授業中の決闘
「やっ!!」
セリエルがフルーレを突いてきた。
む……結構速いな。
だが、義足のアシストで身体能力が上昇している俺にとっては、回避することはそんなに難しくない。
セリエルが単発の攻撃を何発撃ってきても、当たる気はしなかった。
「この……!」
しかし攻撃があっさりと回避されたことでムキになったのか、セリエルは連続してフルーレを突いてくる。
まだ10歳か11歳であろう少女とは思えないほど、その攻撃は鋭い。
フルーレの先端に刺してあるコルク栓だって、たぶん貫通する。
まともに受けたら、全身が穴だらけになるだろう。
怖ぇな、異世界。
「殺意が高いですねぇ……」
でも俺には、そんなセリエルの攻撃がハッキリと見える。
今の俺は、調子が良ければ撃ち出された銃弾だって察知することが可能だから、セリエルの攻撃はスローモーションに感じるくらいだ。
「くっ……ネズミのようにチョロチョロと……!!
大人しく討たれなさいな……!」
「嫌ですよ。
私になんの得があるのですか」
ふむ……セリエルの攻撃は大体分かった。
それじゃあ、俺も反撃するとしようか。
「な……!?」
俺はセリエルの攻撃を躱すのと同時に間合いを詰めて、彼女の身体に触れる。
だが、決して痴漢行為をしている訳ではない。
本当だぞ?
「なんだか……セリエル様の顔が青く……?」
この模擬戦を見物している誰かが、セリエルの変化に気付いたようだ。
俺がセリエルに触れる度に、彼女の顔が恐怖心で満たされていくということに──。
俺が触れているのは、瞼、首筋、鼻、耳──等々、人体の急所とされる箇所だ。
いや、さすがに胸や下半身の辺りには触っていないけどな。
ともかくそれらの急所に触ることができるということは、そのままそこを攻撃することが可能だということでもある。
俺がその気ならば、目に指を突き入れるなんてことも可能だし、セリエルはとっくに戦闘不能へと追い込まれるような重傷を負っていただろう。
セリエルもそれが理解できるから──俺との実力差が分かったから、恐怖しているのだと思う。
この辺が落とし所かな?
「降参してくれませんかね?」
俺は降伏勧告をする。
できれば女の子を痛めつけるようなことはしたくないので、今の内に降参してくれれば手荒な真似をしなくても済む。
しかしセリエルは折れなかった。
「伝統ある武家のラントール伯爵家に産まれた私が、全力を出さずに負けるようなことがあってなるものですか!!」
恐怖心よりもプライドの方が勝ったか。
って、金髪縦ロールの悪役令嬢みたいな見た目のくせに、武人系キャラなのかよ。
追い詰めたら「くっ、殺せ」とか言いそう。
それはともかく、セリエルの動きが変わった。
今まではフルーレで突く攻撃だったが、振る動きに変わったのだ。
しかも腕全体で振るのではなく、手首による最小限の動きだけで振っているので、ちょっと読みにくいな……。
で、そんな動きで振られたフルーレの細い剣身はしなり、鞭のように──いや、実質的に鞭そのものだな、これ。
その攻撃は突きよりも攻撃範囲が広いし、しなっているから間合いも読みにくい。
結果、回避し損ねた俺の体操服が何ヶ所か切り裂かれ、その下の皮膚が赤く腫れた。
俺の身体は義足で強化されているから、出血するほどのダメージにはならないが、痛いことは痛い。
細いとはいっても、鉄の棒だしな。
何発も受けたい攻撃ではない。
「──っ!!」
しかもセリエルは、しなる鞭のような攻撃に、刺突攻撃を織り交ぜてきた。
先程までとは違い、手首のひねりが加わって威力が桁違いに上がっている。
周囲の空気を巻き込んで回転するフルーレは、まるで小さな竜巻だ
渦を巻くのは髪型だけにしろよ、このドリル娘!!
……これがセリエルの本気──彼女のスキルか!
今までは試合用の技だったけど、今は戦場で人を殺す為の技を使っているようだ。
これはさっさと倒さないと危ないな。
しかし今のセリエルは、ちょっと殴られた程度で負けを認めるとは思えなかった。
降参させるのが無理なら、戦闘不能に追い込む必要がある。
となると武器を使えなくするとか……。
う~ん……「変換」を使って、セリエルのフルーレを無力化するという手段もあるが……。
例えばフルーレを木の棒に変えるとか、俺に対して攻撃すると消えるような設定を追加するとか……。
だけどそれは、ちょっと手の内を晒しすぎか……。
というか、魔法だと勘違いされて、反則負けにになるかもしれないし。
まあ、別にこの勝負は負けてもいいんだけど、それでセリエルが増長するようなことになっても面白くないし、変な負け方をすれば今後の俺に対する評判にも響く。
少なくとも卑怯者扱いされかねない、反則負けは避けたいな。
それならば、ちょっと強引だけど、力業で勝つしかないか……。
「よっと」
俺は少し大型の盾を、「空間収納」から取り出す。
これでセリエルの攻撃は、防ぐことができるだろう。
「な、なによ、それっ!?
魔法でしょ!?
反則ですわ!?」
「いえ、スキルですが」
……スキルだよね?
その辺の線引きは曖昧だけど、魔法が使えない俺が使えるのだからスキルで間違い無いはず……。
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