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非人道兵器

 まさかコアラが、ドラゴンのように火を吐くのか!?

 それは所謂(いわゆる)、ブレス攻撃!!


 確かにコアラが食べるユーカリには引火性物質の成分が含まれており、よく自然発火を起こして山火事の原因にはなるらしいが……。

 そのユーカリを食べるコアラが火を吐くのも、道理ではある……って、地球のコアラは火を吐かないしっ!!


 ともかく火はヤバイ!!

 重度の火傷って、自然治癒は難しいからな……。

 異世界なら回復魔法はあるから、それでならば治すことは可能だろうけれど、エカリナさんもリーリアもそれほど得意ではないという。


 つまりまともにブレスを受ければ、全滅も有り得る。

 だからコアラのブレスを、なんとかして防がなければならないのだが……。

 しかしエカリナさんとリーリアは、魔法の壁を作って炎を遮断しようとしているようだけど、彼女達の呪文詠唱には時間がかかる。

 おそらく魔法の完成は間に合わないだろう。


 それならば、ここは俺が──!!


「はあぁぁぁぁーっ!!」


 俺は「変換」で、魔力から盾を作り出した。

 ただし、ただの盾ではない。

 縦横3m以上もある、巨大な盾だ。


 これでコアラのブレスを防ぐ!!

 そして盾が完成した直後、コアラのブレスが吐き出された。

 しかし──、


「グギュィ!?」


 俺の狙い通り、巨大な盾は炎を防ぎ切った。

 鋼鉄製だからな。

 短時間ならばどんなに高温の炎を吹きかけられても、溶け落ちることはない。

 まあ、左右や上部の隙間から、多少の炎は吹き込んでくるが、盾が大きいから直接俺達のところまでは届かなかった。

 ……ちょっと熱が来たので、その熱さから直撃した時のヤバさは実感できたけどな……。


 だが、これはコアラの攻撃を防御しただけだ。

 ここから攻撃に転じなければ、俺達に明日は無い。

 巨大なコアラに有効な攻撃となると……、


「これなら、どうだっ!!」


 俺は防御に使った大盾を「変換」の材料にして、とある武器を作り上げた。

 それは捕鯨用の(もり)──つまり捕鯨砲と呼ばれるものだ。

 火薬を使用する物ではあるが、火薬は銛を撃ち出す時と、銛が標的に突き刺さった時に体内で爆発させる時にだけ使うので、狙いを外しさえしなければ爆発で落盤を誘発するようなことは無いだろう。

 だからこの地下でも、安全に使える。


「発射っ!!」


「ミ゛ャアァァァァァー!?」


 撃ち出された巨大な銛が、コアラの腹部へ深々と突き刺さった。

 そして銛の先端に仕掛けられていた爆薬が、その体内で爆発する。

 これなら致命傷になるんじゃないかな?

 ただ、絶命するまでには、少し時間がかかりそうだ。

 魔物というか、巨大な動物の生命力って、(あなど)れないからなぁ……。

 もう2~3発、撃ち込んでおくか。


 そんな訳で、危機は去った。

 俺はコアラの死体を「空間収納」に仕舞い込んでから、次にパイプ椅子を出した。

 プロレスで、よく凶器として使われているものです。


「みなさん、休憩しましょう」


「では、どうぞお嬢様」


「え?」


 何故かアンシーが先に座り、その膝に俺は座らされた。


「この方が座り心地は良いでしょう?」


 それはそうだけど!

 太股が柔らかいけれど!

 だが、この子供みたいな扱いは、ちょっと不本意なのだが!


 で、戸惑っている俺に対して、


「嘘だろ……。

 森鬼をこうもあっさりと……。

 上位の冒険者でも、手こずるって聞くのに……」


 アルク達がドン引いていた。

 いや、ドンガトさんとエカリナさんは当然だという顔をしているけど、まだまだ俺の実力に対する認識の差があるようだな。

 でも、咄嗟に盾を作れなかったら、全員死んでいたからな?

 実際には言うほど楽勝ではない。


 こんなコアラのような強敵とあと何回も戦うのは、正直勘弁してもらいたいんだよな……。

 さすがに材料を使わずに巨大な盾を魔力だけで「変換」するのは結構消耗したし、そもそも次も犠牲無しで勝てるとは限らないからなぁ……。


「その……森鬼というのは、ダンジョンに出現するものなのですか?」


「いや、普通はその名の通り、森に棲む魔獣じゃよ。

 こんなところには、何者かが召喚でもしなければ、現れんじゃろう」


 ドンガトさんは、そう説明してくれた。

 となると、コアラが自然にダンジョンへ棲み着いた可能性は、かなり低いということだよな。

 つまり何者かの意図がこのダンジョンに介在しているのは、いよいよ確実という訳か。

 それならば、他にもコアラが戦力として召喚されているのかもしれないし、もっと強大な魔物だっているかもしれない。


 ……そんなの、いちいち相手になんかしてられないぞ。

 ちょっと方針の変更が必要だと思う。


「……誰か風を起こす魔法を、使うことができますか?

 できれば長時間持続する感じで」


 と、俺はエカリナさんとリーリアへ問う。


「私は使えるわよ。

 5分も持続しませんけど……」


 エカリナさんが使えるようだ。

 ならばいけるか。


「何をするつもりですの?」


 少々身も蓋もない悪辣な手段だが、自身の安全が最優先だ。

 ここは手段を選ばずに、使わせてもらおうと思う。

 それは前世の世界では、非人道的な兵器と言われていた。


「この階層に、毒ガスを流し込もうと思いまして」


 そう、生物のみを大量虐殺する為のもの──化学兵器である。

 ……魔物が相手なら、ちょっとくらいいいでしょ?

 いつも応援ありがとうございます。

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