ダンジョンへの道
夕方──ロゼーカンナ市の庁舎に来た。
新たにダンジョンを発見したので、その報告をする為だ。
「何か質問でも?」
俺の来訪を受けて、コルニリカは戸惑った表情を浮かべた。
まあ、依頼を受けた昨日の今日だからな。
勘違いも仕方がない。
「ダンジョンを見つけてきましたよ。
これ、地図です」
「ええっ!?」
コルニリカは血相を変えて地図を確認する。
「これは確かに……!」
「報酬の家の方は頼みましたよ」
「そ、それは勿論。
改修を急がせますよ」
これで住むところは確保できた。
しかし問題は終わっていない。
「これからこのダンジョンを、どうするつもりなのですか?
入り口付近の魔物の数は、現時点だとあのゴブリンの群れに比べたら大した数ではありませんが……。
必要ならダンジョンごと破壊することも可能ですよ?」
地中貫通爆弾を落としたり、時限爆弾を仕掛けたりと、やりようは色々とある。
ただ、コルニリカはいい顔をしなかった。
「……それは最終手段ですね。
ダンジョンを上手く管理すれば、市の利益になりますから……」
まあ、ダンジョンに眠る財宝や、魔物からとれる素材は欲しいだろうな。
「……となると、冒険者に攻略させる……ということになるのですか?」
「そうですね……。
あのゴブリンの群れを操っていた何者かは、ダンジョン内に棲息していると推定されます。
冒険者達にそいつを倒してもらうのが、一番いいと思います」
「当然、そいつを倒した者には、報酬は出すのですよね?」
「ええ、考えています」
そういうことなら俺も、武具の性能テストを兼ねてダンジョンに挑戦してみようかな。
勿論、護衛の冒険者達も連れて──だ。
「それでは、もうダンジョンに入ってもいいんですよね?」
「え、あなたが行く気なんですか!?」
「そうですね。
そもそもダンジョンは人の手が入っていない森の中にありますから、簡単には辿り着けないでしょう。
もしよければ私達が先行して、道を作っておきますよ」
「道を!?」
できると言えばできるな。
むしろ人目の付かない今の内なら、重機やチェーンソーなどが使える。
邪魔な草木を伐採して、簡易的な道を作ることくらいなら、難しくないと思う。
「数日あれば可能ですね。
その間に冒険者達を集める手配や、報酬などについての検討を進めておいてください」
「そんな馬鹿な……」
コルニリカは愕然とした顔をする。
まあ、道を作るなんてことは、本来は国とかの仕事だからな……。
それを個人でやることが、信じられないというのも分かる。
俺だって前世のままだったら、自分で道なんて作ろうとは思わなかった。
だが、今の俺の能力ならば可能なので、それは活用したい。
「その代わり、ダンジョンには他の人達よりも先に入りますよ。
そこで得た物の所有権は、私に……ということでどうです?」
「……ああ、ダンジョンの所有権さえ主張しないのであれば、構わないですよ……。
有用な物が見つかったら、是非とも我が市に売ってください」
「分かりました」
そんな訳で、話は纏まった。
そんな訳で翌日から、ダンジョンまでの道を切り開く作業を始めることになった。
まあ俺は肉体労働には向かない貧弱さなので、重機の操作が必要な時以外は現場監督だけどな。
取りあえず連れてきた冒険者達に、作業を任せる。
まずドワーフのドンガトさんと、エルフのエカリナさんにチェーンソーを持たせて、木の伐採を頼んだ。
昔のホラー映画のイメージで、これも俺にとっては武器だ。
で、エルフは自然破壊を嫌うイメージだったけど、この世界のエルフはそうでもないのか、それともエカリナさん個人が特殊なのかは分からないけど、ドンガトさんと同様に珍しい道具が好きらしく、自ら使いたいと申し出た。
「硬い物に刃が当たると跳ね返って危ないので、気をつけてくださいね……」
実際、チェーンソーで自分の身体を切ってしまうという事故は、たまに起こるからねぇ……。
「おう、任せておけ!」
「そんなヘマはしないわよ!」
ノリノリのようでなにより。
あと、アルク・リーリア・トースの幼馴染み3人は、雑務と周囲の警戒だ。
大きな音を立てれば、ダンジョンの方から魔物が近づいてくるかもしれないし。
そんな襲撃に備えて、俺専属の護衛として同行しているアンシーに、ガトリング砲とアームストロング砲の使い方の指導をしている。
これらは旧式の物だから単純な構造をしているし、扱うのはそんなに難しくないはずだ。
これで敵が来ても、一網打尽だぞ。
「なるほど、理解しました」
アンシーもすっかり兵器の扱いが上手くなったなぁ。
戦うメイドさんなんて、フィクションの中だけの存在だと思っていたぜ……。
「来たよ!
ゴブリン、複数!!」
その時、リーリアの声が上がった。
早速アンシーの出番だな。
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