シルバーとは、リベリオン帝国東部地方担当者だろう。ブローチを通じて会話をしているようだ。

 メリッサは驚愕した。地方担当者はダークと同世代だと思っていた。しかし、声の主は明らかに若い。

 シルバーは話を続ける。

「お屋敷まで襲撃されそうですの。エリックも交戦中ですぐには来れません。力を貸してくださらない?」

「いいぜ。報酬は高くつくぜ」

 ダークは残忍な笑みを浮かべた。

 シルバーの高笑いが聞こえる。

「よろしくてよ! 魔王にふさわしい贄を用意しておきますわ」

「とびきり美味いもんを食わせろよ」

 魔王の贄とは、高級な食糧を指すようだ。

 メリッサは複雑な表情になる。


「また戦うのですか?」


「当たり前だ、そのためのローズ・マリオネットだからな。落ち着いたらてめぇも地方に連れていくから、そのつもりでいろ。リリーはメリッサと一緒にいてくれ。コズミック・ディール、テレポート」


 ダークは一瞬にして姿を消した。空間転移が行われたようだ。

 メリッサは溜め息を吐いた。

「また殺戮をしてしまうのですね……」

「ああ、ダーク様から直々にご命令が、ああ死んでしまいそうです」

 リリーはメリッサと違う感情で溜め息を吐いていた。

 メリッサは曖昧に笑うしかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ