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今の俺

「ふぁ……」


 朝、俺はベッドの中で目を覚ます。

 隣ではアンシーが眠っていた。

 いつもなら俺よりも先に目覚めて仕事を始めているのだが、彼女がまだ起き出さないということは、いつもよりもかなり早い時間に俺は目覚めてしまったらしい。


 ……なんだか目がさえてしまったから、このまま起床することにしよう。


 さて、着替えるとするか。

 普段はアンシーが着替えを手伝おうとするけど、さすがに1人でも着替えはできるので、今の内にやってしまえ。

 で、服を脱ぐと──、


「また……少し大きくなった?」


 鏡に映る胸が、ちょっと大きくなったような気がする。

 成長期だからなのか、いつの間にか結構変化していることが多い。

 身長だってそこそこ伸びたし、ウエストもくびれてきた。


「そろそろブラが必要かなぁ……?

 ……ブラか……」


 元男としては複雑な気分だが、使わなかった所為で形が崩れるのも嫌だというのも男心だろうか……。

 やっぱり綺麗な形の方が眼福だ。


 なお、ブラジャー自体は、俺のスキルで作ることができる。

 ブラジャーのワイヤーが、凶器に使われたという事例があるからな。

 ……フィクションでの話だが。

 でもブラ紐での絞殺だって不可能ではないだろうし、現実的に凶器としては使えるはずだ。


 で、実際に作ったブラジャーは、アンシーやエカリナさん達が使っていて、好評を博している。

 商品化も視野に入っているが、異世界の素材だけで量産化するのはなかなか難しい。


 それはともかく、段々女の身体(からだ)になっていく自分を見て、なんだか妙な気分になることがある。

 もう女体には慣れたと思っていたが、思春期に入った所為か、自分自身の身体にすら、ムラっとくることがあるんだよねぇ。……。


 でもなぁ……。

 普段から近くにアンシー達がいるから、発散する機会がなぁ……。

 興味はあるんだけどなぁ……。


 この大きくなり始めた胸の感度だって、実際にはどれほどのものなのか、思う存分検証してみたい気持ちはある。


「んっ……」


 軽く触ってみると、少し痛い。

 やはり膨らみ始めは痛みがあるというのは、本当のようだ。

 これじゃあ揉むのはまだ無理──、


「あ……お早うございます。

 お嬢様」


「ひうっ!?」


 アンシーがいつのまにか目を覚ましたようだ。

 今の……見られていないよな?


「お着替えを手伝いますね」


「いや、自分でできるから。

 アンシーは自分の着替えをして」


 するとアンシーはベッドから立ち上がり、俺の方に歩み寄りながら──、


「そうですか……。

 あの……お胸に興味があるのでしたら、私のを自由にしてもいいのですよ?」


 悪戯(いたずら)っぽい口調で(ささや)いた。


「!?」


 やっぱり見られていた……!

 俺は顔が熱くなっていくのを感じ、思わずしゃがみ込んでしまった。

 アンシーは俺をからかっているつもりなのかもしれないが、刺激的すぎるのでやめて欲しい。


「いいから、アンシーは着替えて!」


「はいはい。

 ところでお嬢様」


 最近のアンシーは人前で言い間違えることを危惧してか、二人きりの時でも俺のことを「お嬢様」と呼ぶ。

 もう久しく「坊ちゃま」と呼ばれていないなぁ……。

 まあ、性別的にも年齢的にも、もう「坊ちゃま」という柄じゃないけれど。


「本日は新規雇用の使用人と、面接がありますよ。

 普段着ではなく、正装をお願いします」


「ああ、そうだったな」


 最近は商売も順調だし、事業拡大も進んでいる。

 それに伴って従業員も増やしているが、私生活の方でも忙しくなってきているので、屋敷で身の回りの世話をするメイドを増やすことになっていた。

 今日はその面接試験があるのだ。


 まあ、これが初めての面接試験という訳でもないので、緊張もしないが。

 それにロゼーカンナ市に住むようになってからもう3年近くになるし、今の生活にもかなり慣れたからな。

 つまり、心の余裕があるということだ。


「じゃあ、行くか」


「はい、お嬢様」


 俺達は着替えと食事を終え、職場へと向かった。

 ちょっと時間が経過しました。


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