クラスが決まりました
どうやら俺にもついに、初潮が来てしまったらしい。
いや、初潮にしては出血量が多いような感覚があるので、もしかしたら初潮には気付かないまま既に過ぎていた可能性もあるが……。
最初は出血量が少ない場合もあると、聞いた事があるし……。
ともかく、股間から出血はしている。
え……俺でも赤ちゃんを産めるようになるの?
いや、産まないけど!!
絶対に産まないけどっ!!
……あまり強調するとフラグになりそうだから、これ以上はやめておく。
くっ……。
今後は生理用ナプキンの開発を、最優先にしないと駄目だな。
おそらく義足の回復能力のおかげで、症状は軽くなっているのだろうし、実際に出血するまで俺も気づかなかったが、これは大変なことだと思い知ったよ……。
それよりも今問題なのは、股から漏れた血がパンツに染み込んで、気持ち悪い状態になっているということだ。
しかもこの状態で更に激しい動きをしたら、もっと血が溢れてスカートを汚すことになるかもしれない。
あるいは太股を伝って、足下まで垂れてくるかも……。
そうなれば人目に触れることになる。
それはさすがに恥ずかしい……。
これでは戦闘なんて無理だ。
「……体調不良なので、棄権させてください」
俺は試験官に申し出た。
「テストは不合格になって強制的に初心者クラスになってしまうが、それでいいかね?
まあ、今後の成績次第では、もっと上のクラスに行けるが……」
「仕方がないですね……」
俺の実力を考えると、初心者クラスで本気を出したらその実力差から他の者達の心を折ってしまうことにもなりかねない。
だから手加減しつつ、かつなるべく早く、上のクラスに行くことを目指そうか……。
「ふふっ、自信が無いから逃げ出したのですのわね。
所詮は成り上がり……やはり大したことはありませんわ」
と、セリエルの陰口が聞こえてくる。
うるせー!!
お前はまだ初潮がきてないから、この大変さが分からないんだろ!
くっ……前世で体育を休んでいた女子達の気持ちが、今頃になって分かったわ……。
そんな風に悔しがっていると、
「あうっ!?」
またセリエルの悲鳴が上がった。
今度は太股の辺りを、手で押さえている。
「さっ、さっきから何なのですの!?」
「……カナブンでも当たったんじゃないですかね」
俺はしれっとアンシーが撃ったゴム弾を消して、証拠隠滅しておく。
アンシーのおかげでちょっとだけ気は済んだが、結局テストは不本意な形で終わった。
こりゃ、座学と礼儀作法以外は、初級者クラスだなぁ……。
俺は成り上がりであり、それを軽んじる者は少なからずいる。
だからこそ、あまり弱味は見せたくなかったんだけどねぇ……。
なお、かなり後になってから、出血は「空間収納」に入れ続けておけば、バレなかったのだということに気づいた。
それと血で汚れたパンツは、洗ってももう駄目だろう……と、捨てようかとも思ったのが、試しに「変換」の材料にしてみたら、結構いいものに変えることができた。
え……?
素材としての価値が高いの?
パンツが?
それとも処女の生き血が?
あるいはその両方?
誰だよ、この変換レートを設定したのは……。
スキル?
それともあの女神か?
なんだか闇を感じるから、これ以上は詮索しないが……。
で、テストが終わったら寮で待機し、翌々日にはクラスの発表だ。
授業は座学3時間、礼儀作法1時間、魔法1時間、戦闘1時間……と、1日4部編成となる。
そしてそれぞれの授業では、初級・中級・上級……と、実力に合わせてクラスが振り分けられる訳だが……。
俺は座学・上級、礼儀作法・中級、魔法・初級、戦闘・初級……だな。
ちなみにアリサは、座学・中級・礼儀作法・初級、魔法・上級、戦闘・中級……だった。
商人の娘としてそれなりの教育を受けていた彼女の能力は、魔法以外は平均的って感じ。
ただ人見知りも激しい為、礼儀作法だけは実力を発揮しきれなかったようで、結果として俺とはひとつも同じクラスになれなかった。
「頑張って、エルと同じクラスになるね!」
と、アリサは多少不安そうだけど、向上心を見せた。
俺も魔法は無理だが、戦闘はさっさと上のクラスに上がるように頑張ろう。
とはいえ、最初は持久走や柔軟体操など、基礎体力作りから始めるので、あまり俺の実力を発揮する機会が無く、本格的な戦闘訓練が始まるまでは上のクラスに行けそうもない。
魔法も特に成果が出ないままだ。
そんな訳で、たまに謎の視線を感じたり、セリエルなど一部の貴族令嬢に陰口を叩かれたりもしたが、大きな変化が無いまま1ヶ月ほどが経過した。
まあ、学校生活には問題は無い──俺はそう認識していたのだ。
実際、顧客であるマルドー辺境伯の次女・コリンナと幾度か面談もし、俺との取り引きを望む貴族家の令嬢を紹介されたり、今後の取り引きについて話し合いをしたりと、商売の面でも有意義に過ごせている。
しかしある日、アリサが元気を無くしていることに俺は気付いた。
最初は慣れない生活でストレスを抱えているのかとも思ったが、どうやらそれだけが原因ではないらしい。
彼女の挙動に、不自然な部分があったからだ。
なんとなく何かを警戒しているというか……。
その理由についてアリサ本人に聞いてみたが、最初彼女は話したがらなかった。
だが、俺が彼女に寄り添う姿勢を見せて、根気強く事情を聞いていたら、ようやく彼女はぽつぽつと語り出す。
「あのね……」
それによると、彼女の私物が隠されるなど、嫌がらせだと思われるようなことが、何度も学校で起こっているというのだ。
イジメか……!?
だとしたら犯人を見つけ出して、一族郎党に土下座させてやるぞ……!
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