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一網打尽を狙う

 更に複数の大型イノシシが、こちらへと向かってきている。

 あれをすべて食い止めないと、ロゼーカンナ市を囲む防壁は崩壊し、この都市は滅びることになるのかもしれない。


 先程のようにイノシシの進路へ地雷を設置する手段は、地雷を踏まれないと効果が無いので確実ではないだろう。

 地雷原を構築すれば確実性は増すけど、イノシシ達が何処に突っ込んでくるのか分からない今の時点で、無軌道に10個も20個も作るのは無駄だ。


「リーリアさん、アルクさん達を呼んできてください!

 急いで!」


「えっ……う、うん」


 俺だけでは対処しきれないので、協力を要請する。


「アンシーは、イノシシを操っているゴブリンの排除を」


「はい」


 たぶんゴブリンを倒してもイノシシは止まらないけれど、そいつらを倒せばこちらの反撃に対して、臨機応変に対応されることは防げるからな。

 とはいえ、相手も学習しているのか、銃や弓で確実に倒せそうな距離には、迂闊に近づいてこようとはしなかった。

 

 このまま俺達がいる場所の反対側にある壁まで移動されたら、ぶっちゃけお手上げだぞ……。

 この都市は広い草原の真ん中にあるので、全方位から同時に攻撃することが可能になっている。

 俺自身の能力が効力を及ぼすのは精々20~30m程度だから、設置型の罠では対処できなくなるんだよなぁ……。……。

 

 だから能力が届くところまで移動する必要があるんだけど、残念ながら俺の足はイノシシよりも確実に遅い。

 仮に市の反対側へ行く場合、直線距離で2kmはあるから、俺の足では数十分はかかる。

 どんなに急いでも間に合わないということだ。


 だから可能な限り、イノシシはここで殲滅する! 


「エカリナさん、イノシシが左右に分かれたら、その進行方向にこれを撃ち込んでください。

 イノシシに直接当てられるのならそれでもいいですが、取りあえずは遠くに行かないようにするだけでもいいです。

 ああ、衝撃を与えると爆発すると思うので、気をつけてくださいね」


「ええ、分かったわ」


 エカリナさんに渡したのは、矢の先端に爆薬がついたものだ。

 昔映画で見たことがある武器だが、着弾と同時に爆発する。

 現実だとどの程度の威力が出るのか、それはよく分からないけど、だから作る際には爆薬の量を増やすイメージで「変換」した。

 これで進行方向に爆発を起こせば、さすがにイノシシも立ち止まり、進路を変更するだろう。


 さあ、俺もやれることをやるぞ。

 まず、地雷原を構築することは、不発に終わる可能性を考えると効率的ではない。

 もっと短時間で、かつ広範囲に影響を与える対策をとらなければならない訳だ。


 それならばコストは安く、材料がほとんど必要無い原始的な武器がいい。

 それならば短時間で、広範囲に設置できるはずだ。

 勿論、威力は高くなければならない。


 その条件に合う物は、武器の概念を拡大解釈すれば存在する。


「来たっ!!」


 おっ、イノシシ達がこちらに突っ込んできた。

 エカリナさんの攻撃によって進路を塞がれた何体かが、こちらへと真っ直ぐに突っ込んでくる。


 それなら一気に──!!


『プギャァァァァーっ!?』


 よし、ハマった。

 俺が作った罠は単純だ。

 地面を「変換」して土を消すことによって、落とし穴を作ったのだ。

 その底には、鋭く尖った杭も立ててある。


 そこにイノシシのような巨体が落ちれば、落下の勢いと自重によって杭に深く突き刺さるだろう。

 まあ、あのイノシシは野生動物ではなく、魔物の(たぐ)いなのかもしれないので、この程度では死なない可能性もあるけど、少なくとも身動きだけは封じることはできるはずだ。


「連れてきたわよ!」


 丁度その時、リーリアが男衆を連れて戻ってきた。

 よし、彼らには落とし穴に落ちたイノシシに、トドメを刺してもらおう。


「あなた達には、これを使ってもらいます」


「これは……?」


 俺は手榴弾を出す。


「こうやってピンを抜いて、投げつけます」


 そして使い方を実演して見せる。

 ただ、俺の貧弱な肩では、落とし穴のところまで届かない。

 壁の近くで爆発して、ちょっと焦ったぜ……。


 だが、男達の肩なら、もっと遠くまで投げることができる。


「おおお……!?」


「これで穴に落ちた奴らを倒してください。

 近づいてくるイノシシやゴブリンを、これで追い払ってもいいです。

 でも、ピンを抜いた後で手放すタイミングを間違えると、死にますので気をつけてくださいね」


「お、おお……」


 手榴弾をダース単位で渡された男衆、ドン引き。

 手榴弾の威力もそうだが、こんな高威力の物をポンポンと使い捨てることができる俺にも引いているのだろうな……。

 まあ、今は気にしている場合じゃないが。


「エカリナさんは、引き続きイノシシの牽制を。

 余裕があれば、穴に落ちた奴を狙ってください」


「ええ……でも、出番は無さそうね」


 残りのイノシシもこちらに突っ込んでくるのならば話は早いのだけど、そう上手くはいかない。

 さすがにイノシシを操るゴブリンにも、エカリナさんの矢が届かない位置まで後退して、大きく迂回するだけの知恵はあるようだ。

 俺の地雷や落とし穴は、攻撃が来る場所の正面に俺がいなければ、構築することはできない。

 つまり先回りすることが必須。


 だけど車は整備されていない都市の、狭く曲がりくねった道──しかも人が沢山いるところでは走れない。

 自転車なら通れるだろうけど、やっぱり時間はかかるだろうし、イノシシの攻撃には間に合わないだろう。

 

 この壁の上を走って行ければいいんだけど、壁に登ってきた外敵の移動を阻む為なのか、所々に数mほどの段差が作られていた。

 一応1人ずつ通れる程度の梯子(はしご)はあるようだけど、自転車であれを乗り越えるのは無理だな……。


 もう、飛んでいくくらいしないと間に合わないが……。

 イチかバチかで、ドローンでも使ってみるか!?

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