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迫る脅威

「いいぞ、そのまま!」


 助手席に乗っている俺は、運転しているアンシーに指示を送る。


 その指示を受けて、アンシーはアクセルを踏む。

 ミニバンは速度を上げるが、舗装されていない道なので激しく車体が揺れた。

 道は真っ直ぐだしそこそこ広いので、道を外れて事故ることは無い……と思う。

 

 多少の危険に目を(つぶ)ってでも、今は進路上にいるゴブリンの集団を突破することが最優先だ。


「エルネスタ嬢は、普段そんなに勇ましい喋り方なんだね」


「……喋ると、舌を噛みますよ?」


 ルエザリクさんに指摘されて、ちょっと恥ずかしくなった。

 アンシー相手には素が出るけど、さすがに親しくもない他人には、自然と敬語になっちゃうからなぁ……。

 元日本人の(さが)みたいなものだ……。

 いつもならアンシーと二人きりの時しか出さない口調だが、今は緊急事態だからしゃーない。


 って、そんなやりとりをしている内に──、


「みんな、何かに掴まって!」 


『フゴっ!?』

 

 短い悲鳴と、ボコン!という大きな音が上がる。


 ゴブリンを轢いた音だ。

 それからも何度か衝突音が続く。


 でもゴブリンはバンパーで(はじ)いているだけだから、走行には支障は無いようだ。

 さすがにフロントガラスに突っ込まれたら困るが、このミニバンだとボンネットが突き出しているタイプではないので、乗り上げにくいのが幸いした。

 

 それにスピードを出しているとはいっても、舗装していない道では出せる速度に限界がある。

 だから小さなゴブリンの身体(からだ)と衝突しても、車体が大破するほど激しい衝撃にはならなかった。


「よし、突破した」


「でも、追ってくるぞ!!」


 バックミラーには、走って追ってくるゴブリン達が映っている。


「スピードをこのまま維持して、引き離してしまおう」


 さすがに車のまま都市に乗り込もうとしたら、目立って面倒臭いことになりそうなので、直前で降りる必要がある。

 最悪の場合、車が化け物の(たぐ)いと勘違いされて、攻撃されかねないからな……。

 その為にもゴブリン達に追いつかれないほど距離を離しておいて、都市の直前で徒歩に切り替えるなければならない。


 まあ、獣の(たぐ)いならともかく、人型の生物が車に追いつくのは困難だろう。

 そもそも野生の生物って、持久力はそんなに無いはずだから、いつまでも全力疾走では追ってこれないはず。

 ただ、長距離走においてはあらゆる生物の中で、人間が最強だという話もあるので、時間をかければ人型のゴブリンが追いついてくる可能性はある。


 でも取りあえずは、ゴブリン達を振り切ることができた。

 そして都市が近づいてきたので降車する。

 車は「空間収納」に入れておくか。


「あんな大きな物が入るのか……」


「嘘だろ……」


 冒険者達には俺の「空間収納」の容量の大きさに驚かれたが、やっぱり桁違いなんだ。

 まあ、神様から貰ったスキルだし、普通の性能ではないだろう。


 それよりも今は、ゴブリン達に追いつかれる前に、ロゼーカンナ市へ辿り着くことが重要だ。

 小走りで進むと、俺は少しずつ上を見上げることになった。

 ロゼーカンナ市は、高い塀に囲まれていからだ。

 

 これならゴブリン達が襲撃してきても、大丈夫な気がする。

 攻城兵器でもなければ、壁は突破できないだろう。

 中に入ってしまえば安全だ。


 ……って、こんな突破が難しそうな壁を相手に、ゴブリン達は攻撃しようとしているのか?

 それが無駄だと分からないほど、奴らはバカなのだろうか?

 それとも……。


 なんだか嫌な予感がする。

 急ごう。


 市の正面入り口に辿り着くと、そこでは入場手続きの列ができていた。

 今まではさほど他の旅人とはすれ違わなかったが、それは俺達が通ってきたのが田舎道だったからで、彼らは大都市間を繋ぐ本街道を通ってきたのだろう。

 

 そっちの方は、結構交通量が多かったんだな……。

 100人以上はいる。

 この列に並んでいたら、ゴブリン達に追いつかれるぞ……。


 あ……ルエザリクさんが、列を無視して係員の方へ行った。

 列の方からブーイングが上がっているけど、ドンガトさん達が牽制しているので、邪魔は入っていない。

 係員が報告を受けると、(にわか)に慌ただしくなった。

 なんか連絡員らしき人が、門の中へと入っていく。


 まずは上司に指示を仰ぐってところかな?

 それとも事実確認だろうか?


 暫くすると、壁の上の方から声が聞こえた。

 高い場所から、ゴブリンの姿を確認しようというのだろう。


「確かにゴブリンの群れが来ている!!」


 切羽詰まった声が響く。

 行列にもざわめきが広がっていった。

 ここでパニックが起こったら、市に入ることが難しくなるぞ!?


 そこで係員が叫ぶ。


「入場手続きは後回しでいいから、早く中へ!!

 ただし、後日改めて手続きをするように!!

 これを無視したことが発覚した者は、重罪を科すことになる!!」


 マジか。

 有能な奴がいるな!

 これならパニックは起きないだろう。


「それと冒険者がいたら、ゴブリンの討伐に協力してくれ!!」


 そな呼びかけもあった。

 ふむ……これは俺も協力した方がいいのかな?

 武具の提供ならできるが……。

 おかげさまで、総合評価が500ポイントをこえました。ありがとうございます。

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「ロゼーカンナ市は、高い塀に囲まれていからだ。これならゴブリン達が襲撃してきても、大丈夫な気がする。攻城兵器でもなければ、壁は突破できないだろう。」 武具を提供って、収納魔法が使用できることを明らか…
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