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求人募集

 今回はモブ視点。

 おらの名前はミミ。

 田舎から出てきたばかりの、ただの娘だべ。

 おらの家は貧しくて、口減らしって訳じゃないけど、子供の中では一番年上のおらが家を出て、働くことになったんだ。


 そこでおらが来たのは、ロゼーカンナ市。

 何年か前に魔物の群に襲われたと聞いていたけんど、実際にこの目で見てみると、被害の痕跡を感じさせない発展した都市だと感じたんだぁ。


 おらをここまで運んでくれた馬車の御者さんは──、


「ダンジョンが新しく見つかったから、景気がいいそうだよ」


 と、教えてくれたんだべよ。


 ダンジョンがあると冒険者の人達が集まってきて、更にその冒険者を相手にする商人とかも集まって、良い経済の循環が生まれるんだってな。

 そのダンジョンが2つもあるんだから、そりゃあ豊かになるってものだべな。


 でもそれだけで、こんなに発展するもんだべか?

 実際おらが見てきた他の町とは、別世界の風景だと思わせるだよ。


「ほへっ!?」


 い、今……2つの車輪の上にまたがって、道を走っている人がいたべ!?


 なんだべ、あの道具……。

 馬のように速く動いていただ……。

 あんなの、今までに見たことが無いだべよ。


 都会って凄いんだべなぁ。


 それから安宿をとり、職業斡旋所へ行くと、


「経験や特殊なスキルが無いとなると、高給のお仕事はありませんね」


 と、係の人。


「そうだか……」


 おらにできるのは、家事や農作業の手伝いくらいだしなぁ。


「あと、(なま)りが強いと、接客業は難しいかもしれません。

 それにその……」


 係の人は言いよどんだべ。

 でも、ハッキリと言わないだけ、この人は優しいのかもしれないだよ……。


「ああ、分かっているだ……。

 おら、獣人だもんな」


 おら達……獣人は「毛が落ちる」とかで、食堂や宿屋などの清潔感が求められるような場所ではいい顔をされないもんなぁ。

 おらが毛深いのは耳や尻尾程度だけど、それでも抜け毛の季節にはごっそりと毛が抜けるし……。


 その所為で、職業選択の幅も狭まっているようだべ……。

 実際、一応紹介してもらった職場からは、全部断られただよ……。


 まずいべ……。

 このままでは、宿代も尽きてしまうべよ。

 でも、今更家には帰ることはできないし……。

 この旅費は、町で働きたいって打ち明けたおらの為に、両親が用意してくれたものだ。

 そんなに余裕は無いのに……。

 それを無駄にしたなんて、絶対に言えないべ……。


 そんな焦りを抱えたまま、斡旋所へ通っていたある日……。


「これならば、どうですかね。

 メイドの仕事なのですが、必要な経験やスキルの条件は無く、ただ信用できる者だけを募集している求人があります。

 採用されるかどうかは、あなた次第となるでしょう。

 給与などについても要相談なので、場合によっては高くなるかもしれませんが、低くなる可能性もあります」


「そ、それはどこだか?」


 おらはその話に飛びつこうとしたべ。

 しかし担当者さんは──、


「それは現場へ行ってからのお楽しみです」


 どうやらその求人は、純粋にメイドの仕事をしたい人を求めているようで、事前情報は教えてくれなかったべ。

 事前にそれを公開してしまうと、不純な動機の者が応募してくるかもしれないから……とか。


 よく分からないけど、とにかくそこへ行ってみることにしたんだ。


 で、指定された住所に行ってみると、そこにあったのは──、


「豪邸だべ……!」


 大きなお屋敷だっただよ。

 田舎者のおらが、こんな立派なところでの仕事ができるんだべか……。


 そんな風に緊張しながら正門へ行くと、そこにはエルフのお姉さんが立っていただ。

 おら、エルフなんて初めて見ただよ。

 凄く綺麗な人だべ……!


「あら、あなたが新しい子ね?」


「み、ミミです。

 よろしくお願いします!」


 おらが頭を下げると、


「そんなに緊張しなくてもいいわよ。

 斡旋所には、性格の良さそうな子がいたら声をかけて……って言ってあるらしいから、ここに来た時点であなたは見込みがあるってことなのよ。

 だから気楽にね」


「そ、そうなんだべか……あ!」


 なんとか訛りを出さないようにしようとしていたのに、つい出てしまったべ。

 でも、見込みがあるなんて言われたら、驚かずにはいられないべよ……。


「ふふふ……。

 ここの主人は礼儀作法にはうるさくないけど、それでも公式の場では必要だから、正式採用された時は勉強してもらうわよ」


「は、はい」


 礼儀作法だべかぁ……。

 大変そうだべ。

 でも、これは最後のチャンスかもしれないから、死ぬ気で頑張るべよ!


「そ、その、ここの御主人は、や、ぱり身分が高いお方なんだ……なのでしょうか?」


「ええ、子爵様よ」


「子爵様ぁ!?」


 貴族様の家とか、さすがにおらが入るのは駄目じゃないべか!?


 しかしエルフのお姉さんは、門を開け──、


「さあ、案内するわ」


 と、おらを招き入れたんだべ……。

 ちょっと生きた心地がしないべよ……。

 いつも応援ありがとうございます。

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