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戦い終えて

「ん……?」


 妙な圧迫感で、俺は目を覚ました。

 俺は身体(からだ)を横向きにして、寝ていたようだ。

 そんな俺の顔は、左右から……というか上下から挟まれている。


 これ……下は弾力はあるし柔らかいけど、上と比べれば硬いとすら言える。

 いや、上が柔らかすぎるのか。

 これは──っ!!


「あの……アンシー?」


 俺はアンシーに、膝枕をされていた。

 そんな俺の顔の上には、アンシーのたわわな胸が載っている。

 彼女はうたた寝をしているのか、その所為で上半身を前に倒した結果、こんな幸せサンドイッチが生み出されたらしい。


「はっ……坊ちゃま。

 お目覚めになりましたか!?」


 君もな?


 って、そうか……。

 俺は気絶していたのか……。

 まだ頭は重いけど、痛みは消えているようだ。

 

 義手から出たケーブルは……よかった消えている。

 ドローンのコントローラーへの接続は、俺が気絶したことで自動的に解除されたようだ。

 あのままだったら、沢山の人に目撃されていたかもしれないからな……。


「──って、イノシシはっ!?」


 確か1匹だけ、撃ち漏らしたはずだ……。


「大丈夫です。

 冒険者や市の警備隊が、対応しています。

 先程爆発が見えたので、坊ちゃまが出した爆発する道具か矢で、おそらくもう……」


 ということは……。


 俺は上半身を起こして、周囲を見渡す。

 ここはまだ、壁の上だった。

 そしてここから見える遠くの壁は、一部が崩壊している。


「壁が……!」


 やはり巨大イノシシによって、壁が破壊されてしまったか……。

 ということは敵の侵入を許し、市街戦が行われたということだろうか?

 たぶん犠牲者も出ているよな……?


「くっ……!」


 俺がもっと能力を使いこなしていれば……。


「坊ちゃま……。

 あまり責任を感じるものではありません」

 

 悔やむ俺を、アンシーが背後から優しく抱きしめてくれた。

 おふっ……。

 何やら後頭部が、柔らかいものに包まれたんだけど。


「坊ちゃまのご活躍で、被害は最小限に抑えられたのです。

 そんな坊ちゃまが責任を感じていては、役に立たなかった我々大人の立場がありません」


 確かに俺の能力が生み出した武器が無ければ、あのイノシシを倒すのは難しかったかもしれない。

 だけどそれでも、もっと上手くできたのではないか……と思ってしまうんだよなぁ……。


「坊ちゃまは、沢山の人の命を救いました。

 そのことを誇りましょう」

 

 そうなのかもしれないけどさぁ……。

 でも今後俺は、身を守る為にまた人を殺すことになるかもしれない。

 その償いという訳じゃないが、救える人間はできるだけ救いたかった。

 そういう意味でも、今回の結果は必ずしも満足がいくものではないんだよ。


 どのみち、すぐに割り切れるようなものではないな……。


「とにかく坊ちゃまは無理をしすぎです。

 今は休んでください」


「……はい」


 俺は大人しく、頭をアンシーの膝の上に戻した。


 暫くして──、


「やあ、大活躍だったね、エルネスタ嬢」


「ルエザリクさん。

 そちらは被害は無かったんですか?」


 商人のルエザリクさんがやってきた。


「ああ、魔物の掃討は終わったようだよ。

 私の店がある区画も被害は無かった」


「それはなによりです……」


 逆に言えば、被害にあった区画はあったんだな……。


「しかし、市に来て早々に、大変なことになったなぁ……。

 君達も今晩は我が家に泊まるとして、この騒ぎでは明日からの部屋探しは、ちょっと難しくなるかもしれないぞ……」


「我らを泊めてくれるのですか?」


「勿論、構わないよ」


 最悪、ルエザリクさん()の庭でも借りて、車中泊をしようかと考えていたところだから助かるが……。

 しかし、今後住む家なぁ……。

 今回の騒動で家を失った人もいるだろうし、空き家が不足するかも……。

 そうなると暫くの間は引っ越し先が見つからず、居候(いそうろう)することになりそうだ。


 ただ、壁や家の修繕などで、今後は建築業界の動きが活発になるだろう。

 そうなれば大工道具とかの需要も増えるだろうし、武器としても使えるようなものなら俺が量産して供給してもいいな。

 商売のチャンスだけはある。


「そこで市のお偉いさんが、君と会いたいと言ってきている。

 上手くいけば、家も融通してくれるかもしれないよ」


「え?」


 市のお偉いさん?

 今回はかなり派手に暴れたから、俺のことが耳に入ってもおかしくないけれど……。


「話が早すぎませんか?」


 だけど普通は、俺の身辺調査をするとか、もうちょっと時間をかけてから接触してこない?

 俺ってまだ市への入場手続きすらも終えていない、正体不明の余所(よそ)者なんだぜ?


「それなんだが、市への入場手続きをしていた役人がいただろ?」


 ああ、ゴブリンの襲撃という緊急事態に対して、入場手続きの一時的な免除や、冒険者への協力要請をしていた人だな。

 上司の指示を仰がずに対策を即決していて、有能というか、現場の権限が強いんだな……とは感じていたけど……。


「あれ、市長であるロゼー子爵の三男なんだよ」


「なるほど。

 会うのはその人ですか」


 早速権力者との繋がりができたけど、これが吉と出るか凶と出るか……。

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