表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/147

それを生み出すスキル

 俺は数日前に、前世を思い出した。

 そしてこの世界へ生まれる前に、神に会っているということも。


 その時の状況は、次の通りだったと思う。




 俺はつまらない人生を送っていた。

 色んなしがらみに縛られ、好きなことは何もできなかったからな……。

 それを後悔する頃にはもう、生き方を変えることができなかった。

 三つ子の魂百まで……と言うけど、大人とはそういうものだ。

 

 この生き方は、死ななきゃ治らないな……と。

 そう諦観しながら、人生を終えた。


 そして次に気がついた時に、俺は宇宙にいた。

 宇宙空間を(ただよ)っていたのだ。

 

「え……何ここ……?」


 そんな俺の独り言に、何者かの答える声が聞こえる。


『ここは何処でもない場所。

 何処かへ至る為の、通り道のような場所──』


 声は聞こえるが、姿は見えなかった。


「誰だ……?」


『神……だと言えば、信じますか?』


 それはちょっと唐突すぎるな……。

 だが、この宇宙空間を見る限り、否定する材料も無いんだよなぁ……。

 否定した先にあるのは、俺の頭の方がおかしいという現実だけだし……。

 正気で宇宙遊泳なんてできないわ……。


「分かりました。

 信じます。

 それで……俺に何の御用ですか?」


 一応相手を神と認めたのだから、口調を少し改める。


『あなたを私の世界に、転生させたいと思います』


 なんだか漫画や小説とかで、よく聞くような話が飛び出してきたぞ。


「それは異世界……ということでしょうか?

 一体何故(なぜ)……?」


『その世界は少々停滞しているので、活性化させる為のカンフル剤として、特殊な能力を付与したあなたを放り込んで見よう……ということです。

 そしてあなたは、世界を滅ぼすとか、破滅的な結末を招かないのであれば、何をしても自由です』


 うん……?

 それはある種の社会実験みたいなものか?

 俺をその材料にする……と?


 大丈夫かな、この神様?

 あまり善の存在だとは感じないけど、神様って元々そういうものか……。


 いずれにしても、これは断れないのだろうなぁ……。

 断ったら、この宇宙空間を永遠に彷徨(さまよ)うなんてことにもなりそうだし……。

 ここは素直に従って、少しでも俺の有利になるように、交渉した方がいいな……。


「その……特殊な能力……とは?」


『それはあなたの希望を、ある程度反映したいと思います。

 どのようなものがいいですか?

 今回は世界に影響を与えるのが目的なので、かなり融通がききますよ?

 ただし、能力によってはあなたの不利に働く場合もあるので、よく考えてください』


 となると、かなりふっかけても良い訳か。

 じゃあ……。


「俺が想像したものを、自由に生み出せる能力というのは……?

 俺がその構造を知らなくても……なんなら現時点では実用化されていない未来の物でも、想像の穴を補って実用にたるレベルで再現できる能力……とか」


『ふむ……さすがになんでも……は、無理ですね。

 もっとジャンルを絞ってください。

 例えば薬品関連だけとか、印刷技術関連だけとか』


 う~ん……なんでもってのは無理か。

 でも1つのジャンルだけなら、いけるんだな。

 それなら……好きな食べ物を生み出せる能力……とか?

 生み出した食品を売るも良し、健康食品を(みずか)ら食べて、健康な身体(からだ)を維持するも良し……で、悪くはない。


 だけど未知の世界で生きて行く上で、その能力は俺の身を守れるのか?

 敵に襲われたら、あっという間に命を失う。

 それならば、ある程度戦える能力の方がいいよな……。


「では、軍事関係はどうでしょう。

 武器や防具で、自分の身を守れるようになりたいです」


『ふむ……よろしい。

 それでいきましょう。

 ただし、人間1人の魔力で生み出せる物には、限界があります。

 あなたが能力を鍛えて効率的に使えるようになるのと、魔力を増やす努力をしなければ、完全に使いこなすことはできません』


「そうですか……」


 ようするに、ゲームみたいにレベルをあげろということか。

 

『そうだ。

 無からすべてを生み出すのではなく、材料などの代償を用意すれば、使用する魔力が少なくても済むようにしておきましょう。

 これならば最初から、それなりのものが生み出せるはずです』


「ご配慮、ありがとうございます。

 あ……それと、特定の条件下で、生み出した物を無力化できますか?

 たとえば誰かに渡した武器が、俺の意に沿わない使われ方をした時とか……」


『ふむ……面白い使い方ができそうなので、細かく設定できるようにしましょう。

 ただし設定が甘いと、想定外のタイミングで無力化されるなんてことも有り得ますよ』


「分かりました。

 それでお願いします」

 

『では、赤ん坊から初めても、その能力は使うことはできないでしょうから、その能力を使うに見合った身体へと成長した頃に、記憶が戻るようにしましょう。

 その時には、あなたが自由に動きやすい環境になっていることでしょう。

 あと、サービスとして、空間収納のスキルもセットに入れておきますね』


 その次の瞬間、周囲に見えていた星が、流星のように流れ出した。

 いや……これは俺の方が、高速で動いているのか?

 その速度は、徐々上がっていく。

 まさに光に迫る速さだ。

 

 え、物理的に異世界というか、別の星へ移動している!?

 光の速さでも、一体何百年かかるのよ!?

 そしてそんな時間の流れに、人間の意識が耐えられるはずも無く……。

 俺はいつしか思考を放棄した。


 


 そして俺は、この世界へと転生した訳だが……。

 

 これはあれか……。

 女の子にTSすることで、俺が自由に動ける状況にしたということか……!

 確かに俺のことを気味悪がった親の干渉は、まったく無くなったけどさぁ……。

 もっとやりようはあっただろ!?


 まあ……なってしまったものは仕方がない。


「……取りあえず、能力を確認してみるか」


 親の干渉が無くなった今、自分の力だけで生きていかなければならなくなったとも言える。

 現状では衣食住だけは保証されているけど、それもいつまで続くか分からないからな……。

 能力を活用して、不自由なく生きていく為の準備はしておくべきだ。


 まずは……いきなりミサイルとか生み出すのは無理だろうから、ナイフ程度から初めてみようか。


()でよ、ナイフ!」


 俺が念じると、目の前に淡い光が現れ、その光の中で少しずつナイフの形が現れていく。

 あ……あまり具体的に考えていなかったけど、これは果物ナイフだな。

 サバイバルナイフとかには馴染みが無かったから、普段の生活で見知ったものが出てきたのか。


 つまりもっとイメージをしっかり持たないと、望んだ物が出てこないということに……。

 それでも生み出すことには成功した。

 次は無効化する設定を──、


「あ……?」


 急激な目眩が俺を襲う。

 あ……これ、魔力切れってやつ……?


 俺の意識はぷっつりと途切れるのだった。

 ブックマーク・☆での評価・誤字報告・いいね・感想をいただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 鍛冶師ぶちぎれ魔法じゃねえか
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ