サイボーグ幼女
今俺がやろうとしているのは、未来の戦闘用義手を失った左手の先に形成することで、血止めを行うというものだ。
これは俺自身の一部を変換して、サイボーグ化させるも同然の行為だといえる。
成功できるかどうかは分からない。
これまでは未来の武具なんて、作ったことが無かったからな……。
武具屋の倉庫にあった大量の資材を使っても、拳銃を作るのには結構色々と消費したし……。
その拳銃を始めとした、手持ちの武具や資材をすべて変換に使っても、義手を作れるかどうか……。
それでも失血で意識が飛ぶ前に、やらなければ……!!
まずは「空間収納」に入れていた物を全部出し、斬り落とされた左手を核として変換を実行。
「──っ!!」
魔力がごっそりと減った感覚がある。
しかも変換作業が終わらない。
今までは一瞬で終わったのに、時間がかかっている……?
これは魔力と材料が、足りないのか……?
じゃあ地面を……。
う~ん、無いよりマシだけど、大して役には立っていない気がする……。
……そういえばウサギとか、生き物の身体を使った時は、変換効率が良かったような……。
まるでスキルに対する生贄と言うか……。
地面では生贄にはならないし、そもそも素材としての価値が低いのか……。
それならば……。
俺は、近くにある男の遺体を見た。
あれは使える。
……使えるが、自分の身体の一部に組み込むのは、人肉を食べて己の血肉にするかのような、忌避感がある。
だけどやらなければ死ぬ。
だから俺は、男の遺体を変換する。
……うん、いい感触だ。
だけどまだ足りない。
他に使える物は、俺自身の魔力だけ……。
もう、生きるか死ぬかだ。
気絶してもいいから、魔力を限界まで……いや、それ以上引き出す!
「くうぅぅ……っ!」
意識が持っていかれそうだ。
それは出血の所為なのか、それとも魔力を急激に失った所為なのかは分からない。
その両方かも。
しかしこのまま気絶してしまえば、変換は失敗する。
気合いで耐えろ!
魂の奥底から、もっと魔力を引き出せっ!!
「あ……?」
なんだ……?
何か大きな力を感じる。
俺の内側──その奥底に、まるで太陽のような……。
正体は分からないけど、これを使えばたぶん……!!
「いけえぇぇぇぇぇぇっ!!」
────っ。
……左手が重くなった。
成功……か?
そこを見ると、無くなったはずの左手がある。
出血は止まった。
見た目も、以前と変わらないように見える。
「動く……」
怖々と指を動かそうとしたら、思い通りに動いた。
拍子抜けするほどアッサリと。
まるで元々自分の手だったかのようだ。
でも、これ戦闘用の義手なんだよな……?
だけど無我夢中でやったから、どんな機能があるのか分からない。
「……なんかデメリットもあるのかな……?」
それにこの義手は、俺が殺した男でできている。
俺の罪が刻まれた呪いのようなもので、この手を見る度に思い出すだろう。
それが一生続く。
「はあ……」
気が重いけど、それ以上に疲れた……。
嘆くのは、後にしよう……。
俺を攫おうとした武具屋への報復も考えなければならないけど、それも安全な場所で休んだ後の話だ。
「帰るか……」
俺は頼りない足取りで、その場から歩き出した。
……やっぱり、血が足りないな……。
ふらふらする……。
無事に辿り着けるかな……。
もう夜になったから、アンシーが心配しているだろうなぁ……。
滅茶苦茶怒られるかもしれないけど、今は彼女の顔を早く見たい……。
目指す家は、物凄く遠くにあるように感じた。
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