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入寮と早速のトラブル

 寮に入った俺達は管理人に案内されて、それぞれの部屋に入ることとなった。

 俺は3階の部屋、アリサは2階の部屋になったが、どうやら学年で階が分けられている訳では無さそうだ。


「エル~……」


「はいはい、また後で会えますから」


 アリサは俺と離れ離れになることが不安らしく、抱きついて暫く離れなくなった。

 親元を離れて遠い土地に来たのだから、まだ子供の彼女としては当然の反応か。


 寮の部屋って、基本的には個室だ。

 寮生という仲間がいるとはいえ、一人暮らしみたいなものだしねぇ……。


 ただ、個室とは言っても、付き人を連れてきた場合は、2人部屋として使用することも可能だ。

 まあ、貴族の女子だと身分が下の使用人と一緒の部屋は嫌がるので、使用人は学外に部屋を借りて寮に通うというのが一般的らしいが。


 でも俺は気にしないから、アンシーと同じ部屋で暮らすけどね。

 結果として生活スペースは狭くなるが、それは仕方がない。

 それに俺はアンシーと同じベッドで寝ているから、ベッド1つ分は広く部屋を使えるし。


「それではミミ、アリサのことをよろしくお願いします」


「は、はい」


 なおアリサには、ミミと同居してもらうことになっている。

 2人は特に仲が悪いということはなさそうだけど、長期間同じ部屋で生活した経験は無いので、どうなるのかは未知数なところもあるねえ……。

 だけどアリサも1人で生活するのは不安らしいから、他に選択肢は無いのだ。


 え? 俺とアリサが同室になって、メイド2人が同室で生活すればいいって?

 それはアンシーがいい顔をしないから駄目だな。

 彼女は俺が他の女の子と過剰に密着していると、何故か不機嫌になるんだよ……。


 で、話は部屋の方に戻すけど、各部屋にキッチンとトイレはあるが、浴室は無い。

 寮には大浴場があるので、そちらを使うことになっているけど、元男の俺が使ってもいいのだろうか……?

 裸の女子に囲まれたら、理性がゆらぎそうだ……。

 仕方がない……人が少ない時間帯を狙うか……。


 その後、俺とアンシーは部屋に入り、この部屋で生活をする準備を整える。

 とは言え、必要な物を「空間収納」から出すだけなので、そんなに手間ではない。

 普段使わない物は必要になるまで入れておけばいいから、室内はミニマリストのそれのように、スッキリとしていた。


 効率的ではあるが、殺風景だな……。


「観葉植物でも買いましょうか」


「そうですね」


 部屋の片付けを終えた俺達は、アリサの部屋へ行って荷物の整理を手伝った。


 それが終わったら、夕食をとることにする。

 食事は学校併設のレストランを使ってもいいし、自室で自炊してもいい。

 街に出て外食もありだが、寮には門限があるので、夜は外出許可申請が必要だ。

 勿論、家の事情とか、どうしても外せない用事がある場合とかではないと許可されないそうな。

 遊びたい──程度では、教育指導を受けて終わりだろう。


 でも、門限まではまだ時間があるし、折角だから王都の外食産業がどれほどのものなのか確かめてみよう。

 ついでに観葉植物も買えるかな?


「……?」


 アリサの部屋を出て玄関へ向かう途中、視線を感じた。

 後ろを振り返ると、何者かが姿を隠すのが見える。

 少しして、扉が閉まる音──。


 俺達を見ていた者は、もう部屋に入ってしまったか。

 いくつもある部屋の中から、何処に入ってしまったのかは特定できないな……。

 しかし入寮した時に見た人影は2階にいた。

 そしてここも2階。

 同一人物である可能性が高い。


 一体何者だ……?

 気にはなるが、殺気は感じなかったので、危険は無いだろうと判断する。

 何か問題があるのなら、放っておいても向こうの方から来るだろう。


 そんな訳で、夕方の王都へと俺達は出掛けるのだった。


 なお、王都のレストランの味はそこそこだったけど、アンシーが作った方が美味しかったなぁ。

 あと、観葉植物は、サボテンみたいのが売っていたから買ってきた。

 異世界にもサボテンがあるのか。

 ……勝手に動き出したりしないだろうな?




 翌日、入学式があるので、初めて登校することになる。

 まあ、寮から学校の正面玄関までは、徒歩2分程度なので楽だが。

 ギリギリまで二度寝ができるな!


 いや、さすがに初日には、時間に余裕を持って部屋を出るぞ。

 ちなみにメイドや護衛は学校に連れて行ってもいいらしいんだけど、余程地位の高い者じゃないとやらないらしい。

 確かに逆に目立って、余計なトラブルを招きそうだしな。

 一応学校にも警備がいるようなので、護衛はそちらに任せよう。


 そんな訳でアンシーとミミは寮でお留守番することになるが、登校を見送る為に玄関まで出てきた。


「それではいってらっしゃいませ、お嬢様方」


「いってらっしゃいませ」


「はい、昼には1度、食事をしに戻る予定です」


 アンシーとミミに見送られて、俺とアリサは玄関を出る。

 その時──、


「まあ……汚らわしい獣人をメイドにするなんて、どこの田舎貴族なのかしら?」


 そんな声が聞こえてきた。

 ああ、差別意識の強い高慢な貴族との対立という、テンプレ展開ですか?

 というか、今まで監視しされていたのは、俺じゃなくてミミの方?

 

 まあどちらでもいい。

 その喧嘩、買ってやろうじゃないか!

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