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売買するぞ

 森から帰宅した俺は、庭でウサギの死体を「空間収納」から取り出した。

 動物の死体を、室内に入れるのはなんか嫌なのでね……。


 そしてここで、変換作業を行う。

 森の中でやった場合、魔力切れで気絶してしまい、動物の餌になりかねないからな……。

 ここでなら万が一気絶しても、メイドのアンシーに見つけてもらえるはずだ。


 さて、今までは木の枝や石などを変換して、武器や防具を生み出していたが、生き物を素材にした場合は、どうなるのだろうか?

 俺の予想では、変換効率が良いのではないかと思っている。


 生物には骨も肉もあって、素材としても色々と使い道はあるし、存在そのものがエネルギーを生み出すこともできる。

 死んでその機能は失われたとしても、残留エネルギーは勿論、もしかしたら魂なんてものも残っているかもしれない。


 それを触媒として使えるのなら、変換は楽になるんじゃないかな?

 まあ、魔法には生贄がつきものだし、それみたいな感覚だ。


 で、何を作るのかだが、毛皮を持つウサギだから、それを活かしたものの方がいいな。

 質量的に毛皮の帽子かな。

 勿論、衣服という扱いではなく、防具としてだから、デザインはそんなにこだわる必要も無い……けど、多少はデザインに凝った方が、付加価値が付いて高く売れるかもしれない。


「じゃあ……変換!」


 おっ、予想通り、魔力消費の負担が少なく感じる。

 完成した帽子も……悪くない感じだな。


 よし、これと他にもいくつか作って、店に売ってみるか。




「ガキの来るところじゃねぇよ!」


 ……武具屋へ言ったら、門前払いを喰らった。

 確かに子供が……しかも女の子が来るようなところじゃないけどさぁ……。


 しかしこの田舎町では、他に古道具屋(リサイクルショップ)とか質屋のような、都合の良い店は無いんだよなぁ……。

 う~ん……これは保護者同伴じゃないと、駄目なのか……?

 しかしアンシーを連れてくるとなると、彼女に俺の能力や目的を説明しなければならなくなる。


 それは最悪の場合、「危ないことをするな」と、外出禁止になるな……。

 仕方がないから、他の方法を考えるか……。


 そういえば図書館にも、行きたかったんだっけ。

 ウサギが思いのほか強敵だったから、この周辺に棲息する動物のことを調べておいた方がいいと感じていたんだ。

 図書館で調べ物をしながら、これからのことを考えていこう。


 そして、図書館の帰り道──。

 俺はある物を見つけた。


「露天商……!」


 前世でも見たことがある。

 道端にシートを敷いて、その上に商品を並べて売る。

 ……その手があったか!


「おじさん、ここで商売するのに、許可はいるの?」


 俺は露天商の男に聞いてみた。

 最初は胡散臭そうにしていた男だったけど、俺が愛想良く笑うと、機嫌良く話してくれた。

 この可愛らしい外見は使えるなぁ。


 で、男の話によると、許可はいらないし、税金の支払いもいらないようだ。

 基本的に身分によって毎年定額の税金を取られる仕組みになっているので、それに含まれているということらしい。

 そして煩雑な許可申請を無くすことで商人の新規参入を促し、経済を活発化させて税収を増やしているようだ。

 

 確かに図書館で調べた本にも、そんなことが書いてあったな。

 これから色々と物を売るのだから、必要だと思って調べておいたのだ。

   

 この世界では収入を正確に調べる手段が少ないので、誤魔化そうと思えばいくらでも誤魔化せる。

 しかしだからこそ、身分制度がある。

 税金は身分によって決まっているけど、それ以上の額を納めることができるらしい。

 そして積極的に多く納めた者ほど、上の階級に進むことができ、特権を──権力を得られるのだ。


 だから誰もが税金を積極的に納める。

 賄賂の合法化みたいなものだけど、上手い手ではあるな……。


 ただ、虐げられる立場の下層階級の者にとっては、色々と大変だろう。

 でも、だからこそ上に行こうと、労働意欲の高い者が多いというメリットもあるようだ。

 うちの親もそうやって、男爵の地位を手に入れたのだろうな。


 逆に言えば、能力が無い者や、病気などで働けない者にとっては、下層から抜け出すことのできない弱肉強食の世界ではあるが……。


 俺も親はあてにできないので、どんどん稼いでいかないとな……。

 応援ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 彼女が生産だけに専念している間、誰かに原料を探してもらった方が効率的ですが、彼女がまだ他人を信頼することを恐れていることも私は知っています。 [一言] でも、彼が望む望まないに関わらず、…
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