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再生と強化

「そこまでだ、ギゼオン!!

 クロムスタ、治療を!!」


 あ……マグエアル達が来た。

 よし、これでアンシー達の安全は確保できた。

 ……マグエアル達が裏切るとかしなければだが、ここは信じて任せることにしよう。

 同じ魔族ならギゼオンがこれ以上攻撃してこないように、抑える実力はあるはずだ。


「治療は……取りあえずいいです」


「え……でも……?」


「坊ちゃま!?」


 困惑するクロムスタとアンシー。

 しかし折角(・・)両足を失ったのだから、ここは自身を強化する為に活かすとしよう。

 そう、新たに戦闘用義足を作るのだ。

 今までも強化策は必要だと感じていたけど、さすがに(みずか)ら手足を引き千切るのは怖いから踏み切れなかった。

 だが、これはいい機会だ。


 俺は集中して、義足を生み出す為の「変換」を始める。

 材料は周囲に大量の魔物の死体があるので、それを使うことにしよう。


「な……なんだ!?」


「こ、これは……!?」


 俺や魔物の死体が光り出したことに、周囲がざわめきだした。

 そりゃ驚くよな。

 俺だって客観的に見たら驚くし、訳が分からないと思うだろう。

 だが、仕様だからどうしようもない。


 本音では、もっと目立たなくして欲しいんだよなぁ……。

 何かをやっている感を出すと、敵が危険を察知して攻撃してくるかもしれないし。

 まあ、今はマグエアルがギゼオンを抑えてくれるだろうから、俺は「変換」に集中できる。


 で、その「変換」だが、義手を作った時は無我夢中だったので、細かく性能を設定することはできなかったけど、今回は2回目なので少し余裕はある。

 いや、急がなければ失血で意識を失いかねないから、結構ギリギリだと思うが……。


 その限られた時間の中で作らなければならないのは、左右で異なる性能を持った義足だ。


 片方の義足は、俺にとって圧倒的に足りなかった身体能力を強化する性能──。

 ナノマシン的な物を全身に行き渡らせで筋力を上げた上に、全身の耐久力も上げる。


 そしてもう一方の義足は、やはりナノマシン的な物で、今腹に空いている穴も瞬時に回復させることができるような再生力をこの身体(からだ)に付与させる性能──。

 可能なら毒などの状態異常も、無効化できるといい。


 これは医療用では無く、あくまで継戦能力を向上させる為の戦闘用の義足だ。

 ……これが成功したら、いよいよ人間離れしてくるし、また脳に変な影響を受けそうな気もするが、今は四の五の言っていられるような余裕は無い。


 とにかく望んだ性能が義足に宿るように、明確なイメージを持って「変換」を行う。

 しかし製造コストが高い未来の技術である為に、魔力がごっそり減って行く感覚がある。

 おそらく俺の魔力だけでは足りなかったのだろうけれど、周囲に材料となる魔物の死体が大量にあることが幸いして、なんとか足りそうだ。


「なんということだ……!!」


 魔物の死体が分解されて光と化していくという不可思議な現象には、マグエアルさえも驚愕して硬直する。

 そしてその光は俺の方へと集まり、更に輝きを強めた。

 幻想的で見入ってしまうような光景だろうけれど、これに対して真っ先に危機感を覚えたのはギゼオンだった。


「な、何をするつもりだっ!?」


「!」


 ギゼオンがこちらに向かって、跳びかかってきた。

 しかしそれを防ぐべきマグエアルの反応が、わずかに遅れる。

 ギゼオンが振った剣がマグエアの頬をかすめた結果、彼女は体勢を崩す。

 おいおい、俺の方に気を取られたからって、油断しすぎだぜ!?


「マグエアル様っ!!」


 次にクロムスタが動くが、彼女はマグエアルの方に意識を奪われている。

 これは突破されるな……!!

 まあいい、「変換」はもう最終段階だ。

 放っておいていても、後は勝手に完成するだろう。


 ならば、俺自身が反撃できる。


「っ!!」


 銃声と共に、ギゼオンが動きを止めた。

 俺が「空間収納」のから取り出した銃で、彼を撃ったのだ。

 まあ、弾丸はまたマントで(はじ)かれたけど、牽制にはなった。


「……よし!」


 今撃った銃は、今までならば俺の貧弱な身体だと、発砲の反動で肩が外れるなどのダメージを受けたであろう大口径の銃だ。

 それを片手で撃つことができた。

 身体を強化する義足の効果が、既に現れている。

 これなら魔族が相手でも、戦うことができるぞ!

 

 それに腹の傷も、急速に痛みが引いていく。

 再生の義足も、ちゃんと機能しているようだ。


「ぼ、坊ちゃま、お身体は大丈夫なのですか!?」


 動揺したアンシーが話しかけてくる。


「アンシー、人前ではお嬢様だ。

 見ての通り腹の穴は塞がったし、無くなった足には新しい義足をつけたからもう大丈夫だ」


 俺は2本の足で立ち上がる。

 しっかりとバランスはとれる。

 義足なので靴は履いていないが、足の裏に土の感触があるので、神経との接続も問題無いようだ。

 

 まあ、いつまでも裸足でいるのもアレなので、軍用ブーツを足に履いた状態で作り出した。

 そしてその履き心地を試すかのように、俺はジャンプする。


「おおっ!?」


 軽く跳んだだけなのに、1m以上浮いた。

 やはり身体強化の義足は、正常に機能している。

 俺は楽しくなって、何度もジャンプする。

 最終的には5m近い高さまで跳べた。


「あははは!」


 身体が思い通りに動くのって、こんなに面白いのか!

 今までの鈍重で非力な身体が、嘘のようだ。


 ……って、今はそんな場合じゃないな。

 周囲の者達は、俺の復活と強化に唖然として動けないでいたが、まだギゼオンは倒していない。

 奴が動き出す前に、先に攻撃するか。


 俺は空中で、ギゼオンに向けて再び発砲した。

 いつも応援ありがとうございます。

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