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秘密厳守

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 夜中に突然現れた冒険者達は、ルエザリクさんの護衛だった。

 ん……彼らが魔物に襲われたということは、危うく俺は取り引き相手を殺されるところだったというのか……?


 危ねぇ……。

 もしも彼らを無視していた場合、ロゼーカンナ市へ行っても、取り引き相手いなくなっていた可能性もあった訳だ。

 いや、最悪の場合はまた露天商から始めればいいけど、向こうでも変なのに目をつけられて血みどろの戦いになるのは嫌だし……。

 そもそも取り引き相手を、最初からさがすのも面倒臭い。


 だからここでルエザリクさんと会えたのは、僥倖だった。


「ルエザリクさん、無事で良かった。

 これからあなたのところへ、行こうとしていたところです」


「……?」


 しかしルエザリクさんは、(いぶか)しげな顔をした。

 俺が誰なのか、認識できていない……?


「あ!」


 そうか。

 露天商をしている時の俺って、男装をしていたっけ。


「失礼しました。

 俺は露天商をしていたアーネストですよ」


「えっ、あの……!?

 女の子だったのかい!?」


 元々は女の子じゃなかったんですけどねぇ……。


「本当の私の名は、エルネスタと申します」


 女の子の姿で男の名前を名乗るのも変なので、対外的には女性名のエルネスタを名乗ることにした。

 本人にしたら、違和感があるけどな……。


「ああ……なるほど……」


 ルエザリクさんは、得心いったような頷く。

 女子が商売をするのは、色々と苦労が多いと察したのだろう。

 変装すること自体は、むしろ安全面を考えれば当然だと思ったはずだ。


 まあ……男装していても、俺は攫われたが……。

 そもそも子供が商売すること自体が、危ないのだ……。

 だから俺の代わりに、表立って商売してくれる人が──ルエザリクさんのような人が必要なんだよな……。


「しかし、何故このようなところに……?

 私もこれから、君に会いに行こうとしていたのだが……」


「いえ、ちょっと事情が──。

 いや、詳しい話は後ですね。

 どうやら魔物が追ってきたようです」


「えっ!?」


 何かがこちらに近づいてきている。

 たぶんルエザリクさん達を襲ったという、魔物達だろう。

 車なら逃げられるかもしれないけど、夜道の運転は危険だな……。


「とりあえず中へ!」


 グリズリーやサイみたいな巨大な動物でもなければ、車を破壊することはできないだはずだ。

 中にいれば安全だと思う。

 実際、ルエザリクさん達がここまで逃げてこられたくらいだから、追っ手の足は遅いはずだし、歩幅の小さな生物である可能性が高い。

 巨大なカメのような生物である可能性もあるが、動きが鈍いのなら姿を確認してからでも対処はできる。


 で、車はミニバンだから、問題無く全員を収容できた訳だが……。


「小屋なのか、これは……?」


 誰かがそんな感想を漏らしたけど、乗り物やぞ?

 この世界の人間が知らないのは、仕方がないけど……。

 しかしルエザリクさんの関係者に知られるのは、ちょっとマズイな……。

 彼らに対してどう対応するかで、これから来る魔物への対処も変わる。


「どのような魔物が出たのですか?」


 相手によっては、このままUターンして夜道を走るぞ。

 運転はアンシーしかできないから、彼女だけが頼りだ。


「ゴブリンの集団だ」


「あ~……」


 すっごい異世界あるあるな存在が来たな……。

 でも人型なのはちょっと嫌だが、銃でどうにかなる相手だと思う。

 ただ、どうすっかなぁ……。

 ここで俺の能力を、冒険者達に見せてしまってもいいのだろうか?


「ルエザリクさん、彼らは信頼できますか?」


 俺はそっと耳打ちするように、ルエザリクさんへと語りかける。


「え?」


「私の能力を使えば、魔物を倒すこともできるかもしれません。

 ですがそれだと、企業秘密とも言える物が、他所に漏れるかも……」


「ああ……そうか。

 それはマズイな……。

 彼らは何度も私の行商を護衛してくれた者達だが、身内という訳ではない」


 ふむ……ある程度気心が知れた相手ではあるけど、完全に信用はできない……と。


「それならば、彼らを専属として雇うのはどうです?

 これから事業を拡大するのならば、護衛は必要だと思いますし、契約で守秘義務を課せば、ある程度は秘密を守れます」


 もう、このミニバンを見せてしまっているから、冒険者達は抱き込んだ方がいい。

 まったくの赤の他人ならいくらでも誤魔化しようはあるけど、彼らは俺とルエザリクさんの間に関係があることを知ってしまったからな……。

 そうなるとルエザリクさんに(おろ)した商品と、俺が関連付けられる可能性は否定出来ない。

 それならば彼らと専属契約をして、情報漏洩に罰則を設ければ、裏切り行為は制限できる。


 まあ、完全に情報漏洩を無くすことは不可能だろうけど、裏切られてもすぐに対処できる方法は、後々考えよう。

 俺の能力は、そういう方向でも使えるはずだ。


「……君は本当に子供なのかい?」


 ルエザリクさんは俺の子供らしくない提案に驚いているようだが、確かに前世を含めると子供ではないな。

 だけどそれは、一生誰にも打ち明けるつもりは無い。


「ただの子供ですよ。

 だけど必ずあなたを儲けさせます。

 だから彼らへの契約料は、ケチらずに多く出しましょう」


「そうだな……。

 そうすることにしよう。

 君達、聞いてくれ」


 さあ、彼らの返答次第で、今後の方針が決まるぞ。

 車の外では既に、ゴブリンらしき影がうろついている。

 見慣れない物体に対して、警戒している感じだ。


 見た感じ、子供のような体格なので、秘密の漏洩さえ気にしなければ、俺の銃で倒すことはできる。

 でもどうせならば、みんなで戦った方がいいのかな?

 秘密は共有した方がいいからな。

 次回は週末かなぁ……と。

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