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効率を上げろ

「う……」


 目が覚めると、少し頭が痛んだ。

 魔力切れの後遺症らしく、二日酔いみたいな感じだ。


 ん……作り出したナイフが消えている?

 任意で無効化するという能力が、発動したという訳か。

 できれば望んだ時間や、特定の条件で発動するのかを試したいところだけど、今は魔力切れが怖い。


 検証はもう一眠りしてからにしよう。

 外はまだ暗い。

 俺はベッドに潜り込んで、目を閉じた。

 意識はすぐに薄らいでいった。




 朝──。

 起きたら体調は戻っていた。

 魔力は回復したようなので、能力を使うことについては問題なさそうだ。

 なので外に出て、材料を集めてみようと思う。


 俺の住んでいる家……というか離れは、本邸のある敷地の端っこに建てられていて、隔離されているような状態だ。

 その離れから出れば、すぐ近くに森があった。

 ここは大都会ではなく、田舎にあるからね。

 我が家は男爵家だけど、しがない田舎貴族という訳だ。


 俺は森に入り、材料を物色する。


「おっ……これが良さそうだな」


 それは木の枝だった。

 ただ、太さは5cm、長さは50cmほどもある。

 それが嵐か何かの理由で折れ、地面に落ちていた。


 その枝を拾い上げてみたけど、女の子の細腕の所為か、ちょっと重く感じる。

 そして俺はその枝を能力の材料として、武器の形へと変換してみた。


「うん……!」


 成功の感触。

 俺の手に握られていた棒は、木刀に姿を変えていた。

 やはり無から武器を生み出すよりは、魔力の消費は小さいようだ。


 そしてこの木刀から、今度は鉄パイプに変換してみる。


「できた……!」


 持っていた枝が、重く冷たい鉄の感触へと変わっていた。

 しかし成功はしたけど、材質がまったく違う所為か、ごっそりと魔力を消費した感覚がある。

 たぶんこれ以上能力を使うと、また気絶するな……。


 それでもこの鉄パイプから剣に、剣から別の物へ──と、段階を踏んで武器のグレードを上げていくことは、可能だということが分かった。

 最終的には、巨大戦闘ロボも夢ではないだろう。

 ただ、効率は悪いかもなぁ……。


 おそらく複数の鉄パイプとかを作って、それを材料にして変換した方が効率よくグレードが高い物を作ることができるだろう。

 1本の鉄パイプから剣を作るよりも、3本の鉄パイプから剣を作る方が、魔力の消費は少ないはずだ。

 

 しかしいちいち木の枝から変換して材料を作るのでは、数を揃えるのには時間がかかる。

 トータルで消費する魔力も、馬鹿にはならない量になるはずだ。

 それならば普通に鉄鉱石などを大量に買って、それから変換した方が楽かもしれない。


 その為には金が必要だ。

 作った武器や防具を売って、資金を稼ぐかな?


 とはいえ、まだ子供の俺が大金のやりとりをするのは、周囲に怪しまれる。

 最悪、力尽くで奪われるかもしれない。

 まずは俺自身を守れるだけの、強い力が必要か……。


 そんな訳で、まずは今生み出せる範囲の装備で、自身を強化させることを優先させる。

 幸いこの世界には「冒険者」という、魔物を倒す職業もあるし、その真似事で実戦経験を積みながら、能力を鍛えていくのもいいだろう。

 

 ……真似事というのは、年齢的にまだ正式な冒険者になれないからだ。

 実際に俺はまだまだ子供で、しかも女の子だ。

 まず許可は下りないだろうなぁ。

 

 いずれにしても、準備は入念にしておかないと、あっさり死にかねない。

 準備期間をしっかりとって、様々な事態に対応できるように備えよう。

 

 そして翌日から俺は、早速装備の製作に取り掛かる。

 取りあえず鉄パイプの数を揃えて、それから変換するつもりだったけど……。


「おや……?」


 新しく作った鉄パイプを見て、違和感を覚える。

 そこで俺は、神様から与えられたもう一つの能力、「空間収納」の中に入れていた昨日の鉄パイプを取り出した。


「やっぱり短いな……」


 元になった素材の差か、それとも俺の能力が未熟な所為か、完成した物の品質にばらつきがあるようだった。

 これだと将来武具を量産して売る為には、ちょっと問題があるかも……。

 大量生産、大量販売をする為には、品質が一定じゃないとクレームの原因になるし、売値(うりね)にも影響する。


 特に武具という命のやりとりの時に使う物の性能が安定していないのでは、信頼して使ってもらえない。

 結果的に売れなくなるのでは困るぞ。


 今後は品質を一定にすることも意識して、変換作業を行った方が良さそうだ。

 たぶん俺の認識も、かなり影響していると思うんだよね。

 実際、ナイフを生み出そうとして出来上がったのが果物ナイフだったように、俺が具体的にイメージして作らないと、能力の方で勝手に曖昧だった部分を決めてしまうようだし……。


 だから俺がしっかりとしたイメージをする必要がある訳だけど、その為には本物を見たり使ったりして、それのことを深く理解しておいた方が良いだろう。

 だから作り出した武具を、実際に使ってみる機会を増やしたいところだが……。


 それならばやっぱり、冒険者の真似事をして、実際に生み出した物の性能を試しながら、能力を伸ばしていくのが1番効率が良さそうだ。


 そんな訳で当面の間は、森で狩りをすることを目標に、活動することにした。

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