パーティー編成
見えてきたダンジョンの入り口は、石材のような材質で造られていてまさに遺跡といった感じだった。
入り口の周囲は蔦植物に覆われていたけど、ゴブリン達が出入りした際に邪魔な物を撤去したのか、案外綺麗なものだ。
まあだからこそドローンによって、空中から発見できたのだけどな。
植物で覆われていたら、もっと発見まで時間がかかっただろう。
で、先程倒したオーガやロゼーカンナ市を襲撃した巨大イノシシもここから出入りしたのだろうから、入り口は大きい。
高さ幅共に、10mくらいかな。
中の通路もそのくらいの広さで、奥へと続いていた。
「とりあえず、これを撃ち込んでみますか」
「な、何をする気なの……?」
俺は「空間収納」から、予め作っておいたロケットランチャーを取り出した。
それを見てリーリアやアルク達は引いている。
「安全確認ですよ。
ダンジョン内で、これが使えるのかどうかの確認です」
おっと、ロケットランチャーの重さは10kg近くあるのかな?
しかも細長い。
俺の小さな身体では、発射時に支えきれないような気がする。
こういう時は人任せだ。
「これ、撃ちたい人~?」
「ハイハイっ!!」
エカリナさんが勢いよく手を上げた。
ドンガトさんも手を上げようとしたが、彼女の勢いに負けて、その手は止まる。
さっきアームストロング砲を撃ったし、今回は遠慮してもらおう。
「じゃあエカリナさんにお願いします」
俺はロケットランチャーの使い方を、エカリナさんに教えた。
特に気をつけなければならないのは、発射時に反動を抑える為のバックブラストだ。
後部からガスなどが噴出して、撃ち出したロケット弾の反動を相殺する機能だ。
これのおかげで撃つ人間の負担は減るが、後方にいた人間がバックブラストに巻き込まれて死亡する事故もあるから、慎重にやらなければならない。
しかも後方で壁や地面が近くにある場合は、撃った本人も巻き込まれかねないので、その点も注意だ。
「後方を確認して──。
はい、発射ー!」
「おぉーっ!!」
発射されたロケット弾は、ダンジョンの入り口へと入り、そのまま奥へと進んでいく。
「すぐ、入り口の正面からどいて!!」
直後、ダンジョンの内部で爆発が生じ、爆風が外まで吹き出てきた。
ただ、その勢いはさほど強くない。
どうやら可燃性のガスに引火して、大爆発を起こすリスクは少ないようだ。
まあ、ゴブリン達が棲息していたのなら、ダンジョン内に有毒ガスが溜まっている可能性は低いと思っていたが、魔物だとガスが効かない可能性もあるから念の為な。
ともかくこれならば、火器がダンジョン内部でも使える。
それに──。
「大丈夫そうですね」
ダンジョンの内部を確認してみると、大きな破損は無いようだった。
石っぽく見える壁や床の材質が実際にはなんなのか分からないけど、ちょっとやそっとの爆発では崩れないようだ。
つまり爆発物も、中で遠慮無く使えるということになる。
それよりも問題なのは──、
「では、罠の警戒を頼みますね」
俺がシーフのトースに呼びかけると、彼はこくりと頷いた。
だから喋れよ!!
寡黙ってレベルじゃねーぞ。
アルクに確認したら、別に声が出せない病気とかでもないらしい。
幼馴染み達が相手なら、普通に会話をするそうだ。
何その重度の人見知り……。
だが、俺達の安全は彼にかかっている。
魔物の集団が行き来した通路に、罠などは仕掛けられていないと思う。
そんなものがあったら、魔物の方が先に引っかかっているだろうしな。
でも万が一罠に引っかかったら、俺達にとっては致命的だからなぁ……。
いくら近代兵器で無双できても、防御力に関しては限度がある。
たとえ防刃ベストやヘルメットなどで身を固めていたところで、落とし穴にはまって数mも落下すれば命に関わるし……。
そういう罠を事前に見抜く能力に長けたシーフの力が、ダンジョンの攻略では最も重要だと言える。
うん、ゲームとかで見たから、それくらいの基礎知識は分かるぞ。
それじゃあ、安全確認も終わったし、ダンジョンに入るとしようか。
罠を見破る役目のトースが先行し、その後ろを前衛であるアルクとドンガトさんが進む。
前衛の装備は、俺が強化しているとはいえ、剣や斧の通常装備だ。
全員が銃器では情緒が無いしな……。
そして男性陣に続いて、遠距離攻撃やサポート担当の女性陣が続く。
不本意ながら、俺も女性陣に含まれる。
で、殿は、後方を警戒するエカリナさんだ。
ちなみに彼女の武器は、本人の希望で連射式のクロスボウとなる。
本当は銃器を希望したんだけど、弾丸は俺しか作れないから、いざという時に矢が既製品でも流用できるものにした。
俺がいなきゃ無力……では、話にならないからな。
いや、クロスボウの規格に合わせる為に、矢も多少はカスタマイズする必要があるけれど、それは一般の武具屋でも加工できる範囲だし。
そして前衛と後衛に挟まれている俺とアンシ一は、前衛の体力を温存したい時や強敵が出現した時など、必要に迫られた時以外は手を出さないつもりだ。
全部銃器で倒していては、冒険者達の成長が無いからな。
護衛が弱いままでは俺が困る。
とは言え、必要に応じて色々な武器を使いこなしてもらいたいので、たまには銃器も使ってもらおう。
「試し撃ちしたい人~?」
トースが無言で手をあげる。
だから喋れよ!!
でも、あまり戦闘では役に立たないシーフに、銃器を積極的に使わせるというのは有りだな。
いくら俺が強化したものでも、シーフの標準装備であるナイフ程度では魔物相手には心許ないしねぇ……。
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