ダンジョン探索も余裕です
それから俺達は、兵器の性能テストを重ねながら、ダンジョンの探索を続けた。
幸いにも……というか、テストの標的になる魔物には事欠かなかったんだが……これ、ヤバイよね?
「ダンジョンって、こんなに魔物が多いものなのですか?」
勿論ダンジョンが初めての俺でも、これが異常な状態なのは察しは付くが……。
そうでなければダンジョンから溢れた魔物によって、都市が襲撃される訳が無いしな。
「他の所は、こんなに多くはないわねぇ。
エルネスタちゃんの武器がなければ、私達は今頃全滅していたかもしれないわ」
と、エカリナさん。
やっぱりそうか。
つまり異常は続いていて、問題はまだ解決していないということだ。
原因はなんなのだろうねぇ……。
ん……また敵がきたようだ。
「アルクさん、銃を使ってみませんか?
あなただけ、まだ使っていないでしょう?」
今までは希望者に使わせていたけど、アルクだけは希望してこなかった。
しかし彼は、
「俺は……剣で最強を目指したいから……」
銃を使うことを拒否した。
うん、その気持ち、理解できるぞ。
「分かります。
剣は漢の浪漫で、魂ですよね」
俺はアルクの腰をポンと叩いた。
「……君は女の子だろ……?」
それは言わないお約束だよ。
「あ、あたしも分かるわよ!」
「え、そうなの?」
……リーリアは、俺に対抗しなくてもいいぞ?
間違っても、アルクには手を出さないから。
そもそも寝取られ展開とかクソだし、見ていて気持ちよくないからな。
しかしアルクの進もうとしている道は、簡単ではないぞ。
これからは剣で銃器などに対抗するという、おそろしく高い技術が必要になる。
何故ならば、遅かれ早かれこの世界で銃器は、大きく発展していくだろう。
その存在を知ってしまった人類は、俺が手を貸さなくてもいずれは自力で銃器を──あるいはそれ以上の兵器を作り上げるだろうから──。
そうなったら現在主流である剣などの旧式武器では、対抗できなくなるはずだ。
だけどそんな世界でも、剣士として生き残ることはおそらく不可能ではない。
俺のクロスボウに対して、剣で対抗した男もいたしな。
この異世界なら、銃弾を剣で斬るような存在がいてもおかしくないと思う。
だからアルクには、そんな英雄になってもらいたい。
「そういうことなら、いずれ最強の剣士に相応しい、最強の剣を作ってあげますよ。
だけどまずは、銃での戦い方をよく見て、どうやったら銃に勝てるのかを考えてください。
ここは私がやりましょう」
「そう……だな」
ということで、今回は俺が戦った訳だが……。
うん、もうゴブリン程度なら、簡単に排除できるわ。
実際ダンジョンの中は薄暗く、狙いを付けにくいはずなのだが、連射しなくても弾は当たるもんなぁ……。
やっぱり徐々に、感覚が鋭くなっている。
義手の力が身体馴染んでいるというか、浸食が進んでいるというか……。
ちょっと怖いが便利だし、考えたってもう手遅れだからな……。
気にしても仕方がない。
「さて、私はマッピング役に戻りますか」
襲撃してきたゴブリンを一掃した俺は、紙とボールペンを取り出した。
ボールペンは人に刺すことができるから、武器だとスキルが判定してくれる。
そして紙も、武器だと判定された。
うん、紙で指を切ることはよくあるし、紙製のナイフなんてものも存在するしな。
更に紙を製本した本の中には鈍器として使えるほど分厚い物もあれば、大量の本の下敷きになるという死亡事故だってある。
薄い紙だって、使い方によっては十分に武器となり得るのだ。
そんな訳でコピー用紙の束も、武器の一種として「変換」で作れるようになった。
素晴らしいかな、我がスキルのガバガバ判定。
そのペンと紙を利用して、地図を書くのが俺の役目だ。
本来は探索や戦闘は冒険者の仕事だから、俺はなるべく手を出さないようにする為に、地図を書いている。
「灯りをどうぞ」
「ああ、ありがとう」
ちなみにアンシーは、懐中電灯を持つ係だ。
これも鈍器として使えるから、武器判定だな。
そして3時間ほど探索した結果、地下への階段を発見した。
「よし、1度帰りますか」
「「「「え?」」」」
俺の提案を受けて、冒険者達は「これから本番なのに?」とでも言うかのように、驚きの声を上げた。
確かに彼らにはまだ余裕はあるし、ダンジョンに何日も泊まりがけで攻略することもあるらしいから、初日で帰るのはまだ早いと考えているはずだ。
だけど彼らに余裕があるのは、俺が提供した装備のおかげだろう。
それにそろそろ夜になる。
夜になったら魔物の活動も、更に活発化するんじゃないか?
そうなったら今までのようには、楽に進むことはできないはずだ。
それならば、1度市へ報告しに帰った方がいい。
そうしておけば、万が一の時には救援も期待できる。
そんな俺の説明を聞いて、
「確かにそうかもしれないが……」
どうやら彼らも納得してくれたようだ。
「では、この階段には、地雷を設置しておきますね」
「「「「え?」」」」
冒険者達は、再び声を上げた。
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