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専属契約

 ルエザリクさんから突然の専属契約を提案された冒険者達は、困惑した様子だった。

 まあ、いきなりだからな……。


 ただ、ゴブリンの集団に対応できない程度だから、そんなに強い人達じゃなさそうなので、悪い話ではないと思うんだけどね。

 収入面では爆上げだよ?


「なんなら装備も支給しますよ?」


 そんな俺の一言を受け、冒険者達の視線がこちらに集中する。

 そして俺の手の中にある、一振りの刀に注目した。

 今しがた「空間収納」から取り出した一品にございます。

 ルエザリクさんに売りつけようと思って、作ってあったものだ。


「な、なんじゃ、それは?」


「あ、手に取って見ます?」


 ドワーフっぽい人が、刀へと強い興味を示した。

 刀身を抜いていなくても鞘や(つば)などの装飾が独特だし、鍛冶や工芸が得意だとされるドワーフとしては無視できないのだろう。


「おおっ……!?」


 で、刀を手に取ったドワーフは、(やいば)を見て驚いている。

 凄まじい切れ味と、簡単には()が欠けない強靱さを付与してあるから、ドワーフから見ても脅威の技術なのだろう。


 なお、俺にも作り方は分かりません!!

 細かい部分はスキルに丸投げだ。

 それだけにドワーフの力を借りれば、近い物を再現できるようになるかもしれないし、将来的には俺がいなくても量産できるようにしたい。

 なのでドワーフの仲間は、是非とも欲しいのだ。


「他にもこんな物もありますよ。

 矢を連射できます」


「これは……!」


 エルフのお姉さんに、連射式のクロスボウを渡す。


「え……これが支給されるの?」


 一目見てクロスボウの性能を理解したのか、エルフのお姉さんはゴクリと喉を鳴らした。

 お、意外と即物的な感じ?


「必要なら、もっと高性能な物を用意しますが?

 ゴブリン達を追い払う為にも、使えると思いますよ」


「私、契約するわ!」


「ワシも!」


 よし、エルフとドワーフは落ちた。

 あとは3人だ。

 だが、彼らは迷っている。


「俺は……冒険者として大成したいと思っているから……」


「あ、あたしも」


 赤髪の少年は、英雄になることを夢見ているタイプかな。

 ただ、幼馴染みっぽい()については、彼に合わせている感じだ。

 もう1人の陰キャっぽい男は、よく分からない。


「それならば、ダンジョンなどで魔物の素材を集める人員も欲しかったので、そちらで働いてもらうのはどうでしょう?」


 俺も実際にダンジョンで魔物との戦闘を見て、武具の性能を検証したい。

 その時の護衛としも、働いてほしいからな。


「そ、そういうことなら……」


「あ、あたしも」


 どうやら、全員納得してくれたようだ。

 でも陰キャ君、人生を左右する重要な答えの時に、(うなづ)くだけなのはやめようか?


「細かい条件は後日に決めていこうと思うが、私の商売とこのエルネスタ嬢に関わることに守秘義務を課すことは、間違い無いと思ってくれ。

 絶対に他言無用だ。

 これを破った場合は莫大な違約金が発生するし、逃げれば官憲に追われると思ってくれ。

 その代わり、月の報酬は最低でも今回以上を約束しよう」


「お、おう……」


 ルエザリクさんの言葉に、冒険者達は神妙な顔で頷く。

 彼らも仕事をして行く上で、信用が大事だということは理解しているだろう。


 ただ、俺の存在が守秘義務に含まれていることが理解できないようで、不可解だという顔をしていた。

 いや、ドワーフとエルフは納得した様子だったが。

 さっき見せた刀やクロスボウの価値を、理解できたからこそなのだろう。

 冒険者としては分からないけど、技術者としては期待できそうだな。


「では、これからゴブリンと一戦を交える為の、装備を貸与します。

 今回は緊急事態なので仮の物ですが、後日個別に専用の装備を用意しますよ」


 これらの装備はたぶん今の彼らの装備よりも性能がいいから、ゴブリン相手なら有利に戦えるようになると思う。

 ただ、魔法使い用の武器ってよく分からないから、ツンデレ幼馴染みには防具だけかなぁ……。


 実は俺と魔法って相性が悪いのか、魔法の武具を作ろうとしても、いまいち上手くいかないんだよ……。

 スキルに全部丸投げすればいけそうな気もするけど、たぶんコストが凄いことになるから、今は無理してやる意義を感じない。


 ただ、もうちょっと魔法のことが理解できたら、魔力を強化する杖とかを作れそうな気もする。

 だからその為にも、魔法を習ってみたい気持ちもあるんだよな。

 俺にも魔力はあるから、魔法は使えるはず……。


 まあ、今はそれどころではない。

 ゴブリン達は、このミニバンの内部に人が居ることに気付いたのか、ゾロゾロと周囲に集まってきた。

 パッと見ただけでも、20体以上はいるだろうか?


 これじゃあ戦おうにも、外に出ることも難しいな……。

 それにこれほどの数がいれば、車体を持ち上げてひっくり返される可能性もある。

 早々に対処しなければ……!


「それではみなさん、戦闘準備を。

 今から外に出やすいようにしますので」


 俺は手が出る程度に窓を開き、そこから銃を出してドア付近にいるゴブリン達を撃った。

 弾を受けた何体かが倒れ、弾が当たらなかったゴブリンも驚いて車から離れる。


「さあ、今なら安全に外へ出られます。

 ゴブリンを掃討してください」


「な、なんだ、今の!?」


 しかし冒険者達も驚いているのか、すぐに動かない。

 いいから、はよ行け!


「だから私のことも、守秘義務に含まれているのですよ」


 と、可愛く言ってみたが、冒険者達は奇妙な存在を見るかのような目で俺を見ていた。

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「な、なんだ、今の!?」しかし冒険者達も驚いているのか、すぐに動かない。  いいから、はよ行け! 早く動けと、口に出して命令しろよな。
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