予 感
俺は引っ越しの準備を進めているが、荷物は「空間収納」に入れることができるので、そんなに手間では無い。
そんな訳で並行して、ルエザリクさんに納品する為の武具を作ることにする。
今は金が入り用だから、作れるだけ作るぞ。
ただ、さすがに露天商を今するのは危険だからと、アンシーに止められた。
森での狩りもな……。
で、諸々の作業を続けていると──、
「……?」
何か違和感があった。
理由は分からないけど、なんとなく落ち着かないというか……。
なんだこれは……?
虫の知らせ的な……?
「アンシー、何か嫌な予感がする。
周辺の見回りに行く」
「それならば、私もお伴します」
「……危険だぞ?」
もしかしたら俺を攫った連中の、仲間が来ているのかもしれない。
連中には俺が男爵家の人間だと言ってしまっているので、押しかけてくる可能性があるからな……。
「危険なのは坊ちゃまも同じ……では?」
「はい……」
今のアンシーは俺が倒れて寝込んだ所為で、少々過保護になっているからなぁ……。
俺が1人で行くのは、絶対に許さない感じだ。
「それじゃあ、一緒に行こう。
でも念の為に、アンシーも防具をつけてくれ」
念の為に防刃ベストやヘルメットを装備していても、損は無いだろう。
まあ、メイド服の上から装備すると、なかなかシュールだが……。
それから俺達は、離れの周囲を見回った。
だが、異常は無い。
「本邸の方かな……?」
正直、あまり近づきたくはないが……。
万が一親達と顔を合わせたら、気まずいなんてものじゃないし。
まあ、仕方がないから行くけど……。
そして本邸が見えてきた頃──、
「あ……いた!」
6人ほど人がいる。
あいつら、仲間をかき集めてきたな……?
「え……?
何処ですか、坊ちゃま?
「え、見えない?
あそこの木の陰だけど」
「私にはちょっと……」
う~ん……?
そういえば本邸の周囲ってあまり遮蔽物が無いから、あんな大人数で近づいたら、普通は警備に見つかるよな?
本来なら辿り着けない場所に、あいつらはいる。
これは何か特殊な隠蔽方法で、身を隠しているのか?
だけど俺には、それが通用していない……?
あれ……?
俺の五感の感度が上がっている?
あの虫の知らせも、その影響か?
……この左手の義手って、戦闘用だよなぁ……?
あれから色々と試したけど、イマイチ機能が分からない。
別に握力とかが上がっている訳でもないし、現状ではビームとかも出ない。
でも、もしかしたら防具としての機能もあるのか?
で、ナノマシンとかによって、全身にも影響を及ぼしている……とか。
いや、今はそんなことを、気にしている場合じゃないな……。
あいつらは本邸の様子を、木陰から窺っているようだ。
何の為……というのは考えるまでもなく、俺が目的だよなぁ……。
はぁ……正面から戦っても、また変な攻撃で死にかけるかもしれないし、ここから狙撃するか。
……今回は躊躇わない。
「坊ちゃま、屋敷から誰かが出てきます……!」
誰かが屋敷が出てきた。
あれは……妹のクレア!!
庭へ遊びに出てきた!?
そして連中も動く。
妹のクレアなら、俺と誤認されてもおかしくない。
あの倉庫は薄暗かったから、俺の姿をハッキリ憶えていないかもだし……。
あるいはクレアを人質にして、俺をおびき出す気か?
どちらにしても、クレアが危ないっ!!
親には色々と思うところはあるけど、まだ小さな妹は別だ。
そもそも子供をどうにかしようとは、外道が過ぎるぞ。
許せるはずがない。
「あっ、坊ちゃま!?」
俺はクレアを救うべく、駆け出した。
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