ダンジョンを見つけよう
さて、コルニリカには俺が協力する条件として、俺が売った物を犯罪や侵略には使わないようと提示した。
真っ当な人間にとってはなんでもない条件だろうが、コルニリカは子爵家の人間だ。
その地位を大きく左右する武力を欲するのは、当然のことだろうからなぁ……。
「……それは勿論です」
コルニリカは笑顔で答えた。
一瞬表情が強ばったし、間もあったけどね……。
まあ、面と向かって「悪用するな」と言うのは失礼な話なので、内心ではムッとしていた可能性もある。
今は嘘は吐いていないと、彼を信用することにしよう。
まあ……どのみち悪用しようとしても、できないようには設定して作るけどな。
それが不満なら、俺は取り引きをやめて、このロゼーカンナ市から出て行くだけだ。
そちらの方が打撃になると、真っ当な損得勘定ができることをコルニリカには期待したい。
「では、協力させていただきます」
さあ、これから忙しくなりそうだ。
いや、まだ話は終わっていないな。
「それと……家を探しているのですが、どうにかなりませんか?
護衛や商品開発の技術者も雇うので、できれば彼らが住むスペースもあった方がいいのですが」
護衛はすぐ近くに住んでいた方がいいし、どうせドンガトさんも俺が作った物を分解して研究したいだろうから、それはあまり人目に触れないようにした方がいい。
だからその辺のアパートとかでは都合が悪いので、できれば大きな一軒家が希望だ。
「家ですか……。
それならば我が家で所有している古い家があるので、それを改装すれば……。
半月ほど待ってもらえるのならば、引き渡すことは可能でしょう。
これでダンジョン捜索の報酬ということでどうでしょう?」
ドローンでの空中捜索……その代金が家一軒か。
貰いすぎのような気もするが、この世界では替えの利かない能力に対する対価としては妥当だろうか。
俺のドローンを使わなければ、おそらく数十人がかりで何十日もかけてやる作業だろうし。
それが俺1人で、しかも早ければ即日で結果を出せるかもしれないのだから、それだけの価値はあるのだろう。
「そうですね。
ダンジョンが発見できれば、それでお願いします。
発見できなければ、相場の代金を分割で支払うということでどうでしょう」
どのみち家は譲ってもらう。
これでコルニリカとしても、損は無い取り引きだろう。
「では、そのように」
こうして大まかな商談はまとまった。
納品はルエザリクさんの店を通すので、細かい金額はこれから詰めていくけど、それはルエザリクさんとコルニリカの2人に任せよう。
まあ、俺が作る物は特殊な物でもなければ、元手がほぼかからない。
だから何も法外な価格設定で暴利を貪ろうとは思わないし、適正価格であればそれでいい。
そんな訳で、俺は2人の話し合いには口を出さない。
でも暇だなぁ……。
帰っちゃ駄目?
家が手に入るのは半月後くらいなので、それまではルエザリクさんの家に泊めてもらうことになった。
商談の翌日──。
「うみゅ……」
また、圧迫感で目が覚める。
アンシーに抱きしめられて寝るのはいつものことだが、今日はアリサにも挟まれていた。
なんか俺と一緒に寝たいと、駄々をこねたので……。
そんな訳で、ここ数日は3人で寝ていることが多い。
まあ、アリサの相手は、そんなに苦ではないけどな。
小さい子供の相手は、妹で慣れている。
クレア……元気にしているかな……?
両親のことは見限ったが、妹は未だに可愛いと思っている。
だからあのような別れ方になったのは、ちょっと心残りだった。
アリサの相手をしているのは、その代償行為という側面もあるのだと思う。
「うう~ん、行っちゃ駄目……」
俺が身動ぎをしたら、アリサが浅く覚醒したのか俺の頭を抱え込んだ。
洗濯板を顔に押しつけてくるのはやめたまえ!
胸については、あまり人のことは言えないけど、さすがに俺の方がある。
そんな俺と比べるとアリサのはゴリゴリだから、ちょっと痛いんだよ……。
でも、おかげで目が完全に覚めた。
さあ……起きて、ダンジョンの捜索を始めるか。
それから俺は、都市を囲む壁の外へと出た。
人目には付かないように市から離れた場所まで行き、そこでドローンを離陸させる訳だ。
そこにはアンシ一は勿論だが、護衛として冒険者達も同行している。
というかドンガトさんが、またドローンを見たいというので……。
で、今回使うのは、飛行機型のドローンだ。
飛行速度が速く、更に航続距離も長いタイプだな。
実に数十kmは、空を飛び続けることができる。
ただ、電波が届く距離には限界があるので、俺達も車で移動しながらドローンを操作することになる。
なおドローンの操縦に関しては、前回である程度操縦方法を理解したけど、今回使うタイプはまだよく分からない部分もあったので、義手の能力で予習済みだ。
短時間の使用だったから大したことはなかったが、やっぱり頭が痛ぇ……。
それでも意図的に、ケーブルの出し入れができることが分かっただけでも意味がある。
「それじゃあ、打ち上げるので、少し離れていてください」
ドローンはカタパルトを使って、クロスボウのように空へと打ち上げる。
「3、2、1──発射!!」
「「「「おぉ~っ!!」」」」
パシュという音と共に、ドローンが空高くへと打ち上げられた。
そしてカタパルトによる射出の勢いが弱まると、あとはドローンが持つ自前のエンジンの力によって飛んでいく。
さあ、見失わないように車で追いかけるぞ。
で、ドローンをどこへ向けて飛ばしたのかというと、集中的に捜索する地域はもう決まっている。
それは俺達が車で通ってきた道の付近だ。
あの道でゴブリンに遭遇したし、ダンジョンと関係がある可能性は高いと思う。
赤外線カメラで地上を見て、生物の──魔物の反応が多い場所があれば、その付近にダンジョンがあるはずだ。
前世の世界でも、この手段で害獣を見つけて駆除するという手段が使われていたから、今回のケースにも有効だと思う。
事実5時間程度で、該当する場所を特定することができた。
その場所を空撮して……さすがにプリンターは作れないから、普通に紙へと書き写す。
結構正確な地図ができたんじゃないかな?
この地図を提出すれば、コルニリカからの依頼は終了だ。
これで報酬の家も、無料でゲットだぜ!!
いつも応援ありがとうございす。