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襲撃再び

 げっ、またロゼーカンナ市が、魔物の群れによって襲撃を受けているのか!?

 ということは、ギゼオンとかいう魔族の仕業?


 しかし一体何処から現れた?

 都市を攻撃できるような戦力なんて、今までいたダンジョンは勿論、先日上空から周辺を調査した時にも見当たらなかったけど……。


「んっ!?」


 その時俺は、ミニバンに併走している存在に気付いた。


「おお、クロムスタか!

 何か分かったか?」


 なんだ……何処かへ行っていたマグエアルの護衛か。

 1度車を停めて、彼女の話を聞いてみよう。


「マグエアル様、もう1つのダンジョンから魔物が溢れました。

 先程までのダンジョンは、どうやら(おとり)だったようです」


 ああ、そういえばロゼーカンナ市の近くには、もう1つのダンジョンがあるんだっけ。

 そちらの方は市の経済活動に組み込まれていたから、むしろ盲点だった。

 そりゃあ頻繁に冒険者が入り込んでいる場所に、魔族が潜伏しているとは誰も思わないわな……。


 ……ということは、そちらのダンジョンに行っていた冒険者には、大きな被害が出ているはずだ。

 市の方は爆発する矢とか、ある程度の武器を売っているから、すぐに陥落することは無いと思うけど……。

 とにかく急いだ方が良いな。


「それでは戦局が分かる場所まで、急ぎましょう。

 マグエアルさんはどうしますか?」


「我々は別行動で、ギゼオンを捜すことにしよう。

 卑怯者の彼奴(あやつ)のことだから、目立つ場所にはいないだろう」


 ああ、魔族的にもそういう評価なのね。

 ダンジョンに引きこもって、部下に全部やらせている感じだったもんなぁ。

 しかも実の弟を囮に使っているし。


「そうですか。

 それではなるべく魔物の群れには、近づかないでください。

 おそらく大規模な範囲攻撃を、仕掛けることになると思うので……。

 巻き込まれたら、命の保証できません」


 市を襲っている魔物の群れが、一体どの程度なのかは分からないけど、前回の襲撃よりも規模が大きいと考えた方がいい。

 となると、前回のように危険な魔物を狙って、各個撃破なんてまどろっこしい真似をしている余裕は無いだろうな。

 大量破壊兵器と呼ばれるような物でも、使わざるを得ないのかもしれない。


「む……そうか」


 マグエアルは少し引いたような顔をして、車から降りた。

 彼女も俺が生み出す武器のヤバさを、ある程度は理解しているのだろうな……。


「それでは、また会おう」


 そしてマグエアル達は、走って何処かへと行ってしまう。

 そのあまりの速さに、俺達は呆然と見送るしかなかった。

 陸上選手でもあんなに速度では走れないわ……。


 それから俺達は、ミニバンで戦況がよく見えるところまで移動する。


「前よりも群れの規模が大きい……?」


 前回の襲撃の時は、ゴブリンが中心で千匹前後の群れだったと思う。

 しかし今回はその倍の数はいるし、オーガや巨大コアラなど、大型の魔物の姿も見える。

 でも、遠くから見ただけでは、戦況はよく分からない。

 平地だから見通しも悪いしなぁ……。


「ちょっとドローンを飛ばしてみますか」


 で、ドローンによって上空から偵察してみると、人間と魔物による本格的な戦闘は行われていないようだった。

 まあ、あの物量に正面から挑むのは、自殺行為だわな……。


 だから人間達は、ロゼーカンナ市を囲む壁の内側に閉じこもり、壁の上から魔物達に攻撃をするという、籠城戦の構えをとっている。

 だが、巨大コアラや巨大イノシシが壁に接近しつつあるし、数は少ないが飛行型の魔物が市内に入り込んで、少なからず被害が出ているのが確認できた。

 壁を突破しそうな魔物は、俺が提供した爆発する矢でなんとか食い止めているけど、数に限りがあるから、陥落するのも時間の問題だろうな……。


 取りあえずドローンに積んでいた爆弾を、巨大コアラや巨大イノシシの頭上に落としておく。

 しかしドローンの積載量では数発が限界で、焼け石に水だろう。

 これでは効率が悪すぎる。


 俺はドローンを呼び戻し、「遠隔変換」で飛行させたまま、もう少し大型の物へと作り変えた。

 これで運べる弾薬の数も増やせる。

 その積み込んでいる弾薬も、特殊な物へと変更した。


 そしてドローンを魔物が密集している場所の上空へと移動させ、爆弾を投下させる。

 その爆弾は空中で分裂して、数百もの小型爆弾を撒き散らした。

 そう、それは悪名高きクラスター爆弾である。


 前世の世界では大量破壊兵器な上に、時には3割ほどの不発弾が残り、それを戦後に民間人が触って爆発させるという事故が多発した為、国際条約で禁止されている武器だ。

 だが、相手は魔物だし、不発弾も時間経過で消滅するように設定してあるので、ここは遠慮無く使わせてもらう。

 今は魔物の群れを殲滅しないと、1つの都市が滅びるかどうかの瀬戸際だからな。


 そんな訳で、地上では広範囲に、そして連続して爆発が生じた。


「うおぉ……!!

 凄ぇな、これ……!!」


「まだ、これだけの力を隠していたのか……!!」


 ドンガトさん達が驚いているけど、その気になればもっと強烈な攻撃も可能だ。

 他にもナパーム弾とかのヤバめな物で、群れ全体を炎に包むという手も考えたが、市の方へ延焼しそうなのでやめておいた。

 大型爆弾も爆風で壁が崩壊するなどの被害が出そうだし、同様にやめておく。


 まあ、戦車とかが使えれば、もうちょっと穏便にことを進めることができるような気もするけど、まだ操縦方法が分からないからなぁ……。

 左手の義手で接続すれば操れるけど、脳への負荷で長時間は使えないし……。

 結局、現状ではクラスター爆弾が、1番いいと判断した。


 このクラスター爆弾で大量の魔物を一気に倒せるが、さすがに1回の攻撃では殲滅できない。

 なので何度か、爆弾の投下を繰り返す。

 うん、この調子なら、魔物の群れはどうにかなりそうだな。


「空を飛ぶ奴が集まってきたわよ!」


 その時、エカリナさんが叫ぶ。

 確かにドローンへと、翼竜っぽいのが数体近づいてきている。

 おっと、コントローラ(操縦機)とカメラから見える地上の標的にばかりに集中していたから、気付かなかった。

 あのドローンは、空中戦ができるような仕様じゃないからマズイ!


 しかし、すぐ近くから響く銃声──。

 直後、飛行型の魔物が一体、墜落していく。

 おお、アンシーがライフルで狙撃してくれたようだ。


「アンシー、ナイス!」


「空の敵はお任せください」


「私もやらせてもらうわ!」


 それからエカリナさんも加わって、空の敵に対処してくれたので、俺は安心して地上へと攻撃を続けることができた。

 いつも応援ありがとうございます。

 次回はたぶん魔族サイドの話です。

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