表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

夫がある女性をビンタした理由

作者: Ash

夫が捕まりました。ある女性をビンタした、という理由で。

これは夫の裁判記録です。




裁判長「これから、ペクター夫人傷害事件の審議を始める」

検事「◯月◇日13時頃、被害者ペクター夫人はタデズ公園にて、被告人アンドリュー・アーマガに顔を平手打ちにされました。これは不特定多数の目撃者がいました。被告人アンドリュー・アーマガ、容疑を認めますね」

アンドリュー「引っ叩いたことは認めます。但し、罪状は傷害罪ではなく、過剰防衛です」

検事「裁判長! 淑女の顔を平手打ちにしておいて、傷害ではないとは、紳士の風上にも置けない所業です!」

アンドリュー「裁判長殿! 異議を申し立てます! ペクター夫人は淑女ではありません!」

裁判長「は?! 被害者が淑女ではないと?!」

アンドリュー「そうです、裁判長殿! 被害者は身内でも夫でもない私に抱き付いてきた痴女です! 百歩譲って、ご婦人と呼んでください!」

裁判長「なんと! 検事、被害者のペクター夫人は事件の前に被告人に抱き付いたのかね?」

検事「・・・はい。恐れながら、裁判長。それも複数の目撃者が証言しております。しかし、本件はペクター夫人が顔を平手打ちにされた件であり、被告人は痴話喧嘩の末、暴力を振るった容疑で告訴されております」

アンドリュー「裁判長! それにも、異議を申し立てます! 被害者とはただの顔見知りであり、痴話喧嘩をするような仲ではありません! そう思われることすら、吐き気がします! その為、被害者に抱き付かれてしまった私は、この暴挙から身を守る為に引っ叩いたのです!」

裁判長「被告は嫌悪感から行動してしまったと?」

アンドリュー「そうです。それに、あの状況だけを見たら、妻は私が浮気していると思って心を痛めたでしょう。私にとっては、ただの嫌悪感でも、妻にとっては目に見えない傷を負わされ、夫である私を信用できなくなった筈です」

ペクター夫人「そんな! ただ、ふざけていただけじゃない」

アンドリュー「あれは私たち夫婦の評判を落とそうとした謀略です。悪ふざけで許せる領域を逸脱しています」

ペクター夫人「こんなこと、よくあることじゃない! それで評判が悪くなるなら、あなたたちの人望がないからでしょ!」

アンドリュー「身内でも夫でもない男に抱き付くのは、まだ淑女とは呼べない子どもだけです。結婚もして、子どももいるご婦人がして良い行為ではありません。子ども以外がしたら、痴女ですよ」

ペクター夫人「痴女じゃないわ! 誰だってしているじゃない!」

アンドリュー「子どもでもなければ、私の愛人でもない。裁判長、被害者を痴女以外になんと呼べばいいのか教えてください」

裁判長「ご婦人でよろしいでしょう」

アンドリュー「検事殿。このように悪意を持って近付いてきて、嫌がらせ(セクハラ)をされた私が、嫌悪感から被害者を引っ叩いてでも引き離そうとしたことが傷害罪に当たるのでしょうか」

検事「・・・。裁判長。罪状を過剰防衛に変更してもよろしいでしょうか?」

裁判長「検事の申し出を許可します。本件は傷害事件から過剰防衛事件に変更します」

ペクター夫人「わたしは顔を叩かれたのよ! 罪状の変更は認めないわ!」

裁判長「異議を却下します。本件は淑女に対する傷害ではありません。陥れよう、と抱き付いてきたご婦人から逃れよう、と暴力を振るった過剰防衛です」

アンドリュー「裁判長殿! ありがとうございます!」

裁判長「今後、被害者は、親しくない紳士に抱き付かないように」

ペクター夫人「裁判長様。わたしはただ、ふざけていただけなんです! それに、抱き付かれた皆んなは喜んでいました!」

裁判長「ふざけていようが、いまいが、淑女のすることではありません。子どもが真似をしたら、どうするのですか」

ペクター夫人「子どもが真似をしても、許されるじゃないですか」

裁判長「子どもは大人になります。大人になってもまだ続けたら、どう呼ばれるかわかりますか?」

ペクター夫人「どうって・・・?」

アンドリュー「痴女ですよ。裁判長殿。被害者は修道院に入れたほうがいいんじゃないでしょうか? なまじ、魅力的に見えたせいで、怒るに怒れない方々がいらっしゃったようですし」

裁判長「被告人は静粛に。本件は被告人の罪状について審議をおこなっているのです」

アンドリュー「はい」


これが夫の裁判でした。夫の嫌悪感は、ペクター夫人を一度も名前で呼ばないほど酷いものでした。

長いので、何度も省略しましたが、夫は罰金刑ですみました。

ですが、ペクター夫人は夫の事件以降も殿方に抱き付く悪ふざけを続け、被害者に嫌がらせとして告訴されました。

夫の裁判記録がその場でも引用され、ペクター夫人は夫が求めた量刑を受けることになりました。


他国では子どものように異性に抱き付く女性は娼婦、と呼ばれますが、私たちの国では少女趣味(ロリコン)の変態が好きな可哀想な人、と呼びます。

娼婦は売るのも買うのも大人のやることです。

ペクター夫人が可哀そうな人でなければ、彼女の認識は子ども基準ということです。子どものようなペクター夫人を大人扱いすることは、子どもへの搾取を容認することです。

搾取する殿方のいない修道院で余生を暮らすことがペクター夫人の幸せです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ