今後の予定
なにやらアリサに、「王都の学校へ一緒に通おう」と誘われた。
前世で一通りの学校を卒業している俺には、あまり必要が無い気がします!
そもそも何故王都なのだ?
このロゼーカンナ市にも、私塾程度だが教育機関はある。
その辺を問い質しても、イマイチ要領を得ない。
アリサってそんなに頭が良くない……いや、10歳ならこんなものか?
まあだからこそ、アリサには学校は必要だと思うが、俺は仕事もあるしちょっとな……。
ともかくよく分からないので、アリサの父親であるルエザリクさんに詳細を聞きに行ってみようか。
「これはこれは……子爵様自らがご来訪とは、恐縮ですな」
ルエザリクさんの家に行くと、そんな風に挨拶をされた。
「そういう冗談はよしてくださいよ。
私とルエザリクさんの仲じゃないですか」
ルエザリクさんとは一緒に仕事をしているから頻繁に顔を合わせているし、半ば家族のような付き合いをしている。
今更礼儀とかは不必要だ。
ただ、最近は色々とあって、顔を見せていなかったので、そのことを皮肉られたようだ。
それに今や彼も男爵だ。
身分にはそんなに大きな差は無い。
お互いに儲けたからなぁ……。
納税の額でランクアップできるシステムは、ある意味ではシンプルで楽だ。
「で、アリサの学校の件については、どういうことなのです?」
俺は率直に聞いてみた。
「……うん、アリサに魔法の才能がありそうだというのは知っているでしょう?
それでしっかりとした教育を受けさせるべきじゃないか……って話になってね」
「ああ……」
俺は以前、エカリナさんやリーリアに魔法を習っていたのだが、アリサはそれを見て「一緒に魔法の練習をしたい」と、言い出したこともあった。
それで実際にやらせてみると、確かに彼女には魔法の才能があるらしいことが分かったんだよな……。
俺? 俺は相変わらず駄目だ。
魔力はあるのに、スキルなのかそれとも俺自身なのか、とにかく相性が悪くてまったく魔法は使えなかった。
その所為で魔法を付与した武具は、未だに作ることができない。
「それに私も男爵になったのだから、その娘にもそれなりの礼儀作法を学ばせた方がいいと思ってね。
王都の学校では魔法だけではなく、礼儀作法やそれ以外の貴族として必要なことも教えてくれるそうだ。
それについては、君も同様じゃないかい?
これからは貴族相手の商談も増えるだろうし……」
「それで私も一緒に……ですか」
確かに子爵になったからには、これからは貴族相手の作法などは必要になる。
それに魔法が使えない俺でも、専門的な場で学べば、何かが変わるかもしれない。
……でもなぁ。
「私には仕事があるのですが……」
「あなたの力を必要としない商品の開発は軌道に乗りましたし、あなたでなければ作れない物は、そもそも相手を選んでいる為に、それほど多くの在庫は必要無いでしょう?」
まあ、悪用しそうな奴には、危険な物なんて売らないからな。
それに兵器の類いは、1度納品してしまえば、有事になるか経年劣化するまでは消耗しないから、それほど頻繁には納品しない。
う~ん、余裕があると言えばあるが……。
「あと、この機会に王都へ支店を出そうと考えているのですが、どうでしょうかね?」
「ほう、支店ですか!」
それは悪くない話だな。
事業の拡大は、いずれするつもりでいた。
「つまり学校はついでであり、支店の設立が本命という訳ですね。
それならば前向きに考えましょう」
「では、今後の計画を詰めていきましょうか。
入学は3ヶ月後ですよ」
3ヶ月か……。
時間的な猶予は結構あるな。
それならば魔族のマグエアルとか、顧客と連絡を取り合って、今後の予定について話し合えるだろう。
「王都ですか。
少し遠いですね」
商品を受け取りに来た魔族のクロムスタは、少しだけ眉宇をひそめた。
彼女の姿は人間と変わらないので、このロゼーカンナ市と魔族領を行き来する連絡員のようなことをしているが……。
もしかして王都まで来る気か?
「新年には長期の休みがあるらしいので、その時はここへ戻ってきますよ?
何か欲しい品があるのでしたら、その時でも良いのではないですか?」
「マグエアル様が新商品を楽しみにしておりますので、頻繁に接触できなくなるのは困りますね……」
確かにマグエアルには、防衛装備以外にも、俺が前世の知識を利用して開発した道具や食品とかでもお得意様だ。
特に新商品は、真っ先に手に入れようとしてくれている。
既存の商品ならば、俺が直接作っている物以外は、このロゼーカンナ市でも製造しているから、ここに来れば購入することはできる。
しかし王都の支店の方で新商品を開発した場合、それがロゼーカンナ市で売られるようになるまでには、数ヶ月ほどかかるだろうな。
まあ、俺がその気になれば戦闘ヘリとかを使って、このロゼーカンナ市と王都の間を1日程度で往復することはできるだろう。
だが、それはいついつに必ず……とは、今の時点では断言できない。
「私も余裕があれば王都まで足を運ぼうと思いますので、その時はよろしくお願いします」
「はあ……」
それ、スパイ行為を兼ねてませんよね?
大丈夫?
ともかくそんな感じで、王都へと行く為の準備を整えていった。
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